都々逸作品集     1999412 於・掲示板  
           そいつはどいつぢやどいつぢや どどいつどいどい 浮き世はさくさく


    ここに掲載する都々逸は、本文に登場する「与作」=西王燦の設営した掲示板に、「柳川」=小池純代さんを招いて創作された「都々逸」の作品集です。
   小池純代さんの才能の頼るところもありますが、インターネット上で制作された都々逸としては、きわめて出色の出来だと思います。

     


 

    contents

  折込み(沓冠・回文・ダブルアクロスティックもあり)
   ど・ど・い・つ    ☆か・こ・あ・ゆ    ☆からだ/恋/あそび/ゆめ    ☆は・ふ・ゆ・ち

   ☆う・き・よ・は・さ・く・さ・く    ☆た・か・は・し    ☆ iMac

   ☆野暮名折込み (四句26音と五字冠り31音とどちらもあり。以下同じ)  自由折込み

   ☆お・め・で・た・い/め・で・た・い   ☆ お・め・で・た・い    ☆み・な・つ・き    ☆あ・じ・さ・い

   ☆ だ・い・お・う     あ・さ・く・さ    ☆ね・こ・ま・た   ☆ま・な・ぶ・た 

   ☆き・ぬ・ぎ・ぬ    ☆「き・ぬ・ぎ・ぬ」+時の匂い    ☆と・し・こ・し

  題詠   ☆「ほたる」   地名   ☆「夫婦舟」    ☆文字工夫      ☆数字入り      源氏どど

  自由題   自由題(五字冠り)    自由題 一   自由題 二   ☆自由題 三   ☆自由題

  卒業制作

 


 

  ☆折込みど・ど・い・つ」

   どこがどんなに どれほどいいか いってくれなきゃ つねるわよ         柳川

   ドイツ生まれで ドナウで産湯  いっそ散りましょ ツングース         媚庵

   どこに住むのか ドラマのなかで いつも刺される  津田四郎          そら

   ▽どこか遠くへ  どこかの国へ  いつかあなたを  つれてゆく        野暮な叔父上

   △どうせ嘘でしょ どうにもならぬ いっそ死のうと  つたえてよ        野暮な叔父上

   土偶マニアの  ドナルドダック 居るか居ないか  唾とばし          媚庵

   どこへいくのよ どうしてなのと いつも尋ねず   つつがない         小雪

   どんなところで どうなったって 行くわあなたと  ツングース         柳川

   どんなところで どうなったって 行くわあなたと  津田四郎          柳川

   どんなところで どうなったって 行くわあなたと  月の国           柳川

   どこの誰だと  慟哭されて   伊東四朗を    連れてくる         そら

   どこのどいつと 恫喝されて   言ってしまった  連れの名を         叔父

   どれにしようか どちらもいいわ いずれおとらぬ  つぶぞろい         柳川

  

  ☆折込みか・こ・あ・ゆ」

   風を抱くのは 梢にまかせ    あなたわたしの  百合と寝よ         masaoka

   髪もみだれて この夜のかぎり  あなたわたしを  揺らしてね         叔父

   神も仏も   この世にゃをらぬ あっと思えば   夢だった          叔父

   カッパからげた 小粋なすがた  逢いに来たぞと  夢まくら          媚庵

   からだだけなの 恋とも言えず  あれはやっぱり  ゆきずりの         そらどす。

   かゆいところが こそばくなるの 逢へばかならず  ゆびを借り         小雪

   かじか鳴くよな 隠国(こもりく)なのよ あすは泊瀬へ ゆきませう       叔父

   カツラはづして コートで隠し  あはれ露天の   湯へ走る          叔父

   かなしかったわ こんなになって あそびだったら  ゆるさない         母栗鼠

   買って来たのよ 小紋の小袖   逢いに来ぬとは  ゆうまいね         母栗鼠

   からだだけでも 恋でも死でも  あそびでもいい  ゆめだから         小雪

   河馬の親子が  この世の果てで アポカリプスを  夢に見る          媚庵

   風に吹かれて  こちらやあちら あたしゃ気ままな ユリカモメ         媚庵

   硬くならない  困ってしまう  逢ったけれども  許せない?         龍

 

