歌仙    あかとんぼの巻

初折の表
発句 あかとんぼ砂漠はテロの災止まず    初枝
月の駱駝も解かぬ軍装
第三 七夕の願ひを揺らす風もなし 真白
誰かが誰かを呼ぶ声がする 龍人
待合ひに老若男女あふれをり 和子
折端 硝子のそとの草につく霜 博士
初折の裏
折立 小春日に拘るこころほどけゆく とも子
膝貸して居る小半時ほど 栄子
物思ひ浴衣の乱れも気が付かず 初枝
乳房の汗も奪はれてゐる 真白
きぬぎぬにかをり豊かな熱い茶を 龍人
天際までの曼珠沙華の道 和子
きのふより月の腹やや脹らみて 博士
常連集う居酒屋の前 とも子
マンションを売つてあげると電話来る 栄子
そろそろ雛も飾りてみたし 初枝
十一 色白の花盗人が花の陰 真白
折端 夏近き日の宵を歩みて 龍人
                   
名残の表
折立 ぷらちなの色にふらここゆれてをり 和子
ぬーぶらの裏ほの見ゆるまで 博士
昇竜を思ひて熱きこころ抱く とも子
いざなはれ行く貴船川床(きぶねゆか)へと 栄子
塩焼きかはた味噌焼きか鮎悩み 初枝
フロイトの髭たゆむ黄昏 真白
ルノワールの描きし裸婦が立ち上がる 龍人
奉納相撲の呼び出しの声 和子
蜩の生まれかはりに鳴くものよ 博士
ふるさと唐の酔芙蓉咲く とも子
十一 満月も湯浴みしてゐる露天風呂 栄子
折端 しやなりしやなりと狐が通る 初枝
名残の裏
折立 たはやすく右の手で抱く落葉籠 真白
萬両紅い山間の路 龍人
昼ふかし一言主の橋わたる 和子
欄(てすり)なければ底畏ろしい 博士
公達の揃へて踊る花の舞 とも子
挙句 吉事の予感春のあけぼの 栄子



連衆:西王燦・山本栄子・谷口龍人・青木和子・山野とも子・矢嶋博士・藤田初枝・山科真白

捌:西王燦

2003年8月21日-10月14日.............BBS於

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