半歌仙『初霜や』の巻  @ラエティティア word                 首 99/12/06(月)                   尾 99/12/24(金)  
採句一覧
【表】
1 発句 冬                99/12/07

初霜や光の産毛地に充ちる            李桃
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2 脇  冬                99/12/08

空をささえている冬木立            杏紗里
腕にかかえる焼きたてのパン           火星
散るをためらう山茶花の紅            雪花
風切り羽の冴ゆる高空              桐子
鯨潮吹きやまぬ南海              黒旋風
乾布摩擦の祖父(おほちち)の庭         黄菜
あした目覚めるふくろうの胸           詠人
朝の市場の白菜の山               蜆汁
空の写真を撮る冬休み             救太郎
サーカス団が過ぎ行く冬田           瀬羅月
着膨れて行く角の煙草屋             渦巻
冬毛の馬の荒き鼻息                馨
ゆっくり溶ける胎盤の雪             満月
寒き銀河の彼方ふるさと             媚庵
思ひて見ればもやつと雪虫            白雨
不器用に跳ねる幼い兎              小夏
しまつてあつたにおいの寒さ           銀果
どこかで口笛きこえて小春             睦
桃色の肉食らいつつ雪             月の樹
円陣を組むラグビー部員             松楠
秘密を抱へ込む冬麦酒             迷鳥子
家を建てむと底冷えの沓             犬猫
生じて逆さのまま寒卵             カツノ
天向いて食へ軒の大氷柱             緑峰
寒空うつすみどりごの眸(まみ)         涼二
青空の中沈む水餅               湖深華
雪眼鏡して祖母の直立              牛男
瑠璃玻璃琥珀ふくむ空風            弓張月
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空をささえている冬木立             杏紗里
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3 三句 雑                99/12/09
 
子等遊ぶ霜腫も皸もなし             白雨
絵のなかに落ちていく人さかしまに        銀果
手品師に弟子入りの夢あきらめて         笑茸
合唱の声校舎より流れきて           黒旋風
映写機の光の縞の港にて             火星
金平糖かみくだくのも嬉しうて          涼二
段ボール箱の中身は内緒にて           黄菜
還暦の記念や釣りを手始めに           吉祥
片隅の本一冊を手にとりて           杏紗里
書きかけの手紙は本に挟まれて          桐子
大船(おほふね)が吾がゐねぶりをよぎるらむ  迷鳥子
テーブルに林檎の兎飛び跳ねて          渦巻
堀川のゆふぐれにたつ杭もなし         カツノ
抽斗をひねもす波のこぼれ出て          犬猫
森陰に日輪脱力しおるらん            満月
紅茶飲みくすくす笑う真夜中に           睦
想像の猫に背中をひつかかれ           詠人
くやしさにしょっぱい涙舐めていて        緑峰
傷口の爛れていたる石ありて          湖深華
玄関の靴は南を向いてゐて            李桃
一斉に駆け出す園児呼びとめて         和夏子
ざくざくと傷つけてゆく画布もなし        みを
風船は赤青ピンク揺れていて           小夏
床の間の草書の軸を掛け替えて          蜆汁
公園のシーソーふいに揺れるらん        瀬良月
映像は叩いて直すテレビにて           牛男
麻雀の牌のひびきもそれぞれに         弓張月
靴紐がほどけたままで行かんとし         雅也
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抽斗をひねもす波のこぼれ出て          犬猫
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4 四句 雑                99/12/10

古き写真のセピア濃くなる            媚庵
微分演習解が見えない              龍女
テレビも夜までつけつぱなしに          白雨
あたふたと蝶ネクタイさがす           銀果
暗闇のなか手探りをする             雅也
ぽんぽん船の船出間近に             火星
鍋の鮟鱇つつくにも飽き            月の樹
水彩絵の具の青ばかり減る            桐子
はるかに故郷ありやなしやと           満月
太陽風のうねりに呑まれ            湖深華
夢の中へと押し寄せてくる           安優美
貝ボタン付け替へで暮れしを          迷鳥子
切手ぺろんと友の数だけ            弓張月
無地の縦書き便箋を買う            杏紗里
砂の感触ふいに思うも               睦
LV杯を米艇と競る              黒旋風
錆びた王冠ざらざらとあり            緑峰
絆創膏をぴりりとはがす             黄菜
ねむりに任せよぎるイメージ           白鴉
小袖についた染そっと抜く             鈴
今日も日記を書き足してゐる           渦巻
見慣れた鍵が隅っこで眠る            小夏
暗渠に赤い鉛筆が浮く              犬猫
王子がくれた真珠を探す             詠人
日記の鍵は捨ててしまおう            吉祥
塩ひとつまみ舌に載せなむ            蜆汁
木綿豆腐はほのかに苦い            瀬羅月
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切手ぺろんと友の数だけ            弓張月
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5 五句 春・月              99/12/11