  ☆折込みからだ/恋/あそび/ゆめ」

   からだひとつで 恋するふたり  あそびつくして  ゆめうつつ         柳川

   身体に止まる  恋する蝿が   遊んで止まる   夢の島           そら。

   からだつかれて 恋などあらず  あそび知らねば  ゆめ頼み          小雪

   からだ固くて  恋人たちが   あそびつくすは  夢のゆめ          小雪

   からだ燃えない 恋人捨てに   あそびがてらの  夢の島           柳川

   からだ交はさぬ 恋ほど好きな  あそびないよと  夢のひと          小雪

   からだ細くて 恋する女(ひと)を あそび描いた 夢二忌ね           叔父

   からだ縛って  恋でもなかろ  あそびだからね  ゆめ死ぬな         柳川

   からだ許すが  恋ではないよ  遊びなんだが   夢心地           龍

   からだ老いつつ 恋さえ淡く   遊び呆けし    夢の森           師匠の名で嘆く

   からだ老いれば 恋より欲に   あそびなくなり  夢も濃い          小雪

 

  ☆折込みは・ふ・ゆ・ち」

   春の嵐か    二人の仲は   揺らし揺られて  散り急ぐ          龍人

   花の下ゆゑ   ふつつかながら 指で奏でる    ちょっとだけ        母栗鼠

   花もみえない  ふたりでゐれば ゆふべしたこと  ちらついて         小雪

   歯など触られ  不思議なことに ゆうべしたこと  ちらついて         小雪

   ▽花の模様の   フリルの襟を  指でひらいて  ちょうだいよ        姪

   △外れかかった  ふがふが入歯  床にこぼすは  チリソース         叔父

   波瀾万丈    複雑怪奇    湯殿山麓     魑魅魍魎          柳川

   春のオフィス  不埒に想う   夕べ尖った    乳首ちゃん         龍

   ▽はるかむかしの ふたりのひみつ 揺らぎだしたよ ちる花に          小雪

   △はるかはるかに 古びたはなし  ゆうべ出てきた 知恵の輪ほど        小雪

   春樹さんよか  冬彦さんは   勇気あるんと   ちゃいまっか?       そらでんがな。

   波止場カモメが 吹かれて飛んで 湯島通れば    散る桜           媚庵

 

  ☆沓冠う・き・よ・は・さ・く・さ・く」

   浮けばぶくぶく 消えてく泡さ  寄ればくっつく  はずかしさ         柳川

   うしろ髪ひく  きよらなしぐさ 夜はくるめく   恥のなさ          小雪

   梅はポと咲く  木曽路の三叉  与作まったく   春の幣(ぬさ)       叔父

   馬はいななく  汽笛のつらさ  よるべなく泣く  母子草           媚庵

   内気なら即   キスして教唆  夜叉をしょってく ハマのリサ         小雪

   浮気ではなく  清らな恋さ   酔って囁く    春の夜さ          

   内気でも即   キスしてちょうさ 夜をしょってく ハマのリサ         龍

   浮き名ささめく きになる遠さ 酔って近づく  はるの酒(ささ)        柳川

   「うっ」と振り向く  奇抜さ派手さ  夜の新宿  走るのさ          そらだぁい。

   裏地あかるく  着ている更紗  与作笛吹く    ハレの朝          与作

   後ろ髪ひく   きのふの喫茶  酔ってただ聞く  忘れ草           与作

   恨みなどなく  君との噂    夜は春服!    ハマのリサ!        与作

   「海にほっとく!」 気障な言い草! 寄れば春菊  母子草           与作

     沓冠2way type

   憂きと見し世さ 気分は馬賊   酔へば浅草    春も逝く          媚庵

 

  ☆折込みた・か・は・し」

   タランティーノの 唐獅子牡丹  早く見たいと    忍び泣き         媚庵

   短歌上手と   かついでおいて はしごはずしちゃ 知りませぬ         媚庵

   ダンプ松本    かついで走る 花のお江戸の    シクラメン        媚庵

   たんと愛して 頭(かしら)が何よ 花火ようやく   静まって         門右衛門

   タタタッ駆けてた 顔面真っ赤 ハハハ姑(はは)ワオー 絞め殺し        門右衛門

 

