歌仙    渦深くの巻



  
初折の表
発句 渦深く春潮どどとひかれけり 美保
海峡越えて帰りゆく鳥 龍人
第三 しなやかに小手毬ゆらす風ありて 栄子
リボンをかけて贈る木の箱 とも子
さやさやと月はさやかに光りつつ 圀臣
折端 胡弓の弦にもみぢ葉のふる 真白
初折の裏
折立 平安の昔を恋ひて九月尽 初枝
むらさきぎぬのをんな呼び出す 博士
父病むと詐りいふて宿さがり 和子
今宵ワルツを踊りませうか 美保
若い日に戻りたいとは思はない 龍人
悠然と居る早苗田の月 栄子
山百合の一輪崖に咲いてをり とも子
ゴルファー汗する山岳コース 圀臣
球よりも珠を欲しがる眼して 真白
渡りに船の金蔓が来る 初枝
十一 花降つて黒髪濡れる宵ならば 博士
折端 同行二人風の遍路は 美保
                   
名残の表
折立 急坂を登りつめれば春の水 和子
どこか遠くで少年の声 龍人
あなたには真白きシャツがよく似合ふ 栄子
見つめ合ふままひとつになりて とも子
身のなべて奪へと言へる雪の宿 圀臣
契りに遺す寒紅の色 真白
襟巻と胸に秘密を隠しをく 初枝
上手下手にはてしない闇 博士
無影灯のやうな都会の二十五時 和子
誰かが開けるパンドラの箱 美保
十一 ドラキュラと狼男の月の夜 龍人
折端 髪を嬲りて秋風の吹く 栄子
名残の裏
折立 魚棚の鰯の目には何映る とも子
目刺しとならば君は見えざり 圀臣
あを空のあをいろを海といひしか 博士
霞の中を飛行船ゆき 初枝
和睦乞ふ使者の背に降る花吹雪 和子
挙句 成就したのは八十八夜



連衆:歌人 西王燦・橘圀臣・山本栄子・谷口龍人・青木和子・山野とも子・荒木美保・藤田初枝・矢嶋博士・山科真白

捌 : 山科 真白  総監修 : 西王燦


2004年3月20日-6月5日.....BBSにて


return to toppage