半歌仙「枇杷若葉」の巻 98/4/18(石川県加賀市曽宇)
    枇杷若葉ひらきそめたる加賀の春         雅彦      風うららかにめぐり来たりて           薫     ほろほろと薇は干され人もなし           燦      わがてのひらに星は降れるを          雅彦    あかときの夢に木となる夏の月           薫      ペルシャの青の音楽流れ             燦     色うすき時雨のあとを歩みつつ          雅彦      耳打ちされる凍死の噂              薫     湖の底ひに朝の雷鳴りて             雅彦      猫のいびきに暮れる春の日            薫     ゆくりなく桜は夢に吹雪きけり          雅彦     言葉を惜しみ仰ぐ春月              燦     逢ひ引きに深煎りを知る午後の庭          薫     影をあはせて道を下りき            雅彦    背表紙のサインに指を添はせつつ          薫      紅葉のまへにひとり寂しく           雅彦    花野には女ばかりの酒の客             薫      酔ひて帰ればかりがね高し           雅彦



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