「水俣病に関する特別措置法案」
特に分社化,地域指定解除についての声明
与党が今国会に上程した「水俣病被害者の救済及び水俣病問題の最終解決に関する特別措置法案」(法案)は驚くべき内容であり、永年にわたって被害をこうむってきた私たち水俣病被害者にとって、とうてい看過できないものです。
一言で言えば法案は、加害者を救済するための免責法案であり、被害者救済はとってつけたものと言えます。法案の最大の眼目は、分社化によりチッソが水俣病から逃げ出すことを許すものであり、水俣ならびにその周辺地域、水俣病被害者を切り捨てることにつながります。私たちは分社化に断固反対します。
また健康被害、環境被害実態の調査もなく、水俣病像についての徹底した議論も行わずに地域指定解除を先行させることは、決して許されることではありません。潜在患者が名乗り出る道を閉ざす地域指定解除は、国、熊本県が被害者救済責任を放棄することを許すものです。私たちは拙速に地域指定解除を条文化することに断固反対します。
一九九五年政治解決の不十分さは、二〇〇四年最高裁判決以降の認定申請者、保健手帳取得者が短期間に三万人を超えるという驚くべき数字にはっきりと表れています。法案はこの事実に向き合うことなく、水俣病五〇年余の歴史と教訓に学ばず、強引に水俣病事件に幕引きを図ろうとしているのです。困窮する未救済被害者の足元を見透かすかのように、法案に加害者の利益を最大限に盛り込むとは、法案作成者の道徳心の欠如が疑われます。
私たちはこの法案があまりにも多くの問題を抱え、いまだに救済されていない水俣病被害者が救われ、補償される道を閉ざす結果に至ることを強く懸念します。
私たちは上記のような危惧を共有するものであり、ここに分社化と地域指定解除の撤回を求めるとともに、加害者救済策を柱とする倒錯した法案を根底から再検討することを強く要求し、声明とします。
平成二一年三月二五日
水俣病患者連合 会 長 佐々木清登
水俣病被害者の会 会 長 森 葭雄
水俣病不知火患者会 会 長 大石利生
水俣病被害者互助会 会 長 佐藤英樹
チッソ水俣病患者連盟 委員長 松崎忠男
水俣病被害者の会全国連絡会 幹事長 橋口三郎
水俣病互助会 会 長 諌山 茂
水俣病患者の会 会 長 濱元二徳
新潟水俣病被害者の会 副会長 小武節子
新潟水俣病阿賀野患者会 会 長 山ア昭正
水俣病・東海の会 会 長 國崎イネ子