≪PHOTO by 花恋≫

..... 百韻 『初空にの巻』 .....

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初表
発句 新年 初空に手招きをする寵姫かな 真白
新年 誘はれていざ行かむ若菜野
第三 しはぶきの一つ聞こえぬ能楽堂は とも子
どうどうたらり歩みそめたり 和子
若駒が外に出たいと戸を蹴りて 龍人
荒ぶる野辺に名残雪降る 圀臣
陽が動きすみれ一群際立たす 栄子
春光を描く禿頭の画家 真白
                     
初裏
衰へを知らないままの老ピカソ
奪ひ合ふのか長き営み とも子
ゆらゆらと吊り橋ゆれてひとと会ふ 龍人
吾をうけとめよ遠き鳴神 和子
冷奴半分ずつの隠れ宿 栄子
髪洗ひつつ別れ話を
死の種子を海賊伝に挿みつつ 真白
口移しなる毒酒あふらな 圀臣
改札に「駅長さん」と呼ぶ声し とも子
秋めく今日を旅に出で立つ 龍人
十一 ひいやりと宿場女郎の腿やせて 和子
十二 吾亦紅色の小袖褒められ 栄子
十三 月光に暴かれてゆくやうな恋
十四 バルコンで読む召集令状 真白
                     
二表
銀だこを土産に買ふて帰らばな 圀臣
靴音高し凍土歩めば とも子
アラスカの雪舞ふなかの露天風呂 龍人
風花きみにとまりては消ゆ 和子
眺望が良いねと二人居並びて 栄子
遠景に城、近景にキス
金色の捲毛が指に絡みつき 真白
かへすがへすも切なき別れ 圀臣
うぐひすの声鳴きわたる牧草地 とも子
のどかに遊ぶ牛の群れ見ゆ 龍人
十一 つのつきあふ眼にも見ゆるや花吹雪 和子
十二 垣根を越えて弾むこでまり 栄子
十三 野遊びのサッカー少年危なげに
十四 擦過傷が癒える土曜日 真白
                     
二裏
コバルトの水流れ行く渓谷に 圀臣
はぐれし鮎かゆらり泳ぎて とも子
あじさいの花に秘めたる想ひあり 龍人
うつむくうなじの白くはかなし 和子
控え目なところが好きと言ふあなた 栄子
ハートマークに滲む涙が
稲妻にうたれて奇し色硝子 真白
野分来たればゆるる火の光(かげ) 圀臣
山越えてのたりのたりの月が行く とも子
秋草なべて寂しかる村 龍人
十一 濡れそぼつ弥陀の御足を濯がむか 和子
十二 そろりそろりと下る坂道 栄子
十三 老い人もややに華やぐかへり花
十四 毛皮を羽織るマリーの写真 真白

                     
三表
写真では物足らぬとぞ炭火いふ 圀臣
狩人の背獲物ずしりと とも子
恋よりも音楽よりもまづ美食 龍人
わが汗にすべるボディビルダー 和子
ハンカチは白に限ると独り言 栄子
喪服の裾を汚す春泥
鞦韆をやさしく揺らす風ありて 真白
はなびらひとつ水面すべらす 圀臣
曙の空を思ひて歩み行く とも子
明日は見えねど翔んでみやうか 龍人
十一 祖父秘蔵平賀源内遠眼鏡 和子
十二 峠の茶屋でひと休みして 栄子
十三 ちよんちよんと団子に耳さす月の夜は 真白
十四 天の川さへ浅く見えをり
                     
三裏
あさがほは蜜もかをりも持たざれど 圀臣
口づけすれば淡く応ふる とも子
ひとと会いひとと別れた思案橋 龍人
みぬちに響動むとむらひの鐘 和子
起重機が吊り上げている鉄の棒 栄子
海中都市に建てる劇場 真白
招かれぬ客の外套忘れられ
雪の衾が閉ざすバス停 圀臣
空ばかり見てる流しの床屋ゐて とも子
塒へ急ぐ鳥の群れあり 龍人
十一 ふらここを帰りたくない男こぐ 和子
十二 春の野原を吹かれつつ行く 栄子
十三 忘られし古寺に花は散り積もり 真白
十四 文殊菩薩に目鼻あらざり

                     
名表
利根川も水嵩増せば猛猛し 圀臣
時空を超へた恋もあるべし 龍人
黒髪をあなた好みに切りました 栄子
今宵は何を弄ばむか とも子
あはぬ恋だにおもかげを子は宿し 和子
鮒を金魚に変へる試み
朝より蝉の鳴き声姦しく 圀臣
夏のサタンが老いさらばへる 真白
永遠のいのち求めたギルガメシュ 龍人
シュメール語はいまだ知らざり 栄子
十一 闇に立つ光の塔は凛として とも子
十二 もとにかさなる千人の死者 和子
十三 地獄谷温泉猿と見てる月
十四 薄穂並みににほふ硫黄香 圀臣
                     
名裏
蜻蛉の後追ふ童五人ゐて 真白
もはや私は翔ぶこともなく 龍人
足元に崩れて白き霜柱 栄子
家に帰ればちやんこ鍋あり とも子
たちかはりヘルスメーター乗り比べ 和子
医学全書を棚にをさめる 真白
花びらは風の随に吹かれきて 圀臣
挙句 しばしとどまれ春の歌声


* 連衆 歌人:橘圀臣・西王燦・山本栄子・谷口龍人・青木和子・山野とも子・山科真白 *

* 捌 西王燦 *

2005.1.1−2006.10.24

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