歌仙『くれなゐの文字』の巻 1999/03/26 〜1999/04/12
【初表】
1 発句 春・他 くれなゐの文字のはがきや春嵐 零
2 脇 春・他 来歴知られず種蒔く男 勇魚
3 三句 春・月・自 春月光浴び占ひは凶と出て 媚庵
4 四句 雑・自 ノブを回せば折れて落ちたり 燦
5 五句 夏・他 半夏生ウイルスの付くEメール 白雨
6 折端 夏・他 蛇のかたへに笑ふくちびる 零
【初裏】
7 初句 夏・場 妹は酸漿市に消えしまま 勇魚
8 二句 雑・自 上海男娼館を訪ねる 媚庵
9 三句 雑・自 四鰓鱸什錦暖鍋など食つた後 燦
10 四句 雑・場 闇ほのじろく息づく砂丘 白雨
11 五句 雑・他 靴を捨てわたしにひざまづきなさい 零
12 六句 秋・恋・自 首領(ドン)の情婦と長き夜落ちゆく 勇魚
13 七句 秋・恋・場 霧笛鳴り燃ゆる素肌の蛇頭船 媚庵
14 八句 月・恋・場 口紅の莢月に濡れつつ 燦
15 九句 秋・自 寒石榴胸へ腹へと描きなぐる 白雨
16 十句 雑・他 いつか殺めてしまふさだめか 零
17 11句 雑・花・他 血痕の花びら鮮烈地下室に 勇魚
18 12句 雑・自 靴底減らし聞き込み続け 媚庵
【名表】
19 初句 雑・自 渡さるるカクテルグラスかぼそくて 零
20 二句 冬・場 冬の館(やかた)の石見銀山 媚庵
21 三句 冬・場 降雪に交通遮断されしまま 白雨
22 四句 冬・自 DNAにも星は探れず 勇魚
23 五句 雑・他 ラヴホテル『禁忌』の床に髪飾り 燦
24 六句 春・場 鏡のなかのかげろひてゐる 零
25 七句 春・自 春灯下人間椅子の心地良き 媚庵
26 八句 春・自他半 縫針でなき針供養する 白雨
27 九句 雑・他 胸伝ふ涙がつひに怨恨に 勇魚
28 10句 夏・場 死装束の白き虫干し 燦
29 11句 夏・月 月けぶる百物語なかば過ぎ 零
30 12句 夏・他 冷や麦すする亡き人も居て 媚庵
【名裏】
31 初句 雑・他 一寸それフェロモン写真集ですか 白雨
32 二句 雑・場 苦患の此の世厭離穢土とぞ 勇魚
33 三句 雑・自 心中の生き残りわがオートバイ 燦
34 四句 秋・自 割れたる長き爪も冷ややか 零
35 五句 秋・花・他 鳳仙花「ワタシハミタ」と誰が声や 媚庵
36 挙句 秋・場 二百十日の風吠ゆる空 白雨