  ☆ダブルアクロスティック「た・か・は・し」

   たきをくぐった  かばさんたちが  はなをかむのは   しんぶんし      柳川

   たがのはづれた  家族と父が    はめをはづせば   しばきたし      小雪

   たががゆるんだ  がいこつくんが  貼った湿布は    しどけなし      そらでありんす。

   高田さん方    川西春香     ばれてしまえば   しかたなし      そらでありんす。

   旅に出合った   可愛いひとが   肌を染めるは    思案橋        龍

   だれを誘った   篝のさなか    肌をさらせば    しろい梨       小雪

   絶えず仕舞った  からだの色香   派手にはなてば   しんなりし      小雪

   鯛でなかった   カワハギなのか  ハリに掛かれば   しかたなし      龍

 

  ☆折込み回文「た・か・は・し」

   滝のその北    隠され咲くか   花の木の名は     知らぬらし     菜の

   龍の名乗った   彼の人火の香   晴れて捨てれば    獅子は獅子     燦

   立つわ!変わった 体は鱈か     はびこる恋は     仕様よし      燦

   短句を汲んだ   神代の黄泉か   端唄うたうは     信夫の死      柳川

   だれが抱かれた  枯れたはだれか  走れ彼氏は      如かれかし     柳川

   民ら空見た    神病む闇か    針の祈りは      知る苦し      菜の

   たかくだくかた  かるいねいるか  はわいかいわは    しみじみし     菜の

   滝に蟹来た    鴎はメモか    波乱半裸は       新短詩      媚庵

   大佐に咲いた   香の穂はほのか  春を羽織るは      詩句の櫛     媚庵

   確か逃した    蒲田の珠か    玻璃の名乗りは     四季の騎士    媚庵

   たい、と口説いた 風見る店か    バイで不貞は      死のほの字    小雪

     琉球心中

   たれが焦がれた 神代は黄泉か    花の名の那覇     死ぬは主(ぬし)  与作

     横浜心中

   抱いて寝ていた 離(か)れてもテレカ ハマの「日野マハ」 「志賀タカシ」   与作

     博多心中

   「タカハシ」博多 空手の寺か 腫れは触(さは)れば 治郎(じらう)らし    与作

     金沢心中

   誰が、だ、抱かれた 金沢最中(さなか)  鳩は二羽とは しみじみし      与作

   誰か別れた   蚊の泣く七日   白紙もしくは    箴言詩         菜の

   たかがミカカだ  改訂定価    払う三浦は     (;_;)し          菜の

                              ※(;_;)←しくしく

 

  ☆折込み回文アナグラム「た・か・は・し」

   たしか案山子だ  化したは確か  はだし恥じたは 師が案山子         柳川

   たしか墓下    書かした詩画が 果たし課したは 死が剥がし         柳川

   たかが束子(タハシ)だ 買はした嬶(かか)が 馬鹿だしばしば したたかし   平蔵

   誰が字貸方   貸したか確か  端(はした)正しは  しかし火事       小雪

   叩いた、痛た! カリカリか、梨花? ハハハのハハハ しかと貸し        龍

 

  ☆折込みiMac」

   あれと決めたが いきなり出たな? まさか五色で  くらませる         定

  ☆折込み回文i Mac」

   足がアカシア 毬栗苦界(いがぐりくがい) ○だ火達磨(まるだひだるま) 靴を突く  与作

 

