歌仙「初秋や」の巻         首 1999/9/?                    尾 1999/9/20
初表 1 発句  秋・自     初秋や海なほぬるく泳ぎゆく    勇魚 2 脇   秋・他      抜き手に触るる眉立茜       燦 3 三句  秋・月・場   小望月波の響きも遥かにて     媚庵 4 四句  雑・場      夜の静けさ深くなりゆく     白雨 5 五句  雑・自     原稿はひとまづ措いて模様替へ    零 6 六句  冬・他      影法師さへ凍割るるほど     勇魚 初裏 7 初句  冬・場     枯蔦が折れ曲がり大伽藍這ふ     燦 8 二句  冬・自      風邪薬買ひ終電に乗る      媚庵 9 三句  雑・自     覗き込む新聞記事はバイアグラ   白雨 10 四句  雑・他      恋ならずとも火照る体は     勇魚 11 五句  雑・他・恋   涙もて梁塵秘抄繰るといふ      燦 12 六句  春・場・恋    忘れねばこそ寒明けの空     媚庵 13 七句  春・自・恋・月 候と書きて筆止む朧月       白雨 14 八句  春・自      膝元の染み蝶に見えつつ      零 15 九句  雑・場     海峡の難所潮(うしほ)の渦巻きて 勇魚 16 10句  雑・場      末の松山どこにあるのか      燦 17 11句  夏・花・他   色白の少女が二人余花の下     媚庵 18 12句  夏・他      一寸おしゃれなサングラス掛け  白雨 名表 19 初句  夏・自     質流れ大バーゲンで汗だくに     零 20 二句  雑・場      化粧直しに続く行列       勇魚 21 三句  雑・他     あきらかに他人と見ゆる人ばかり   燦 22 四句  秋・自・恋    情死でをはる村芝居見る     媚庵 23 五句  秋・場・恋   帰り道キスせよとごと霧が濃し   白雨 24 六句  秋・場・月    月のひかりを宿すソナチネ     零 25 七句  雑・他     ジャズマンが巴里北駅に降り立ちて 勇魚 26 八句  雑・他      紙袋から酒瓶を出す        燦 27 九句  雑・場     ポスターの「男は夢の中に死ね」  媚庵 28 十句  雑・自      握る銃尻べとつきてをり     白雨 29 11句  雑・自     抗菌の歯ぶらし買つて帰るべし    零 30 折端  冬・他      謎の生物砕氷船に        勇魚 名裏 31 初句  冬・場     つくづくと見れば子連れの背美鯨   燦 32 二句  雑・場      納戸に五年前の缶詰       媚庵 33 三句  雑・自     ゆふまぐれそぞろゆくとき鈴が鳴り  零 34 四句  雑・自      ビリー・ホリディ部屋に満たして 勇魚 35 五句  春・場・花   カーテンを押しひらき降る花吹雪   燦 36 挙句  春・他      春眠不覚暁勇魚殿        媚庵