歌仙    雛の客の巻

 
初折の表
発句 一様にお澄まし顔や雛の客 初枝
ほろ酔ひこゑで真似る鶯 真白
第三 ちよび髭の校長授与する卒業証 和子
路面電車がゆつくりと行く 栄子
盆の月坂の上から見えてきて
折端 新涼の野に薄茶いただく 久仁子
初折の裏
折立 猪が曳きてゆきたる太い影 龍人
美乳ですよと笑みを送られ とも子
きらきらのブラストラップ愛づるひと 真白
時間をずらし宿を出でたり 初枝
石畳家並み途切るる所まで 栄子
いそぎゆくよな短夜の月 和子
朝まだき鱚釣る友と落ち合いて
五月晴れなる海をまぶしむ 龍人
空色の帽子目深に直しつつ 久仁子
盗つ人そろり宵に紛れし 真白
十一 お白州に花吹雪散る幕切れの 初枝
折端 都踊りの拍手続きて 栄子
                   
名残の表
折立 遠足のバスでおやつを分け合ひぬ とも子
ポッキー、アポロ、小枝、チェルシー
おやすみとあつきキスするツィイギーのフォト 和子
か細き腰に廻す左手 栄子
木枯らしの音が静かに届く部屋 龍人
むつ言尽きず冷むる湯豆腐 初枝
寒椿つむぎの胸を引き寄せる 久仁子
おまへさんとは冥土までゆく 真白
つれづれを鼻毛ひきぬく渡し守 和子
太極茶道始められたる とも子
十一 雄大な月を引き連れ吟歩せば 初枝
折端 蔦の絡まるチャペル懐かし
名残の裏
折立 二輪車の影も曲がれり路地の秋 栄子
夕餉知らせる母の声する 久仁子
父さんは九官鳥に笑はれて 真白
春に家族が増えるのも良し 龍人
幼子も混じりにぎはふ花座敷 とも子
挙句 山吹色にすえひろの紋 和子



連衆:歌人 西王燦・山本栄子・谷口龍人・青木和子・山野とも子・藤田初枝・平居久仁子・山科真白

捌 : 谷口龍人   総監修 : 西王燦


2007年3月13日-7月12日.....BBSにて


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