 ☆題詠ほたる」

   これはあなたが わたしを恋ひて まどふたましひ ほたる見る          小雪

   鳴かぬ蛍が   水辺で燃えて  燃える闘魂   ジギタリス          媚庵

   惚れているから ホテルが遠い  火照る手に持つ 蛍籠             小蘭

   ふたりきりにて ゆびからゆびへ うつすほたるの  こそばゆさ         小雪

   川のせせらぎ  梢(こずえ)の葉ずれ 星の降る夜を 濡れて待つ        龍

   ほたる流れる  ナイルの川に  象の浮き輪も  流れゆく           そら

   いつそきれいに わかれませうと まづははじめる ほたる断ち          小雪

   ほたる迷って  ここまでおいで あたしゃ寝て待つ 川の水           柳川

   どこがいいかと とうてもみるが いつもほたるは つつましい          与作

   ほたるほの字で たずねたたの字 るすのるの字が うらめしい          玄衣

   なかぬほたると いわれているが ためたなみだが 光るのよ           玄衣

   のんでそだった つめたい水が  なんで炎に   なるんだろ          玄衣

   ほたるたまむし いづれがいいと いへば媚薬に  つかふはう          小雪

   小雪達者か   与作は無事か  ほたるほたらむ ほたるべし          媚庵

   ほんにこんどは ただではすまぬ ルルを三錠   ねむりましょ         そら

   夜の団地に   ちかちか点る  あれは世に言う ほたる族           龍

   急に呼ぶから  そのまま来たの パソに今ごろ  螢とぶ            菜の

   やみていまなほ うたるるここち 恋はしぐれに  似てもゐる          小雪

   勝つとおもえよ おもえば勝つよ 上手出し投げ  ほうったる          柔

   三千世界の   蛍をかぞえ 主(ぬし)と徹夜が してみたい          柔

   やめて!興ざめ! ドラマだなんて 蛍のみこむ  真珠郎            小雪

   ホテル『蛍田』  月〜金は    午前割引   5000円          小蘭

   籠の蛍と   わが身を歎き  うなぎ蛇口に   誘い出す           媚庵

   水をかけても きえないものは もえる思いと   ほたるの火          柳川

   急に来たから 蛍光灯も    消してないのよ  変かしら           小蘭

   ハツカネズミの ピアスは蛍  猫のおなかに   はいるでしょ         小雪

   ほたる散るとは いはないまでも 好きと視線に  書いてある          小雪

   今日は世界の  ホタルを集め  ライスシャワーじゃ ないってば!       小蘭

   あたし今夜は  シャネルをやめて ほたるいっぴき  つけて寝る        そら

   花を過ぎたよ  水の季逢うと   言いし約束    点し待つ         龍

   たつたいちどの ほたるの記憶   「あれが小雪に  似てるな」と       小雪

   泳がないわよ  流れるだけよ  あなたとわたしの  ほたる川         龍

   ほたる灯せば  さねさし相模  にがい水にも    みおつくし        媚庵

   フレグランスは 「ファイヤーフライ」 すこし「タブー」と 混ぜてみる     小雪

   ほたる、ほたるが 見てるわ、ねえ、と よぢるからだの ちから抜け       小雪

   出るよ出るよと 言いつつ待つて きっと出るわと    恋いほたる       龍

   なかぬほたると きめつけられて 人にきこえぬ     声で泣く        玄衣

   ほたる消えても  光の線が   すきよすきよと    目に残る        りく

   逢ひにゆくまで  小鳥の籠に  こもる蛍の      やうだつた       小雪

   ホテル「河畔」は ほたるのお宿  なかぬほたるが   啼くホテル       龍

   せみは三日で  ほたるは二十日  仮の宿にて     永住す         柳川

     番外篇

   ▽赤とかく文字   粋な都々逸  詠んでください 小雪さん          初心者

   △赤いたもとに  ほたるをひとつ 入れたあなたは どなたさま         小雪

   ▽いれてみたけど ほたるをひとつ どなたととわれ 赤面す           初心者

 

  ☆自由題

   海を渡った   真紅の旗よ   燃えて沖縄    球児たち          龍

      *

   眠りふかきは  冥土の暗さ   毎度あんたの   文(ふみ)運ぶ       遠竹門右衛門

   あたし以外の  をんなのふみに 触れずゐてとも  言へませぬ         小雪

   今夜月なく   艶なる契り   猫に見らるる   それもよし         門右衛門

   夜の長きは   まことうれしよ 床のめぐりに   虫鳴きて          門右衛門

   あんた愛しゑ  後朝憎し    縁のむかふを   とぶ螢           門右衛門

   好きといはねば そつぽをむいて いへば嘘だと   すねてゐる         小雪

   髪にふれくる  あはゆきとけず 主の髪のは   にくらしい          小雪

   ▽恋の綾とり   なすにまかせぬ  うき世芝居と 思えども          門右衛門

   △おもひおもはれ  あやとりしたら 恋とよんでも いいですか         小雪

   いつか逢へれば いいねとぽつり つまり逢はうと せぬつもり          小雪

   髪があなたを  わすれぬとだけ いへばつたはる ほかの場所          小雪

     *

     都都逸について

   ▽馬鹿じゃ詠めない 利口じゃ詠めぬ  中途半端じゃ  なお詠めぬ       初心者

   △ばかもたいせつ りこうもだいじ ちゅうとはんぱな とこもいい        柳川

   ▽ちゅうとはんぱな 小生故に    せめて詠みたや 都都逸を         初心者

     *

     花柳情歌

   狭間の下着   さらりと魅せて 今度指名を    射れてよね         初心者

   柔なふともも  ぴたりと寄せて 明日は同伴    よいかしら         初心者

   彼氏居ないと  済ました顔も  胸の谷間に    キスマーク         初心者

      *

   ここはどこなの 平蔵、小雪   二日来なけりゃ 過去のひと。         そら。

           (掲示板の様変わりはげしきをみて詠める  注・柳川)

