声ノーモア・ミナマタ訴訟弁護団

和解勧告についての声明

 本日午前10時00分、熊本地方裁判所民事第2部(高橋亮介裁判長)は、ノーモア・ミナマタ国家賠償等訴訟第23回口頭弁論期日において、「係属中の全ての事件」の原告2018名、並びに、国、熊本県及びチッソ株式会社に対し、訴訟上の和解による解決を勧告した。

この和解勧告は、本年1月15日付けでなされた原告らによる和解勧告の要請、及び、被告国及び熊本県による和解勧告の要請を受けてなされたものである。かつて長年にわたり争われた水俣病第三次訴訟において、被告国は、熊本をはじめ、東京、大阪、福岡の各裁判所から再三にわたり和解勧告を受けたにもかかわらずこれを拒否し続けた。しかし、被告国、熊本県、チッソは、いわゆる1995年の政治解決では水俣病問題が全面解決していなかったことを訴訟上でも真正面から認め、訴訟上の和解のための協議を受け入れたものである。我々は、本和解勧告が水俣病問題の解決に向けた歴史的転換であることを確認するとともに、水俣病問題の全面解決に向けた裁判所の英断に敬意を表するものである。

本訴訟における主要な論点の一つとして、いかなる症状を有する者が水俣病被害者であるか、その症状をどのように診断するか、という問題がある。しかし、被告国及び熊本県は、本日の和解勧告の直前の本年1月18日、臼杵扶佐子医師の証人尋問の申出を撤回し、反証の機会を放棄した。これにより、この争点における我々の主張の正しさは、よりいっそう明らかになった。

 本日午後1時30分から第1回目の和解協議が行われたが、これに続く裁判所での和解協議の内容こそが、水俣病問題の解決の在り方を左右するものとなる。我々は、すべての水俣病被害者が最高裁判決に従った正当な補償を受けるための司法救済制度の構築を勝ち取るために協議を行う。しかし、すべての水俣病被害者に対する補償の大前提となる不知火海沿岸地域の健康調査も行われていない現状においては、健康調査の実施が喫緊の課題であるほか、水俣病被害者の判定方法、一時金や療養手当の水準のみならず、対象地域の線引き問題、昭和44年以降に水銀曝露を受けた水俣病被害者に対する補償問題、そして、未だ名乗りを上げることができない水俣病被害者への補償問題のいずれもが大きな課題である。

我々は、すべての水俣病被害者に対する正当な補償を実現するために、国会・政府、世論の理解と支持も広げていく。そして、今後、新たに立ち上がるであろう水俣病被害者をはじめ、熊本、近畿、新潟の訴訟団、及び、新たに闘いを始める関東在住の水俣病被害者などと一致団結して、最後の最後まで闘い続けることをここに誓う。

2010年1月22日

                 ノーモア・ミナマタ国家賠償等訴訟原告団

                 ノーモア・ミナマタ国家賠償等訴訟弁護団