大切に抱えて渡す朧月              満月
月下大群落マカロニホウレンソウ         銀果
月満ちて卒業前夜更けてゆく           渦巻
ゆったりと朧月夜の露天風呂           雅也
女湯の乳房いろいろ春月夜            火星
春昼にひっそりと笑うお月さんの頬        小夏
春の星全き月とならびおり            緑峰
ドロップのような月浮く春休み         安優美
肩越しにうなづいてゐる春の月         弓張月
月明り芽吹くものらを照らしおり        杏紗里
おぼろ月友禅模様ほの見ゆる           白雨
妖怪のそろう頃合いおぼろ月          黒旋風
かさかさと菜の花月夜散りぬるを         黄菜
寝つかれず飲める牛乳おぼろ月          桐子
朧夜の月とも知らずけつまずく         月の樹
春の月映る水辺の水を汲む            媚庵
ポストまでストーカーする朧月          龍女
ほの甘くフロントガラスに春の月         雪花
三日月に春手袋をかけておく            睦
ビスコオトおぼろの月のごと銜へ        迷鳥子
逆上がり繰り返し見る春の月           詠人
わが犬が散歩ねだれば春の月           みを
四月馬鹿だけど聴くべき月の声          犬猫
月読みのトランプ占い春の宵           吉祥
沈鬱な顔しておりぬ春の月           湖深華
シャボン玉ひとつひとつに昼の月        瀬羅月
大凧のありしあたりに昇る月           蜆汁
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朧夜の月とも知らずけつまずく         月の樹
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6 六句(折端)  春           99/12/12

裏の林にさえずりあふれる            火星
八十八回八十八夜                白雨
少女がふたり揺するブランコ           媚庵
蝶の羽化するまでを半時            黒旋風
朝こっそり芽吹くたらの芽            渦巻
つちかぜの黄にまみるる街路          湖深華
春に吹かれてくしゃみ三回             鈴
おっとやられた今日万愚節            銀果
息吹き漲る四方に蘖               雅也
蛹ひっそり脹らむ川辺             安優美
斑雪は残る遠き連山               蜆汁
春いかづちを今振り切つて           迷鳥子
花と散りゆくてんてんてまり           満月
鞦韆のかげにかくれて散華           カツノ
菜の花ばかり明るきはなし            涼二
ついでのやうに義士祭へと            黄菜
水に浮くよなフラココの脚            龍女
猫の子眠る電話ボックス            杏紗里
細い音たて揺れるブランコ             睦
きらきら光る雲雀の涙              小夏
するりと逃げる木の芽田楽            雪花
色転じつつひらく沈丁              桐子
花見の茣蓙の正面の闇              詠人
鋼鉄材を穿つ草萌                犬猫
すったもんだのすえの草餅           瀬羅月
あれが巣箱になつた床板            弓張月
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すったもんだのすえの草餅           瀬羅月
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【裏】

7 折立                 1999/12/13

世も末と嫁女嘆けば山笑ふ           迷鳥子
ぼろぼろの春の駱駝を遠景に           満月
弗よりも円で値付ける春景色          弓張月
お隣の猫まるくなる縁側に            渦巻
おさかなはブリキ春一番に揺れ         月の樹
唐紙の模様行く鴨残る鴨             媚庵
「やっこらせー」ボートレースの愛唱歌      白雨
蝌蚪に尾のなきもの混じる二三匹         黄菜
とほくより黒猫見ゆる春の野辺          桐子
堀川のどんづまりにて蠅も生れ         カツノ
夕柳せなを丸める川縁に              睦
裏口は疎水のわきに雛の家            火星
雉の仔のひとつ遅れて薮に入る          雪花
土手にあるちいさな塚に春めぐり         銀果
口笛に土筆のあたま撫でられて         杏紗里
町中の鉄管満たす春の水             涼二
行く人もたんぽぽ色の服を着て          蜆汁
春愁の回転扉重すぎて              詠人
土耳古青へと染まりゆくしやぼん玉       湖深華
停電のさなか都心は柳絮とび          黒旋風
素足にて苗木市まで行つてみる          犬猫
市街地に暖かな風吹き出して           小夏
モニタの灯なお白々と夕長し            鈴
雛菊が鞄をあふれだす10時          瀬羅月
風そよぎ一息入れる茶摘女ら           雅也
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唐紙の模様行く鴨残る鴨             媚庵
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8 二句     雑 恋           1999/12/14

