師弟歌仙 「カーテンに」の巻

西王 燦 VS 山科真白

初折(表)
    1 発句(長句)    カーテンに真白き風や秋の指   燦  
   2 脇句(短句)   燦く月が照らせるオブジェ   真白  
   3 三句(長句)    洋梨の一個つやつや雫して      
   4 四句(短句)     金の牡鹿はいずこに啼くか   真白
   5 五句(長句)    若者は脇に抱える管楽器     
   6 六句(短句)     電話番号あやふやなまま   真白


初折(裏)
7  初句(長句)    小紋着て書家の屋敷を訪れる     真白
8  二句(短句)       もつれ降りしく欅の枯葉       
9  三句(長句)  迷い子の兎を追えば恋のこと     真白
10 四句(短句)    手袋脱いで片えくぼ見せ       
11 五句(長句)  うなじまで白粉はたき人を待つ     真白
12 六句(短句)    絹裂く音もつつむ後朝         
13 七句(長句)  絡ませた指が離せぬ別れ際      真白
14 八句(短句)    ハート印に破魔矢を刺して        
15 九句(長句)    気に入りの羽子板買うて帰宅する  真白
16 十句(短句)       どこかで氷解ける音する         
17 十一句(長句)  黙したる花は静かに咲き初めし  真白
18 十二句(短句)       あれに見えるは茶摘じゃないか  


名残の折(表)
19 初句(長句)     幼日の落書き残す雛の箱      真白
20 二句(短句)       誰に宛てたか手紙一束       
21 三句(長句)     言い訳を百万遍も繰り返し       真白
22 四句(短句)       汗が流れる顎から胸へ       
23 五句(長句)     打ち下ろす間合いをはかる蝿叩    真白
24 六句(短句)      ビールの泡は恋の引き潮?    
25 七句(長句)    追わぬなら思い捨つ舟漕ぎ出でし  真白
26 八句(短句)      心中行はキャンセル待ちで     
27 九句(長句)     真っ直ぐに同じところに立つ案山子 真白
28 十句(短句)       通草は開き郁子は開かず     
29 十一句(長句)  感嘆詞吊り下げながら月は満ち   真白
30 十二句(短句)      伊丹の空に飛行船浮く       


名残の折(裏)
31 初句(長句)      別れとう言葉似合わぬ三宮       
32 二句(短句)         《裸のマハ》にかける外套     真白
33 三句(長句)      着膨れて《梟の城》を観て戻る     
34 四句(短句)        密命受けた忍者が動く      真白
35 五句(長句)    音もせずただひとところ花明かり    
36 挙句(短句)         蝶々が舞う思い出の庭      真白


1999.SEP〜OCT