junk
【戎句】
ジャンク【junk】     がらくた。廃品。
ジャンク【junk・戎克】  中国およびその周辺特有の船の総称。

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【戎句】ジャンク 今様風に       2001/4 短歌人6月号


「獏」というのは何故かしら春の季語だと思います

傘の翼も折れるほど春の嵐に吹かれます

死んでしまった人なんて愛するわけがないじゃない

雨が近いかフルルルと赤ショウビンの鳴く昼は

水玉模様の春の雨、老ボクサーのような影

想い出すのは葉桜の下で落ちあう銀のさざなみ

帰って行こう青墓へ花の崩れる音がする




 【戎句】ジャンク 七五五七五の律   2000/10/13


雨に濡れたる 白萩の 白萩の かすかに重き 今日の傘

水の中には 胡桃の実 胡桃の実 遠い記憶は 苦からむ

花野へ人を 送るとは 送るとは 風に揉まるる 花の波

漆もみぢの ひるがへる 翻る 恋風ならば よそに吹け

鶴を食ひたり 哀れやな あはれやな 霜月尽の 時雨亭



【戎句】ジャンク 2000/9/10  万葉集を翻訳する



秋芽子之 上尓白露 毎置 見管曾思怒布 君之光儀呼

白露のCannabis Indica 吸ふたびに君が纏つたシーツは光る

吾屋戸之 麻花押靡 置露尓 手觸吾妹兒 落巻毛将見

わが部屋に桐麻障子 手を觸れて君の巻き毛を解けば露けし

秋風之 日異吹者 水茎能 岡之木葉毛 色付尓家里

ラブホテル「異邦人」にて 濡れながらちいさな木の葉浮かべて遊ぶ

吾背兒我 白細衣 往觸者 應染毛 黄變山可聞

恋人は後ろを向いて服を着る やや寂しげに日に焼けた髪



【戎句】ジャンクとは何ぞや、と人尋ねれば、


【戎句】ジャンク2000/7/10   短歌人秋の作品特集

 恋人よアルミニウムの瀑布あり うら寂しげなモーテルを出て

 曖昧にうなづく蛍袋かな 黙つてゐるは諾といふこと?

 絹莢(きぬさや)やくちびる何を想ふべき 快楽(けらく)はなべてやはらかきゆゑ

 合歓咲きてエクスタシーは隠すべし 遠くに見える大観覧車

 天草(てんぐさ)や天草四郎ところてん 先頭車から転倒したり

 蝉茸は蝉殺したるキノコなり 羊頭狗肉の狗とは何ぞや

 老いの恋、河鹿が河馬に変はるとは いつまでアホをやつてまんねん

 はしけやし「国歌大観」夏枕 時鳥(ほととぎす)鳴く「♪ほつととぎす」と

 西行をサイコーと読む洗ひ髪 「法の華」とかいふあれのこと

 言葉など!かなはぬ恋の氷菓子(シャーベット) サラサラですか?ザラザラですか?

 桑の実や少年の日はキスもよし 隠れて読んだ『ドグラ・マグラ』さ

 雨彦という名をもてばクサイ奴 それは馬陸(やすで)のことであらうか

 家出して能登の切子(きりこ)に灼かれけり 鬼に逢ひたい頃もあったか

 簡単服(あつぱつぱ)『墨東綺譚』をふんはりと 義姉の声音で「ちよいとそこまで」

 心中者納めぬ墓を洗ひをり 寶池院郭念浄光法士

 水馬とはあめんぼうなり、木馬館 はだかを見せて暮らすもよけれ

 蜜豆や「えっち」な意味じやないといふ ふふふ結構ウブなところも

 年老いてテロリスト棲む釣忍(つりしのぶ) 阿片の量を天秤はかり


 【戎句】ジャンク2000/8/10


身体の禁忌の部分、花野かな 悲しみははや措きて菊の香

いちじくのほろろいしとは故もなし わがオートバイ錆びつつ売らる

ピエール・ド・マンディアルグを恋ふ少女 寒満月に痩せる狼

冬の季語ふたつ並びて売られをり 「檻」はそもそも無季であらうか

ゆっくりと吊されてゆく音楽の 楽しみははや行きて帰らず


 【戎句】ジャンク2000/8/10

 山家鳥虫歌ふうに 「風」NHK短歌春秋


 風の日は合歓こそよけれ紗のごとき木陰に入りて想ふことあり

 草深野そのひとところより風立ちて靡けよなびけ歌は夕暮れ

 花野とは花の座になし悲しみの歌仙の首尾の吹き迷ふまま


【戎句】ジャンク(哀悼・仙波龍英) 2000/4/11



人掌の黄色い花が咲いてゐた恐ろしいこと恐ろしいこと

頭割れて砕けて散つてゆくなにも言はなくなつてしまつた

の眼は乾いたままに菜種梅雨不可思議なこと不可思議なこと

(はなぶさ)や紳士ぢやなかつた君のため山高帽に花を飾ろう