歌仙『しぐるるや』の巻 
           Eメール文音  1990年12月1日〜12月30日

  【初表】
   発句   冬・自    しぐるるや西暦笑ふ無精髭        燦
   脇    冬・場     口より手が先かこむ鋤焼       勇魚
   第三   冬・場    寒太鼓女子高前を通過して       媚庵
   四句   雑・他     慣るる衆打つ音へ変りぬ       白雨
   五句   春・月・自  鏡中になほおぼろなるおぼろ月      零
   六句   春・場     つくづく見ればしゃぼん玉だよ     燦

  【初裏】
   折立   春・他    すばらしき人生孕み猫を抱き      勇魚
   二句   雑・他     自費出版の詩集完成         媚庵
   三句   雑・自    恵存と書きて筆置き一呼吸       白雨
   四句   雑・自他半   髪と髪とが触れゐたるのみ       零
   五句   夏・他    砂日傘女男の松根に閉ぢられて      燦
   六句   夏・場     汗しとどなりリングサイドも     勇魚
   七句   雑・自    引退後警備会社に奉職し        媚庵
   八句   秋・月・自   熟知してをり月の満ち欠け      白雨
   九句   秋・他    蓑虫の数も書きこむ記録魔め       零
   10句   秋・場     「越後鶴亀」壜に菊挿せ        燦
   11句   秋・花・自  花描くカンヴァス虫の声を背に     勇魚
   12句   雑・他     ペーパーバックに読みふける人    媚庵

  【名表】
   初句   雑・他    探偵の科白いささか北訛り        燦
   二句   雑・自     酒精中毒自覚して飲む        媚庵
   三句   冬・場    裸木の下ゴミぶくろ累々と       勇魚
   四句   冬・場     けふは『たきび』となるオルゴール   零
   五句   冬・自    筆にてもつけしことある古日記     白雨
   六句   雑・他     アンネ・フランク年頃だって      燦
   七句   雑・他    赤飯を炊く母と泣く妹と        媚庵
   八句   雑・自     お子さまランチ日の丸まづ取る    勇魚
   九句   春・場    童謡は懐かしきものつくしんぼ     白雨
   10句   春・月     東はどちら夕月朧           燦
   11句   春・自    春深きにほひ袋を選りあぐね       零
   12句   雑・他     善男善女地蔵参りへ         媚庵

  【名裏】
   折立   雑・場    香を焚く部屋にドアーズ満ち満ちて   勇魚
   二句   雑・場     黒きアンプはローテルといふ     白雨
   三句   雑・他    老い父が白髪染めもて描く漫画      燦
   四句   雑・自     このごろはさう雲と友だち       零
   五句 花 花・自    余花の下次の世紀の花おもひ      媚庵
   挙句   夏・場     ひかりの宴青葉ささめく       勇魚