百韻「蜩やの巻」(1998年8月26日〜10月15日)

初折・表=========================================================

1 発句  秋    蜩やよあけに百のこゑそろふ       白雨
2 脇   秋     野分のまへの草の蓬髪         勇魚
3 第三  秋・月  ぐづる子を昼月のした抱き上げて     零
4 4句  雑     跨線橋こえ駅の裏手へ         月彦
5 5句  雑    管理地と大書されたる文字かすれ     燦
6 6句  冬     牡蠣剥く女誰しも明るき        白雨
7 7句  冬    寒稽古はつしと白く面の声        勇魚
8 8句  雑     窓より見ゆる空の小ささ        零

初折・裏==========================================================

9 初句  雑    ベルリンの夜に天使舞ふ映画見て     月彦
10 二句  雑・恋   涙の色のピアス購ふ          燦
11 三句  雑・恋  特攻機発進したるその朝に        白雨
12 四句  春・恋   若駒と映ゆ君の面影          勇魚
13 五句  春    蜃気楼消ゆるまぎはの静けさよ      零
14 六句  春     ふらここ揺らし「生きる」と思ふ    月彦
15 七句  春・花  行きゆきてまた帰り来る花の雲      燦
16 八句  雑     長江遠く流るるをみる         白雨
17 九句  雑    天山南路4WDで駆けぬけて        勇魚
18 十句  夏・月   香水の香を打ちはらふ月        零
19 11句  夏    またの名をマタハリと告げ夏芝居     月彦
20 12句  夏     幕間を待ち焼酎にする         燦
21 13句  雑    抱瓶は腹にずしりとまだ重し       白雨
22 14句  雑・他   ヤマトンチュウに成りはてし兄     勇魚

二折・表==========================================================

23 初句  雑    思ひ出の太田裕美の唄流れ        零
24 二句  雑     立て看の文字「自由を我等に!」    月彦
25 三句  秋    人だかりから離れ来て鳳仙花       燦
26 四句  秋     女童好む染指草なり          白雨
27 五句  秋・月  月明る陋巷方代さんが行く        勇魚
28 六句  秋     湯呑茶碗に寄れるあぶれ蚊       零
29 七句  雑    赤鉛筆置きてノミ屋に電話する      月彦
30 八句  雑・恋   愛人遠く癪を告げたり         燦
31 九句  雑・恋  髪乱し不動明王の降魔の相        白雨
32 十句  雑・恋   エアロビクスに慕情抑へて       勇魚
33 11句  冬    今晩は寄鍋かはた豚カツか        零
34 12句  冬     白秋の忌も市場混雑          月彦
35 13句目 冬    昔風インパネスさへ売られをり      燦
36 14句目 雑     喉焼きつくすラフロウイッグ      白雨

二折・裏===========================================================

37 初句  雑    美少年三途の川の渡し守         勇魚
38 二句  雑     積み上げられし石に陽は射す      零
39 三句  春    ソネットを綴るペン先冴え返る      月彦
40 四句  春     風船追ひて走る姉妹か         燦
41 五句  春    下駄履きの若き父ゐて紀元節       白雨
42 六句  春・花   花のぼんぼり変若反りたし       勇魚
43 七句  雑・恋  ふとももにタトゥーを飾り逢ひにゆく   零
44 八句  雑・恋   大統領の醜聞の記事          月彦
45 九句  夏・恋  細君の枕の下の菖蒲草          燦
46 十句  夏・月   匂ひて窓に夏の月あり         白雨
47 11句  夏    赤富士のふもとの郷も罹災して      勇魚
48 12句  雑     体育館に詰まるにんげん        零
49 13句  雑    文庫版茂吉歌集に読みふけり       月彦
50 14句  雑     快速電車を酒田で降りる        燦

三折・表===========================================================

51 初句  秋    半ばなる請負工事鰯雲          白雨
52 二句  秋     鉄骨高きに法師蝉鳴く         勇魚
53 三句  秋    露に濡れ成功まぢか脱獄は        零
54 四句  秋・月   月光を背にパブの扉(と)を押す    月彦
55 五句  雑    昔日の撞球台に薄埃           燦
56 六句  雑     キューもチョークもそのままなれど   白雨
57 七句  雑    円卓をかこめる諸王朗笑す        勇魚
58 八句  雑     黒髪ながき通訳のひと         零
59 九句  冬    冬ざれの旧植民地彷徨す         月彦
60 10句  冬     弱音器付け吹かむ「枯葉」を      燦
61 11句  冬    北風がトランペットに喧嘩うる      白雨
62 12句  雑・恋   ホーム・ページで君には会ふだけ    勇魚
63 13句  雑・恋  待つ甲斐もなければつひに見合ひして   零
64 14句  雑・恋   夫婦茶碗を洗ふ退屈          月彦

三折・裏===========================================================

65 初句  新年   厨辺の窓に射し込む初日の出       燦
66 二句  新年    淑気のなかに筑波山みる        白雨
67 三句  新年   若潮がモービーディック連れてくる    勇魚
68 四句  春     しぐれ煮食ひぬ春の教室        零
69 五句  春    シャボン玉「ぬけられます」の路地をとぶ 月彦
70 六句  春     十三詣あすはひとりで         燦
71 七句  春・花  読ませたき『風姿花伝』を遅日なり    白雨
72 八句  雑     安田講堂ざんざか雨降る        勇魚
73 九句  雑・恋  それから…と言ひさすままに目を伏せて  零
74 十句  夏・恋   夢二ゑがきし絵日傘のひと       月彦
75 11句  夏・恋  待ちわびてあふぐ団扇も気だるげに    勇魚
76 12句  夏・月   はや白々と夏の月出づ         燦
77 13句  雑    モーニングセットの固きゆで卵      月彦
78 14句  雑     滞在してゐるラフルズホテル      白雨

名残ノ表============================================================

79 初句  雑    娘より金婚式の祝ひにと         零
80 二句  雑     南天直下銀の魚をり          勇魚
81 三句  秋    帆船に迷ひ込みたる秋の蝶        燦
82 四句  秋     紅葉且つ散る兵学校に         月彦
83 五句  秋    夜食後に千人針を順に刺す        白雨
84 六句  秋・恋   案山子見えゐて泣きしきぬぎぬ     零
85 七句  秋・月恋 弓張を眺むれどなほ妬ましく       勇魚
86 八句  雑     美少年録売る古書肆なし        燦
87 九句  雑    コンビニのバイト金髪刺青あり      月彦
88 十句  雑     韜晦してゐるモーツァルトか      白雨
89 11句  冬    冬薔薇に「サンクトゥス」とぞひびく声  零
90 12句  冬     冬を旅して魔の山に着く        勇魚
91 13句  冬    まづはこれ闇汁といふものを食ふ     燦
92 14句  雑・他   自称鉄幹門のひげづら         月彦

名残ノ裏============================================================

93 初句  雑    大名牟遅少那彦名を論じつつ       白雨
94 二句  雑     小青竜湯買ひ忘れたり         零
95 三句  雑    定宿のカプセルホテル「宇宙船」     勇魚
96 四句  春     のそりのそりと熊穴を出づ       燦
97 五句  春    苗代田まづ役立たぬ詩人にて       月彦
98 六句  春     日永ひながと繰り返しをり       白雨
99 七句  春・花  花降りて花の湯となる湯にひたり     零
100 挙句  春     抱卵期過ぎ四方(よも)の綾なす    勇魚



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