≪PHOTO by 花恋≫

..... 百韻 『天界にの巻』 .....

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初表
発句 新年 天界の女人が舞ふや初霞 龍人
新年 朱の三つ重ね地には屠蘇酒
第三 古池の魚の住ゐもしづまりて 真白
青年が行く高下駄の音 とも子
志ひそかにたてむ芹の束 久仁子
息吹き入れる紙風船に 美保
春深し昼月をつれ薬売り 和子
浜のかしこに若布干されて 栄子
                     
初裏
ふさふさと髪型どこか不自然に 初枝
セクシーモードのきみは素敵だ 龍人
人妻は機械じやないよねこの乳房
脱がせて貰ふ絹の夏足袋 真白
肌合はせ一つとなりて青嵐 とも子
サーフィン野郎つひに戻らず 久仁子
フライング取られぬやうに出遅れて 美保
ダークホースの騎手がねる策 和子
その昔得意だつたの徒手体操 栄子
夜長に江戸川乱歩読みをり 初枝
十一 ゆつたりと起きたる朝の秋気澄む 龍人
十二 美しい国に葛がはびこる
十三 金貨より光りて月は夜に浮き 真白
十四 ドラムの音が響くステージ とも子
                     
二表
ちろりより労るやうに注ぐ酒の 久仁子
今朝久々に霜柱踏む 栄子
戦災のニュースを見つつ日向ぼこ 初枝
帰りゆく風待ち侘ぶる鴨 龍人
文使四つ身の肩で息をして 和子
婚姻の日にはたく白粉 真白
婿殿の性愛の癖知らされず
悋気に断つは撚りの細紐 久仁子
静かなる軒に燕が渡り来て とも子
春眠さめぬ戯作者の筆 和子
十一 花筏水の流れに逆らわず 栄子
十二 あのしやぼん玉消え果つるまで 初枝
十三 列島を覆ひつくして黄砂降る 龍人
十四 温家宝さん笑顔よろしき
                     
二裏
通訳のポケットにある映画券 真白
握りしめたる手のひらの汗 とも子
抱かれゐし浴衣の腕に木の香り 久仁子
三叉路迄を送られて行く 栄子
とつぜんにENDENDの旗竿あがる 和子
洗濯日和といふ言葉あり 龍人
川音に耳かたむけて秋蛙 初枝
さはさは細き糸芒揺れ 真白
廃屋もいざ華やげと月渡る
やぶれ畳に秋扇落つ 久仁子
十一 老猿は上野の森の頑固者 とも子
十二 つと寄りそへる九十九髪美し 和子
十三 帰り花世の乱脈を見せ付けて 初枝
十四 木枯らし遊ぶビルの谷間に 栄子

                     
三表
年越しのそばを三杯食べる馬鹿 龍人
腹満ちたれば眠るむささび
飛び立ちしサン=テグジュペリ帰り来ず 真白
手持ちぶさたで素振り始める とも子
ぬつと立つ団地の壁に影法師 久仁子
余寒を鎧ふ世に出でぬ武者 和子
頼まれて茶摘みに加勢するも良し 栄子
おしやべりの間に春は暮れ行く 初枝
ヘンなものドン・キホーテで、買ひ、隠し
ひとには言へぬコレクションあり 龍人
十一 花園に泡立つ草やシャボン草 とも子
十二 半端彫りなる背の入れ墨 真白
十三 月光に横顔さらす薬売り 久仁子
十四 金柑甘くあまく煮詰めて 栄子
                     
三裏
六地蔵に婆がそなへし草の花 和子
家族風呂から見てる山並 龍人
キャンドルがアダムとイヴを炙り出す 初枝
今宵あなたを離しませんよ とも子
このごろは屋根の瓦も釘で止め
煙突で聞く冬の足音 真白
冬三日月松の上枝に一休み 栄子
遊び上手な水平尾翼 久仁子
行く先は定めてゐない旅路にて 龍人
出世コースのはての補陀落 和子
十一 春泥の心をもちて酒を酌む とも子
十二 眩暈?陽炎?わからなくなる 初枝
十三 石にさへ花は積もりてやはらかき 真白
十四 煙草の匂ふ『連歌概説』

                     
名表
こどもらの自転車競技始まりて とも子
あなた好みの髪に結ひ上げ 栄子
くちびるをそつとうなじに押し当てつ 初枝
無言に紡ぐ時間過ぎゆく 龍人
ためらはず一夜限りのあだ枕 久仁子
葵祭に馳せ参じをり 真白
簾売の雲の根付の煙草入 和子
仕事終ひに買ひし葛餅 とも子
BLOGなど生甲斐にする愚か者 真白
鋏ばかりはちよいと上手くて 初枝
十一 川柳を数多詠まんと筆を取り 栄子
十二 うつむく人の盆の窪見つ 久仁子
十三 まん丸い月がつくつた影法師 龍人
十四 せいたかのつぽの案山子踏ん反る 和子
                     
名裏
樫鳥に流行言葉を真似られて
トゥギャザーしようぜ!なんてうそだろ。 真白
玉子酒すすりていつか仲直り とも子
羽子板市の声を楽しむ 初枝
世界中どこにでも居るチャイニーズ 龍人
見渡す限り霞たなびき 栄子
遠近は花の姿に識るばかり
挙句 のたりのたりと春の波たつ 久仁子


* 連衆 歌人:西王燦・山本栄子・谷口龍人・青木和子・山野とも子・平居久仁子・荒木美保・藤田初枝・山科真白 *

* 捌 山科真白  総監修 西王燦 *

2007.1.1−12.16

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