君の華燭の二次会始まる              鈴
けふも暦に×をならべて            弓張月
仲居さん去りぽつんと二人            白雨
名残の朝の卵かたゆで             迷鳥子
駅のベンチにふたりならんで           渦巻
僕は涅槃で君を待ってる             雅也
夢二嫌いで通すつもりが             涼二
ふたりトルコの煙草をくわえ           銀果
見えない会話を考える癖             火星
裏と表で四十八とか               満月
寝乱れてゐるそれぞれの髪           湖深華
常より長く眉を引きつつ             黄菜
仲人口にまただまされて             媚庵
湿原に羽根しろく散らして            松楠
ついに鞭ふる御者となり            月の樹
「比翼の仲」って何だろうねえ         杏紗里
妬いてゐる顔見られてしまひ           みを
潮解しゆく宵の離れに             黒旋風
今夜最後のこゑをかけあふ            桐子
波のひとつが乱れてとどく            雪花
傘の内なる汝の移り香              蜆汁
いつそあなたとパーティー抜けて         犬猫
似たような夢みたことがあり            睦
あなたの宇宙を剥がしてみたい          小夏
白き二の腕もちたる継母(はは)はも       カツノ
追いかけられて追い詰めてゆく          詠人
貝殻のような額が触れる            安優美
指で辿るは背骨のかたち            瀬羅月
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夢二嫌いで通すつもりが             涼二
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9 三句   夏・恋             99/12/15

梅雨明けの天気予報も恨めしく         杏紗里
菖蒲葺くおんなの垣根越えてみよ         銀果
宇治川に涼む薫君の居り             雅也
髪洗ふ指の先まで静まりて            笑茸
蜜豆をひと匙口に入れられて          弓張月
ごきかぶり去ぬる女のふところに         牛男
虞美人草描き散らしても嫉ましく        迷鳥子
君の尻大きくみゆる田水沸く           白雨
仕返しに蚊の血を吸ふと押し倒し         犬猫
白シャツの擦れる音のみ聞こえゐて       湖深華
猫の鈴間遠にききて明けやすし          桐子
「ところてんはじめました」と口説かれて     媚庵
七色の氷菓赤から分かち合い          黒旋風
端居する君はサザンを口ずさむ          火星
短夜に愛染明王あらはれて            渦巻
おぼろ夜の夢を曳き曳き螢くる          雪花
鳧も飛ぶ三十路にたちたる煙ゆゑ        カツノ
草笛を吹く人の目の奥に海             睦
雹降って帰るきっかけ掴めずに         和夏子
日焼けより心変わりを読み取られ         詠人
もてあそぶ峡の男のあわく焼け          満月
朝焼けが小さく拗ねた顔を照らす         小夏
螢籠抱へし女助手席に              黄菜
隠れましょ日日草の花陰に           瀬羅月
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雹降って帰るきっかけ掴めずに         和夏子
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10 四句 夏・恋             1999/12/16

ダンボールに囲まれ洗い髪            銀果
袖濡らしあい金魚を掬う             雅也
蜘蛛の住処に滴を垂らす             笑茸
金魚の口をつつき続ける             松楠
夏空へ手と手をとりてダイビング         白雨
螢ともして過ごすゆふやみ           弓張月
ふたりのコロン交じる一隅           湖深華
虹を抱けば君でありしか             満月
香水の香の耳たぶを噛む             火星
花火爆竹ありあまる愛              黄菜
夏手袋と手のようにいる             みを
菖蒲湯にふたり肩までつかる           涼二
うつされてゐる軽き夏風邪            桐子
手枕をしたままの蚊遣火            迷鳥子
あたしを夜釣りに連れて行ってよ         媚庵
梅酒含んだ唇触れる               小夏
浴衣の袖をそっとひっぱる             睦
携帯電話(ケータイ)ぶるると羅揺らす      雪花
夕凪きみの声に振り向く            杏紗里
麦わら帽のしたの微笑み             犬猫
あさづけ茄子にお代わりをして         黒旋風
冷やし紅茶を注ぎ足すグラス           詠人
夕顔揺れる君の肩越し             和夏子
蚊帳の中には四本の足              渦巻
みぞおちあたりに匂う泡盛            牛男
杏食べよう半分づつね             瀬羅月
汗も愛しと思ふ海風               蜆汁
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汗も愛しと思ふ海風               蜆汁
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11 五句 秋               1999/12/17

