短歌折り込み半歌仙   「旅立ちやの巻」     捌・西王燦

首 Thu, 01 Oct 1998 05:44:24  尾 Sat,7 Oct 1998 07:17:27


発句 秋・月    旅立ちや無人駅にも月あかり      究太郎
Thu, 01 Oct 1998 05:44:24 
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脇  秋      文庫に挟む紅葉ひとひら        蜆汁
Fri, 02 Oct 1998 05:59:09 
投句
          一葉につづく千の言の葉        徒乱巴
          裾に重たく枯草の露          白雨
          文庫に挟む紅葉ひとひら        蜆汁
          男らしさを束ねし尾花         秋日子
          梨を買ふとき長く吹く風        睦
          一村の田を埋めし秋桜         黒旋風
          花野を胸に乗り込む夜汽車       万里
          桜紅葉の夜目にあざやか        白鴉
          白き机に柚子香る部屋         李桃
          フライにするとおいしい茸       龍閑橋
          千夜一夜を照らす言の葉        風子
          友垣駆けり来る真葛原         空色
          龍田姫ゐるほほゑみの列        王爾楼
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第三 秋      秋耕の畝ふとぶとと古詩に似て     徒乱巴
Sat, 03 Oct 1998 06:18:06 
投句
          秋耕の畝ふとぶとと古詩に似て     徒乱巴
          鵙の声その漢詩を愛すらむ       白雨
          言問ひの団子を雁の寺に食み      万里
          詩を吟じつつ早稲酒を温めて      黒旋風
          いちじくを(唐詩選/上)喰ひながら  龍閑橋
          さねかづら詩吟かすかに流れ来て    風子
          飄々と詩を吟ずれど案山子にて     秋日子
          栗飯と詩とを胃の腑に詰め込みて    蜆汁
          特売の秋刀魚にまさる詩句もなし    王爾楼
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四句 雑      陸橋をゆく三匹の犬          睦
Sun, 04 Oct 1998 08:16:13
投句
          夢に去りゆく媛の振る領巾(ひれ)   万里
          ゆくらゆくらと水の面をゆらす     徒乱巴
          ゆくさきざきの水のかがやき      李桃
          土のつぶてに風渡りゆく        秋日子
          まっすぐなみちをパレードはゆく    カツノ
          大河の上を龍の舟ゆく         蜆汁
          煙はゆくへしれずが普通        龍閑橋
          陸橋をゆく三匹の犬          睦
          ゆく先夜のタンゴ教室         黒旋風
          遠くより見ゆくもの白糸        風子
          湖面まばゆくさざなみを寄せ      鳩尾
          ゆくりなくわが少年に逢ふ       王爾楼
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五句 雑      つつかけで久方ぶりの友に会ふ     風子
 Mon, 05 Oct 1998 06:19:15 
投句
          つかのまのつかをつかんでぐぐぐぐぐ  徒乱巴
          辻つじの袋をねらひ朝鴉        黒旋風
          鐘の音五つを告ぐる急ぐべし      白雨
          涙目に固有名詞を捨つと言ふ      秋日子
          つくづくと堤のかたへに根を摘みて   カツノ
          園児らのいつもの歌を聞く窓辺     蜆汁
          幕間に夢の煮凝りみつめつつ      李桃
          生きていることをつゆとも疑はず    万里
          つついてやる砂時計いねむりしてた   龍閑橋
          街中のあかりをすべてつけ歩き     睦
          つっかけで久方ぶりの友に会う     風子
          にんげんの余白に何かふりつもる    王爾楼
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六句 夏      夏のにほひの雨に濡れつつ       秋日子
 Tue, 06 Oct 1998 06:05:39
投句
          すらりと夏が立つところまで      徒乱巴
          夏のにほひの雨に濡れつつ       秋日子
          夏スタンドにこゑをからして      黒旋風
          僧門の夜に破夏は兆して        カツノ
          晩夏の光くらくらとして        睦
          夏の朝の向かう側にて         万里
          虹に触れなむ夏のまぼろし       蜆汁
          サッカーボール夏を蹴散らせ      龍閑橋
          朱夏真っ青な空の真下で        風子
          それぞれの夏いくつ手にして      黄亭
          とどこほりなく夏満ちてゐる      王爾楼
          夏の日差しに土けむり立ち       昴
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七句 夏      淡彩のやうに涼夜の笹穂垣       鳩尾
 Wed, 07 Oct 1998 06:39:28
投句
          崩れだす氷山のやうに雲の峰      白雨