 

  ☆折込み 地名

   傘の産地と   おもってたけど どうもちがうわ シェルブール         柳川

   花のお江戸に  単身赴任    人が多いと   嘆く友            龍

   ここがアテネと おへそのよこに 点をつけたね  あれは夏           そら

   俺に逢ふまで  髪さへ切らぬ  そんな約束   新宿だ〜           母栗鼠

                *新宿はシェルブールでも可。アラスカでも月夜野でも可。 

   主に逢うまで 洗わず北野(きたの) この身清水(きよみず) 大都暮れ     柳川 

   「今日」と言ったか 「京都」と聞いた 明日まで待とう 鞍馬口         燦

   やる気あるとき アイルズベリー やる気なけりゃあ   クラクトン       虎

   誰ガ呼ンダカ  母栗鼠ト媚庵  北京ノ秋ノ      二人キリ        媚庵

   龍を倒すと   極真空手    目指すテキサス    選手権         虎

   初夏のラインで あなたを知って 秋のケルンに     積んだ恋        龍

   カサブランカは 真白き館    鈴木その子も     顔を出す        媚庵

   命ながなが   恋せよ乙女   ドイツ菖蒲か     アイリスか       燦

   どこにこころを 捨ててきたのか ここはモロッコ     白い街        燦

     *

   「きみのいる場所」

   明かり消えたら 硝子は鏡   「パリ、テキサス」に きみを見て        菜の

                             (ヴィム・ヴェンダーズ編)

   マンダレイとは 誰が住む町ぞ  過去をさぐれば 霧の中            菜の

                             (ゴシック小説風)

   先に名前を   呼ばれし人の  隠れハライソ  長崎か            菜の

                             (キリシタン版) 

     *

   山紫水明   パープルサンガ ここは京都か   おフランス          燦 

   朝の彼女は  たんなる少女  荒神橋で     傘さして           燦

   故郷すなわち 神話の世界   香肌峡とぞ    人は言う           龍

   鞠を追ひかけ 糺の森に    入りて戻らぬ   白い影            菜の

   逢えなかったわ 翻車魚、猟虎 泣いた小雨の   池袋             小雪

 

  ☆五字冠り 自由題

   はつなつの  花の嘆きを   尋ねてみれば  間に分け入る  つがつらい    与作

   言の葉の   あはれ病葉   吟遊詩人    歌い疲れて   夜半過ぎ     媚庵

   ひざまくら  ひまを逃がして つれないひとに のこるさくらが きにかかる    媚庵

   すべて嘘   ならばゆるせる あなたのことば まじるほんとが くるほしい    小雪

   ひとときも  はなさないわと つかんだ袖で  あれやこれやを 拭いている    柳川 

   千万も    泣いたところで こたえはひとつ 億のなみだが  そのこたえ    柳川

   幾つもの   橋を架けても  四国は死国   日々は異界と  隣り合ふ     菜の

   埒もない   寝ものがたりに やきもち妬いて ほんにあなたは 愛(う)いひとね 龍

   デザートに  梨もリンゴも  それぞれいいが わしはおまえの ○○がいい    燦

   このかみは  かつらかしらと ささやく声に  流れ繕う    桂川       柳川

   通り雨    帰したくない  遣らずの雨に  濡れて帰ると  うすなさけ    媚庵

   雨に濡れ   帰るわたしを  帰るなよつて  言つてうごけぬ やうにして    小雪

   本気でも   あちらこちらに あるならいつそ たつたひとつの 遊びだと     小雪

   春も逝く   花は花だが   花なることを  いつも忘れて  叱られる     龍

   水心     あればわたしに 伝えておくれ  風に揉まれる  こいのぼり    燦

   濁点を    とれば地獄も  四国になって  四十八カ所   はなざかり    柳川

   格言の    住めば都は   地獄もおなじ  しかもそのうえ 不老不死     柳川

   どどいつで  過ぎた昔が   あばかれ損で  もとの十九に  してかえせ    媚庵

   みつめても  見えぬあなたを みなせの川の  水にながして  みついでる    小雪

   かりそめの  恋に始まる   真実(まこと)の愛も 有って良いかな 花も散り  龍

   あれがまあ  乱歩ゆずりの  来歴なのさ   ランプの下の  ラブレター    与作

 