運動会弁当以外無愉快              銀果
舞ふ脚がばつたみたいと褒められて        笑茸
稲妻が経文のごと走りたり            白雨
秋晴れの大道芸人しゃぼん吹き          火星
鮭の群れ川をのぼって大変だ            奔
ぽこぽこと駈け出しさうな瓜の馬         渦巻
葉生姜の葉のみづみづと束ねらる         桐子
爽やかに呼び鈴の鳴る宅配便          弓張月
特急に新酒こぼしてゐる次第          迷鳥子
花野まで紙飛行機が飛んで行く          媚庵
水霜が極北都市を磨き上げ           湖深華
達者でと言ひて旅立つ秋日射           雪花
美徳とふ美徳ほろびて菊人形           涼二
ひつじさばいわしと空を数えれば         満月
花野道祖母の命日思い出す             睦
鬼灯をこわさぬようにもんでいる         詠人
柚子けずるペニーレインを聴きながら      瀬羅月
唐黍のひげ薄雲を掃き集め             鈴
零余子飯ささいなものを噛んでいる        牛男
虫籠をぐるぐる回すガキ大将          杏紗里
法師蝉はかなき生命終果てる           雅也
漁終えし小舟にぼらの飛び込んで        黒旋風
引退の相撲に拍手鳴りやまず           蜆汁
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葉生姜の葉のみづみづと束ねらる         桐子
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12 六句 秋               1999/12/18

音符のやうにこほろぎ殖えて          迷鳥子
蝗の顔がこわいんだってさ            銀果
秋刀魚いっぴきリストラに遭い         月の樹
頭上に爺が植木刈りゐて             白雨
障子を洗ひ歳時記を買ふ             媚庵
蔵の杜氏がケータイ開く             火星
高く大きく栗の実投げて            杏紗里
ペーパーバックに秋の虹立ち           満月
鎮守の森に通草いろづき            黒旋風
秋鯖しめる酢はひかえめに            雪花
稲妻やけに長く光りぬ              詠人
やけのやんぱちどぶろくこぼす          涼二
砧を打てる音のみ聞こえ            湖深華
草の実払ひつつ立ち上がり            桐子
鶏頭の朱クレヨンでぬり              睦
鰯雲までくちぶえ吹いて            瀬羅月
稲穂の波はいったりきたり            雅也
回転寿司のお茶が身にしむ           弓張月
馬肥ゆるなど文にしたため            蜆汁
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蝗の顔がこわいんだってさ            銀果
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13 七句 秋・月             1999/12/19

満月に優柔不断を咎められ           杏紗里
満月が大きく見えるこの時刻           白雨
夕さりてひときわ月の香ばしく          吉祥
適量をまもつて浴びる月あかり         弓張月
高速を飛ばせばラメの月あかり          みを
月ありて妖精写真という嘘も           銀果
後戻りして確かめる月の裏           月の樹
満月を指鉄砲でねらひをり            火星
ついて来る月と仲良くなる童話          桐子
月の樹を盗んだなどとうそつきが         満月
月光が射すグレゴール・ザムザにも        媚庵
月食の終わり産卵またはじめ          黒旋風
湖の月にひと声吠えてみる            雪花
笑ひあひ放り投げては昼の月           黄菜
月面に黒ぐろ書かむ我が名前           蜆汁
月光の荒い粒子につつまれて            睦
すっぽんを初めて食うた宵の月          涼二
古の月都の古墳に女人画が           湖深華
ジョーカーの瞳のやうな弓張月          渦巻
にいさんもねえさんもいて月の下        瀬羅月
覇王樹の刺が滲みます望月夜           雅也
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高速を飛ばせばラメの月あかり          みを
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14 八句 雑               1999/12/20

