ノーモア・ミナマタの訴訟解決に向けての
基本合意成立にあたって1 本日,ノーモア・ミナマタ国賠等請求訴訟の第5回和解協議期日において,原告団及び被告国,熊本県,チッソは,熊本地方裁判所が本年3月15日に示した解決所見を受け入れることを表明した。
その結果,原告と被告らとの間にノーモア・ミナマタ訴訟解決に向けての基本合意が成立し,本件訴訟は,和解による解決に向けて大きな一歩をふみ出した。2 私たちは,熊本地裁が示した解決所見を,次のとおり評価するものである。
第2に,行政による被害者判定の独占を打ち破った点で画期的なものである。
第1に,裁判上の和解協議の結果獲得したものである点で歴史的なものである。
とりわけ,被告国が裁判上の和解協議に応じたのは,水俣病裁判の長い歴史において初めてのことであり,私たちの闘いの成果である。
所見は,その半数の委員の人選を原告側に委ねる第三者委員会方式を採用したうえ,私たちの主治医が作成した「共通診断書」を判定資料として採用している。これは,長い水俣病認定の歴史の中でまかり通ってきた「加害者が被害者を選別する」悪習を打破するものである。
第3に,被告らの責任と今後の課題を明示した点で「すべての被害者救済」につながる礎を築くものである。
所見は,被告らの「責任とおわび」の「具体的な表明方法」を求めたうえ,被告らに「健康診査」「調査研究」等の実施義務を課している。所見がこの点を明示したことは,私たちの一貫した要求の正当性を認め,潜在被害者を含むすべての被害者救済を求めるものである。
3 しかし,本日の基本合意の成立は,私たちの闘いが終わることを意味しない。
私たちは,昭和44年12月以降の出生者も対象者となるよう引き続き求めていくほか,対象者を判定する第三者委員会が被害者救済の役割を果たすよう監視していかなければならない。
また,所見による訴訟解決がなされたとしても,未だ被害地域住民の徹底した健康調査が行われていないため多数の潜在被害者が取り残されていること,水俣病特措法による解決方法・内容が未定であるうえ加害企業チッソの無責任な分社化のおそれがあること,胎児性・小児性被害者の病像の調査研究が未だ不十分であること,これらの現状を見るとき,私たちは闘いの手を緩めることは決してできない。
私たちは,本日の基本合意の成立が,あらたな闘いのためのステップであることを確認し,今後も「すべての被害者救済」の実現のために闘い続けることをここに宣言する。
以上
2010年3月29日
ノーモア・ミナマタ国賠等請求訴訟原告団