  ☆野暮名折込み

     小雪

   こひびとを  子犬みたいに  こちらに寄せて 氷みたいに   こはしたい    小雪

   ゆふべには  赦すゆびきり  ゆつくりしたの 百合をもらつて ユッケ食べ    小雪

     菜の

   なにゆゑか  何度逢うても  名前を変へる  謎のおひとに  なほ惹かれ    菜の

   伸び縮み   のるかそるかの ノリよい唄に  望み託して   のめり込む    菜の

     

   ただ一度   たぎる想いに  旅の夜抱いた  たかが浮気と  誰(た)が言うた 龍

   次々と    尽きぬ仕事を  積みゆく日日か つまりおいらは 使い捨て     龍

   次々と    尽きぬ悪知恵  積みたる所業  つまりわたしの 強い運      龍

     柳川

   やんわりと  やけどさせずに やきもちやかせ やおら手をとる やさおとこ    柳川

   波枕     ながれついたよ 南閻浮堤    なんのならわし 鍋奉行      柳川

   ががむがむ  ががむがむがむ ガムランの銅鑼 ががむがががむ がむががむ    柳川

   わかれても  わすれられても 若葉の恋を   忘れられない  わからずや    柳川

     媚庵

   鬢のほつれを ビューティーペアが ビギン・ザ・ビギン 微笑仏          媚庵

   赤いドレスの アナスタシアも  あわれ朝日の    あたる家          媚庵

   洗い髪    婀娜な姐御に  甘えてみたい  アニー・ホールの あの時代    媚庵

     そら

   それは一途な ソシアルダンス  その手取りませ   そこのひと         そら

 

  ☆自由折込み

     「れれれれれ」

   れもん置く  恋慕いつしか   連理の枝の   歴史もったら  霊柩車     小雪 

     「せくはらだ」

   接吻は    暗い夜より    晴れてる朝が  楽な気がする  堕落かな?   燦

     「ほほほほほ」

   ほほゑみは  頬に浮かんで   ほのぼの薫る  ほ○○○○○○ 朴の花     燦

     「んんんんん」

   ボヘミアン  龍おじいちゃん  子供が9人   白が3人    黒5人     龍

 

  ☆自由題

   桜散り    つつじ散りゆき  花敷く夜を   重ね重ねて   春も逝く    龍

   はつなつの  君がみむねは   煙るといへど  老いのわが目は 霞むかな    平蔵

   あちこちで 「すき」とをとこに ことばをもらす ほんに口とは  こはいもの   小雪

   初恋も    遠い昔さ     覚えちゃいない きょうは朝から 鳴く河鹿    燦

   宵闇に    けぶるバイパス  黙っているね  あなた今夜の  一夜妻     龍

   一夜でも   妻になりたい   わけではないわ 一夜をんなで  ゐたいのよ   小雪

   こんなにも  寝顔きれいな   あなたの横じゃ 気恥ずかしいの 徹夜する    小雪

   鯉幟     空の半分     おまへに譲り  俺は身を揉む  竿の先     燦

      *

   詩人歌人と   いうその伝で   ど人あるいは 都人(みやこびと)       柳川

   きょうも太目の 看護婦さんに  「検温です」と 起こされる           そら

   おかゆなのです ごはんじゃなくて こんな丈夫な 歯が哀し            そら

     祝・退院

   そらさんが  無事に退院   そらいいニュース めでたいなあと すこし飲む   龍

   歴戦の    連衆帰還し   檸檬は梶井    れいこ恋々   令夫人     媚庵

 