          うすもののやうに木立をおほふ風    徒乱巴
          カチューシャのやうに蜥蜴を頭にのせる 李桃
          螢はや付点音符のやうに飛ぶ      万里
          目つむれる指揮者のやうに蝸牛     黒旋風
          瑠璃玻璃のさざ波は寄す羅のやうに   カツノ
          笑ふやうに転がり落つる青胡桃     風子
          振り向けば雅楽のやうに月見草     黄亭
          しんとして蚊取線香のやうに朝     龍閑橋
          淡彩のやうに涼夜の笹穂垣       鳩尾
          痣ひとつたからのやうに道をしへ    秋日子
          悔恨のやうに走りぬ青嵐        蜆汁
          大の字になる虫干の書のやうに     究太郎
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八句 雑      そつと覗けばたまごを抱き       黒旋風
Thu, 08 Oct 1998 06:43:08 
投句
          迷つたふりの声したたかに       徒乱巴
          「た」のキーたたけば「Q」とでてくる 白雨
          くるり宙返りをしてみせた       龍閑橋
          そつと覗けばたまごを抱き       黒旋風
          手のひらほどのたぬきを買ひて     昴
          うたがふことを知らず金糸雀      鳩尾
          父あらはれて勝つたかと問ふ      李桃
          茶漬けさらさら腹におさめた      風子
          地面に枝で書きたる一語        万里
          たぶんためらいがちにたたた、と    秋日子
          かたたたきなどたのむふりして     究太郎
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九句 雑・恋    護符としてあなたの明日をあたためる  李桃
Fri, 09 Oct 1998 06:18:03
投句
          明日には孵化するはずの恋といふ    徒乱巴
          恋文に明日待子と書きて消し      月彦
           (あしたまちこ)
          森林公園駅前一戸建明日買おう     龍閑橋
          明日まで踊り明かそうドンジャラホイ  白雨
          護符としてあなたの明日をあたためる  李桃
          明日また産むことにして欠伸せり    秋日子
          急に手をはなして君は「明日」と言ふ  究太郎
          明日こそはあすこで声を掛けたいと   万里
          夜の海は明日の朝にはあらぬもの    カツノ
          あらはなる明日の日差しに肩の白    カツノ
          「明日はない」今生今宵にこの言葉   カツノ
          明日またとしのび笑ひをかはしつつ   睦
          返信を明日の朝には届けたし      黄亭
          明日またきっとどこかで君に会う    風子
          明日来るとのみあるメモに口づける   蜆汁
          頬そめて明日を孵す誓ひする      王爾楼
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10句 雑・恋    二時間前とちがふ髪型         王爾楼
Sat, 10 Oct 1998 06:38:45
投句
          浜の真砂の星のささめき        徒乱巴
          忘れねばこそわたしであるなれ     白雨
          美髯の青年東男ぞ           隼人
          区役所行きのバスを見送り       鳩尾
          唇(くち)に貼り付くお化粧紙の    秋日子
          そんな私をやや持て余し        万里
          君の匂いの路地に帰りて        昴
          「定キチ二人キリ」と刻んで      月彦
          夢で行こまいヒマラヤの尾根      龍閑橋
          封をひらかん間もいとおしく      黒旋風
          四隅揃へてたたむハンカチ       黄亭
          恋の行方を掴み損ねて         風子
          二時間前とちがふ髪型         王爾楼
          おなじ星見るプラネタリウム      究太郎
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11句 雑・恋    両性ノ合意雑魚寝の位置関係      龍閑橋
Sun, 11 Oct 1998 07:08:06 
投句
          合気道五段閨房の秘事不得手      隼人
          心地よく柄杓の合打つ音を聞く     白雨
          長椅子に重なり合ひし服と服      蜆汁
          腕からめ歩調合はせる散歩道      和夏子
          合コンによこしま心乱れ合ひ      月彦
          しらじらと超合金は泣きもせず     秋日子
          両性ノ合意雑魚寝の位置関係      龍閑橋
          此は如何に逢ふて合はざる不如意の意  徒乱巴
          合わせ見る鏡の奥に闇深く       昴
          玉の緒の交合絶えて烏賊を裂き     カツノ
          乗合のバスの向かいのあなたゆゑ    カツノ
          別れのキス硝子はさんで合はせをり   究太郎
          すくい見る合縁奇縁の君の背を     風子
          ピアスだけつけてゐるのが合ふをんな  王爾楼
          夜を語りつくせば羽合生まれなり    黒旋風
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12句 雑or冬    消えて間もなき火事場覗きて      蜆汁
