いたどり村から届いた手紙
love letter from birdland 11
睡蓮とめだか
いたどり村の廃屋は、まだ、あのままに残っています。石畳の街道と砦門を壊さなければ大型の重機が入れぬ、
バブル景気の頃に、国のいたずらな補助金を使って造った、ほとんどイリュージョンのような宿場村なので、解体す
るのも難儀なことです。
この廃屋が、まだ廃屋でなかったおととしの春、石を削って造った水鉢を運び出し、睡蓮を植え、黒めだかを飼いました。
めだかを飼ったのはぼうふら対策です。
睡蓮はみごとに咲き、黒めだかは、その年の大雪と厚氷に堪え、去年も睡蓮鉢のなかを泳いでいました。さすがに二年続き
の大雪で、ことしの春には息絶えたかと思っていました。
廃屋から、大きな素焼きの甕を運びました。首のところに竹の箍が付いている、味噌甕だろうか、不思議な甕です。
これに睡蓮を植え、ホームセンターから買って来た緋メダカを10匹ほど入れました。素焼きの甕だから温度が変りすぎるのか
緋めだかはばたばたと死に、かろうじて一匹だけ残った。そのころ、石鉢のなかに、すこし以前の言葉でいえば「ど根性」
黒めだかが一匹見つかりました。オスメス解らぬまま、石鉢の黒めだかを緋めだかの甕に移したところ、2週間ほどで、黒・緋
それぞれのめだかの稚魚が泳ぎだしました。
さらに、甕のなかの藻を石鉢に移したところ、恐るべき数のめだかの稚魚が、今、泳いでいます。
アダムとイブというか、、、(笑)、ノアの箱舟というか、、、、(笑)。