トラックばかり首都の道路は           白雨
仕舞うは上手しダンスはスンダ          銀果
四時のサイレン響く町には             睦
インド音楽カー・ラジオから           媚庵
最上階の水槽照らす              安優美
店員にちょっと足元みられ            涼二
BGMはSMAPがいい             黄菜
ユーミンの四曲目は怖い            杏紗里
映画のあとの街がまぶしい            火星
元税理士と発泡酒飲む              李桃
チャールストンをみやうみまねで        迷鳥子
偉大な獣となりたきものを             珪
今井美樹など聞きつつおれば          湖深華
不穏な香りのショーはじまりぬ          緑陰
ライブは大仏殿を背にして           黒旋風
今夜はカシスソーダで決まり           雪花
液晶画面を部屋の灯として            桐子
上海帰りのリル口ずさみ            瀬羅月
姿変えゆくふるさとの山             蜆汁
指の形はパパに似たのね            和夏子
サイクリングで知らない街を           雅也
ひとりのんびりあかときの風呂         弓張月
行き先なんてさあたたかな雲           満月
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BGMはSMAPがいい             黄菜
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15 九句 冬               1999/12/21

木村課長二千年問題担当ヲ命ズ          銀果
目があってマクドナルドがにっこりと       満月
ちり鍋の豆腐ばかりを選びゐて         弓張月
熱燗にほうほうほうと声をあげ         月の樹
金婚の日も湯どうふを喰ひたまへ        迷鳥子
立ち呑みの熱燗一杯ひっかけて          火星
今晩は鮟鱇鍋にしましょうよ           涼二
風呂吹の湯気に眼鏡をくもらせて         緑峰
蟹すきに雪で冷やした中汲みを          雪花
紹興酒超熱燗で飲んでをり            白雨
卵酒きいてくれろと子に飲ます         杏紗里
雑炊の鍋をかく音ひとしきり          安優美
美少女も居る闇鍋に誘われて           媚庵
鰭酒に酔ひつぶれしは5人目で          黄菜
隣人と粕汁の鍋かきまはす            李桃
冷めかけた葛湯とろとろ喉すぎる        瀬羅月
雪の夜に「美少年」てふ酒を酌む         渦巻
白い身だ鱈は吉本の楽観論           黒旋風
仕上げには柚子をはんなり散らしおく        睦
蠣水菜真鱈の浸かる湯を掬う            珪
ふるさとの雑煮の味を語りあふ          桐子
さきゅさきゅとせろり噛むおと日脚伸ぶ      吉祥
茎漬で飯を食ひたる午後二時に         湖深華
囲炉裏端ちゃんこつついて夜が更ける       雅也
犯人の捕まる頃に蜜柑尽き            蜆汁
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風呂吹の湯気に眼鏡をくもらせて         緑峰
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16 10句 雑               1999/12/22

組み立てが好き精密機械             白雨
玄関にゴムひも売りがきた            銀果
連続ドラマ次々終わる             杏紗里
つま先あがりに屋敷町ゆく            火星
いま何時かを確かめている            涼二
会釈してからふと思い出し           月の樹
辞典の文字の大きさを問ふ           弓張月
男気といふ言葉も死語か             黄菜
うすいみどりの頁をひらく           迷鳥子
拭ったちり紙で耳掃除する           黒旋風
新聞紙(しんぶんがみ)を紐で束ねる       媚庵
石ころ蹴飛ばしながら帰宅す           緑峰
吊革の輪をくぐりし手首             犬猫
なんてことない反古ばかりなる          満月
来ない列車をまだ待つてゐる           雪花
窓ぎはに置く藍色の壜              桐子
あっと驚く王手飛車取り             雅也
隣の会話ぬすみ聞きする              睦
ささくれだった割り箸を噛む           詠人
縁側でするお手玉あそび             吉祥
文藝春秋ひたすらに読む            湖深華
小石がひとつ革靴のなか            瀬羅月
今日の仕事は日付捺印              渦巻
ポチの家出もこれで半年             蜆汁
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つま先あがりに屋敷町ゆく            火星
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17 11句 春・花             1999/12/23

こはいずこ凹にも凸にも花咲きて         満月
ちる花にうずもれたへのへのもへじ        銀果
ソナタ弾き切つて蒼穹に花満ちる        迷鳥子
子規庵の夜ふかく花の句を競ふ       山の手夫人
盲導犬花散るなかを牽いてくる         安優美
花どきの谷は魔境の気配なり           火星
動きだす路面電車を送る花            渦巻
花びらを集めて夢を売る少女          杏紗里
お花見にエアーフォースワン飛来する       白雨
どの枝もうつつはみだす花ざかり        弓張月
花びらに字幕が読めぬ映画館           犬猫
花びらにあやうく口をふさがれて        月の樹 
赤んぼを囲める宴に花は降る           黄菜
求婚は満開の花の下でして            緑峰
気狂ひのやうに三面、花、花、花        湖深華
そしてだれもいなくなったとはなふぶき      媚庵
さはさはと額に揺るる花の影           桐子
玄関へ花を連れ込む靴の泥            涼二
花の宴未来を語る者ばかり            李桃
鳥だったむかしはたしか花が降る        瀬羅月
里と山呼び合うやうな花ざかり          雪花
ピアニストの指に指舞う花吹雪         黒旋風
見晴らしのいい公園に揺れる花           睦
辻が花着流してゆけ夜の化身           吉祥
夜が更けて白衣の天使花の下           雅也
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里と山呼び合うやうな花ざかり          雪花
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17 挙句 春               1999/12/24