Mon, 12 Oct 1998 06:49:36 
投句
          冬の霧消えてらひすらなし       白雨
          暁の星消えて入るまで         和夏子
          傷もつおとこ消えてしまつた      秋日子
          煙草火消えて寒北斗冴え        月彦
          鰭酒の後は嚔も消えて         カツノ
          ほっかむりして消えて くっさめ    カツノ
          馬消えてなほ冴ゆる空気は       徒乱巴
          定まらぬ句の消えて生まれて      黒旋風
          たき火が消えて太え希貝来た      龍閑橋
          消えて欲しいと言ってしまって     風子
          かほりも消えて日溜まりばかり     睦
          のの字ほぐれて冬雁消えて       万里
          冬のキャンパス合宿所消えて      究太郎
          消えて間もなき火事場覗きて      蜆汁
          隣人消えてサラ金が来る        王爾楼
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3句 冬・月    仮住みの猫町冬の月照らす       隼人
Tue, 13 Oct 1998 06:37:30
投句
          月の弧に雪ふりつもり満つといふ    徒乱巴
          凍る月かつてわが身のうちにすみ    龍閑橋
          仮住みの猫町冬の月照らす       隼人
          消防夫月に氷柱を刺してゆく      秋日子
          寒月は砥石に研がれしごとく冴ゆ    白雨
          係争の更地に円い寒の月        黒旋風
          顔見世のゑひもせす京月冴ゆる     月彦
          酔い覚めの暁暗つきは凍てており    カツノ
          めくれたる目貼りのむこうを月は冴え  カツノ
          池の水汲むたび冬の月ゆれる      李桃
          しらじらと冬三日月の夜歩く      風子
          月球のふるへて氷柱の先端に      万里
          小春日にカルピス色の月のぼる     睦
          有明に沢庵の香を愛でてゐる      蜆汁
          寒月の沈むふもとの森へ行く      和夏子
          月影に霜の柱を踏みていき       昴
          しんしんと詐欺師の指も冬月も     黄亭
          なげけとておでんの鍋に月浮かぶ    王爾楼
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14句 雑      からいカレーを食べに行きたい     和夏子
 Wed, 14 Oct 1998 06:49:27
 投句
          からだひとつにめしを詰め込む     徒乱巴
          檻に飼はるる食用の犬         隼人
          手から落ちたるたこやきの舟      みを
          下駄音立つるからんからんと      白雨
          根っからの小路者へと酒屋       カツノ
          外気はいつも天からくだる       カツノ
          うからやからの酌み交はす酒      李桃
          「それから」といふ居酒屋もあり    秋日子
          おから煎るたび薄くなる鍋       龍閑橋
          「嬶の打った蕎麦食ふてから」     万里
          裸眼顔妻まづお燗から         黒旋風
          詩人と歌人から逃げはじめ       月彦
          からくり時計弄びつつ         ゆきの
          卵のからをざつくりと剥ぐ       昴
          からいカレーを食べに行きたい     和夏子
          からあげにするいわし十匹       黄亭
          右から左遠ざかる雨          風子
          ペットフードも「ここからあける」   究太郎
          庭から空へ逃げ出すさかな       王爾楼
          窓から捨てるシャトー・マルゴー    蜆汁
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15句 雑      赤錆の非常階段二段落ち        カツノ
Thu, 15 Oct 1998 06:55:28 
投句
          檀家談非常階段評価大         徒乱巴
          非常階段飢餓峡谷の傾斜たり      隼人
          まだ非常階段指紋採取中        みを
          せはしなく非常階段スカートが     万里
          空港の非常階段螺旋状         秋日子
          カブキつつ非常階段上り詰め      月彦
          あきなひの非常階段なく亭主      黒旋風
          つっかけで非常階段駆け上がる     詠人
          病状として非常階段的句割れ      カツノ
          赤錆の非常階段二段落ち        カツノ
          夢みしゑ非常階段なかぞらに      龍閑橋
          国境を望む非常階段に         李桃
          金色に非常階段塗り直し        究太郎
          遠吠えはとき色非常階段の       昴
          音もなく非常階段駆け下りる      和夏子
          夕かげが螺旋階段すべりだす      睦
          非常階段をスパイス飛び降りる     風子
          天空へおろちか非常階段か       黄亭
          ファファミレド非常階段音立てる    白雨
          靴音の非常階段ドレミレド       王爾楼
