歌仙「流連の」の巻 (一巻一字) 1998年5月28日首 1998年6月18日満尾 Eメール
初表 発句 夏 流連(ゐつづけ)のむかし男の薄暑かな 月彦 脇句 夏 南風(みなみ)にささめく襟足の髪 勇魚 第三 雑 地曳き網総出で掛かる声ならむ 白雨 四句 雑 砂丘のかなた半島が見え 燦 五句 秋・月 靴擦れの父と歩めば昼の月 零 折端 秋 文学賞に落ち秋刀魚焼く 月彦 初裏 折立 秋 西鶴忌世之介好みの女(をみな)ゐて 勇魚 二句 雑 くぐもる音の五球スーパー 白雨 三句 雑・恋 途切れつつ咽喉も嗄るると恋の歌 燦 四句 雑・恋 窓より投げて写真返しぬ 零 五句 雑・恋 白無垢の山川登美子嫁ぎゆく 月彦 六句 雑 病み臥す床に反古もそのまま 勇魚 七句 冬・月 凍る月触れなば鍵盤崩るらむ 白雨 八句 冬 教会の庭霜を飾りて 燦 九句 雑 誰彼の秘密を穴に喋りたし 零 十句 雑 ノートの端の旧(ふる)きイニシャル 月彦 11句 春・花 花ごろも素肌に着こなすはんなりと 勇魚 折端 春 雪代水もぱつと飛び越え 白雨
名残表 折立 春 春の橇馬にも飲ます大徳利 燦 二句 雑 鍼灸院の灯る夕暮れ 零 三句 雑 長塚節生きの緒旅に細りゆく 勇魚 四句 雑 カートを押して北ウイングへ 月彦 五句 夏 今日の空どんより曇つて夏至であり 白雨 六句 夏 睡蓮ひらき漣もなし 燦 七句 雑・恋 人妻がシニヨンほどく小(ち)さき部屋 零 八句 雑・恋 逢瀬に鯉濃味はひながら 勇魚 九句 雑・恋 イメクラのチラシにしばし目をとめて 月彦 十句 秋 野菊を活ける老酒の壺 白雨 11句 秋・月 姥捨は雨戸閉ぢても月明り 燦 折端 秋 鬼瓦ただ冷まじきなり 零 名残裏 折立 雑 ツイスター魑魅魍魎も巻きあげて 勇魚 二句 冬 発禁となる『剣と寒紅』 月彦 三句 冬 短編の『砕氷船』にとりかかる 白雨 四句 雑 しづごころとはどんな心か 燦 五句 春・花 篝火へ牽かるるごとく花こぼれ 零 挙句 春 茜のきはみ帰る雁がね 勇魚