にほえる妹はここにありしよ           満月
けふうららかに歌ことば笑む           火星
振り向けば笑みくきやかにあれ          吉祥
歌ってよ「バァローン」のあの歌        ターコ
雲雀の声をにんまりと聞く           杏紗里
ここも陽炎そこも陽炎              白雨
やわらかき陽を浴びて蝶舞う           雅也
突っ立って涅槃西風に吹かれる          緑峰
馬を放ちていざ旅に出む             渦巻
娘遍路が結願の寺               迷鳥子
囀りやまぬ美き国原              黒旋風
麦踏みながら歌ふ一族              黄菜
遠くきこゆる春のせせらぎ            涼二
蛙の目借り時を踊らう              犬猫
それではではと春宵笑まふ            雪花
まどろみてをり仔馬も鳥も            桐子
広き流れに躍る若鮎               蜆汁
まぼろし消えてとこしへに春          弓張月
春一番に乗つていかうか             詠人
うたたねの間に風は春めく             睦
しゃらんしゃらんと鈴を鳴らして        瀬羅月
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ここも陽炎そこも陽炎              白雨
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(仮名遣いは投句者の任意。不統一)
「初霜や」の巻 採句一覧

【表】
1 発句 冬   初霜や光の産毛地に充ちる     李桃
2 脇  冬    空をささえている冬木立    杏紗里
3 三句 雑   抽斗をひねもす波のこぼれ出て   犬猫
4 四句 雑    切手ぺろんと友の数だけ    弓張月
5 五句 春・月 朧夜の月とも知らずけつまずく  月の樹
6 折端 春    すったもんだのすえの草餅   瀬羅月
【裏】
7 折立 春   唐紙の模様行く鴨残る鴨      媚庵
8 二句 雑・恋  夢二嫌いで通すつもりが     涼二
9 三句 夏・恋 雹降って帰るきっかけ掴めずに  和夏子
10 四句 夏・恋  汗も愛しと思ふ海風       蜆汁
11 五句 秋   葉生姜の葉のみづみづと束ねらる  桐子
12 六句 秋    蝗の顔がこわいんだってさ    銀果
13 七句 秋・月 高速を飛ばせばラメの月あかり   みを
14 八句 雑    BGMはSMAPがいい     黄菜
15 九句 冬   風呂吹の湯気に眼鏡をくもらせて  緑峰
16 10句 雑    つま先あがりに屋敷町ゆく    火星
17 11句 春・花 里と山呼び合うやうな花ざかり   雪花
18 挙句 春    ここも陽炎そこも陽炎      白雨
投句一覧へ
李桃              東直子 杏紗里            藤井靖子 火星            三宅やよい 雪花             紺野万里 桐子            横山未来子 黒旋風            浜田昭則 黄菜              田中槐  奔             田中槐(息) 詠人             佐藤りえ 蜆汁             小林信也 救太郎             千葉聡 瀬羅月         なかはられいこ 渦巻          ひぐらしひなつ 馨・雅也            村田馨 満月             入江一月 媚庵            藤原龍一郎 白雨             椎木英輔 小夏            横井紀世江 詠人             佐藤りえ 銀果・ターコ         五賀祐子 睦              富田睦子 月の樹             石部明 松楠             中沢直人 迷鳥子             紀野恵 犬猫              高木孝 カツノ           勝野かおり 緑峰             荒井直子 涼二            渡部光一郎 湖深華・緑陰         生沼義朗 牛男             浪江秀雄 弓張月            荻原裕幸 笑茸             石川美南 吉祥             甲斐昭子 和夏子           栗原寿美子 みを              多田零 龍女            武下奈々子 安優美            小守有里 白鴉             白糸雅樹 鈴             荒川美代子 珪               中澤系 山の手夫人           児玉暁 捌・西王燦
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