          非常階段のみ残る遠未来        蜆汁
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1
16句 春      ただ長閑なる寄席の看板        みを
Fri, 16 Oct 1998 06:38:34 
投句
          きのふを忘れけふはるになる      徒乱巴
          ただ長閑なる寄席の看板        みを
          春なれどハイジハイな痔になる     山の手夫人
          なるほど死語にシャボン玉売り     白雨
          春が来るたび懐かしくなる       和夏子
          しなる指から真珠を逃がす       詠人
          あたらしい春服しわになる       龍閑橋
          雲雀になると約束したが        秋日子
          傷口しみて春色になる         究太郎
          富士より高くしなる公魚        黒旋風
          痣になるやも朧夜のころ        万里
          あばらの骨が弱くなる春        風子
          陽炎ふむこうに聴く父の声       カツノ
          炉塞ぎたれば茶はさめておる      カツノ
          朝寝決め込むなるやうになる      蜆汁
          そしてさらなる陽炎こぼす       黄亭
          冴えかえる夜に蔓状となる       睦
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17 春・花     「大阪屋花鳥の巻」を語り終へ     月彦
Sat, 17 Oct 1998 07:17:27
投句
咲く花の「さ」。飛べるんだの「と」。「し」はええと・・・ 徒乱巴
         「大阪屋花鳥の巻」を語り終え      月彦
         ウラウララッ山本リンダ花うらら     山の手夫人
         ポール牧花の牧場に指パッチン      山の手夫人
         ポール・マッカなトニー谷の花      山の手夫人
         雄々しき樹咲き誇る花好青年       白雨
         ラーメンは永遠である花霞        龍閑橋
         見上げればしゃらしゃら花が降りかかる  風子
         ペンキ塗りたてのベンチに花は散る    究太郎
         千枚の葉も萌え出でて花吹雪       蜆汁
         聡明であれと子を抱く花の森       蜆汁
         花の里しづかに芯を陽にかざす      李桃
         マジシャンが指を鳴らせば花吹雪     ゆきの
         薄闇に花のあかりがほつほつと      睦
         正装にやんややんやの花吹雪       秋日子
         花の昼テディベアの耳揺れて       純子
         しめやかに新しき花舞ふ夕べ       和夏子
         花はいま古典の庭にくちびるに      黄亭
         花ざかり手拍子鳴りて止みもせず     みを
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18 挙句 春   春ぢや春ぢゃと盃が来る          燦
Sat, 17 Oct 1998 07:17:27
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発句 秋   旅立ちや無人駅にも月あかり       究太郎
脇  秋    文庫に挟む紅葉ひとひら         蜆汁
第三 秋   秋耕の畝ふとぶとと古詩に似て      徒乱巴
四句 雑    陸橋をゆく三匹の犬            睦
五句 雑   つつかけで久方ぶりの友に会ふ       風子
六句 夏    夏のにほひの雨に濡れつつ       秋日子
七句 夏   淡彩のやうに涼夜の笹穂垣         鳩尾
八句 雑    そつと覗けばたまごを抱き       黒旋風
九句 雑・恋 護符としてあなたの明日をあたためる    李桃
10句 雑・恋  二時間前とちがふ髪型         王爾楼
11句 雑・恋 両性ノ合意雑魚寝の位置関係       龍閑橋
12句 冬    消えて間もなき火事場覗きて       蜆汁
13句 冬・月 仮住みの猫町冬の月照らす         隼人
14句 雑    からいカレーを食べに行きたい     和夏子
15句 雑   赤錆の非常階段二段落ち         カツノ
16句 春    ただ長閑なる寄席の看板         みを
17句 春・花 「大阪屋花鳥の巻」を語り終え       月彦
挙句 春    春ぢや春ぢゃと盃が来る          燦

半歌仙・折り込み文字
発句         ★    旅立ちや無人駅にも月あかり 護符としてあなたの  明日   をあたためる            消えて  間もなき火事場覗きて  陸橋を        ゆく   三匹の犬 秋耕の畝ふとぶとと古 詩    に似て 淡彩         のやうに 涼夜の笹穂垣            抱き 両性ノ        合    意雑魚寝の位置関係                つかけで久方ぶりの友に会ふ そつと覗けば     た    まごを(抱き) 赤錆の        非常階段 二段落ち            から   いカレーを食べに行きたい            夏    のにほひの雨に濡れつつ 文庫             挟む紅葉ひとひら ただ長閑       なる   寄席の看板  恋句         ★    二時間前とちがふ髪型 「花」            「大阪屋花鳥の巻」を語り終え 挙句         ★    春ぢや春ぢゃと盃が来る ★折り込み短歌--------------------------
明日消えてゆく詩のように抱き合った非常階段から夏になる/千葉聡



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