  ☆折込みお・め・で・た・い/め・で・た・い」

   お袋は  めったやたらと でっかい袋   たれもかれもが いたところ      柳川

   メインディッシュが デカプリオでも タイタニックじゃ いやですわ        柳川

   メイク・ドラマの  デカダン気取り タルト狂いの   イヨマンテ        媚庵

   メリルリンチの   デロリンマンが タップダンスを  勇み足          媚庵

   おいしいと 愛(め)でて食べたよ でっかいマンゴ「たんとお食べ」と 言うた人  龍

   メコン流るる    デルタの南   タイの佳人と   いい旅路         龍

   姪の婚姻      出来てる仲で  鯛のかしらを   痛がらす         与作

   めっけものだと   デートに誘い  たぶらかしたが  イカレテタ        龍

   めったやたらと   でたらめやった たった一生(ひとよ)の いのち故      龍

   メガロポリスの   デジタルピアノ たたら踏んでる  潮来笠          柳川

   めったやたらと   出会えぬひとの 立てど坐れど   いい姿          詠人

   めやに出てても   できもの出ても たぶんあんたが  いっちイイ        そら

   目立ちたくない   でしゃばらないよ ただの「おとこ」で いたいのよ      龍

   メランコリーか   デカダンなのか タフな野郎の   インモラル        龍

   メルトダウンに   デストロイヤー ターミネーター  命懸け          媚庵

   惜しやのう made by媚庵の でまかせ映画 たった一夜の イリュージョン      後白河

   めんくらったよ   できたと聞いて たった一夜よ  一度だけ          龍

   目元涼しく     デビルのような タイトなきみが いっち好き         龍

   めろめろだって   でれでれだって たった一世の いい思い           詠人

   目からいっぱい   出てくるものを ただの涙と  いひはせぬ          燦

   明治時代の     デートだったら たぶん言わなきゃ 「いけません…」     小雪

  『日本民謡選』

      釣り

   めったやたらと   でっかいやつを たんと釣ったと  言いたいぜ        龍

      米寿

   おいそれと 冥土旅行にゃ  出かけはしない 楽し、楽しと 生きるかな      龍

      西瓜

   メロンじゃないよ  できたて西瓜  種を食べたら   いけないよ        龍

 

  ☆沓冠お・め・で・た・い」

   ♪想い出を  メモに書きとめ  電話もあって  たった一日だ  意地悪い    小蘭

   老いてなお  メロス二代目   デニムの服で  立って走った  いやすごい   柳川

 

  ☆自由題

   ドンピシャリ  どんと当たった どえらい金が ドドのみんなに どんとやる    龍

   好きよ好きよと 言われるうちが 花といっても ドクダミか?           詠人
 

  ☆折込みみ・な・つ・き」

   みればそれほど なんでもなくて つまり恋とは  気のせいね           柳川

   見せてほしいと 何回言うの   妻になるまで  着たままよ           小雪

   見つけないでね 内緒の手帳   罪のないのが  キズだから           小雪

     歌論1

   みればそこには なんにもなくて つくるさきから きえてゆく           柳川 

     歌論2

   みえるそのまま なんでもかでも つつみかくさず 記録する            柳川

   みんなあげるよ 泣くんじゃないよ 尽きぬ想いの  きみだから          龍

   「みんな男は  なびくのよぉ」と つかみどころの きついひと          小雪

   見ればほんのり 涙もためて    つつきつづける キツツキぢゃ         与作

   みかん色した  鍋敷あって    妻でいたのは  去年です           小雪

   みじかすぎると なじつたくせに  つかれましたと 着てしまふ          小雪 

   よいではないか へるもんじゃなし いやよいやよも すきのうち          Y

   みずも滴る   なごりの袖の   尽きぬ恋慕に  霧霽れる           Y

   水は天から   涙をもらい    土が痩せれば  黍や粟            与作

   身から出た錆  情けが仇で    爪を立てれば  気づかれる          与作

   三日逢わねば  名前も忘れ    つらい浮世の  傷だらけ           媚庵

   見ても聞いても なすよしもがな  罪な奴だよ   霧の旗            媚庵

   見せてもらおう 名残の身体 終(つい)の逢う瀬の きみだから          龍

   ミント味なの  舐めてもいいよ  ついに買ったの キスミーリップ        そら

   蜜のじかんと  名づけたものの  つぎを待たねば 気はもめぬ          小雪

   水をやらねば  菜の葉も枯るる  強く抱いたら  気が狂ふ           与作

   みだれ咲きましょ 泣くだけバカよ 終のすみかは  きつね福           Y 

   蜜の流るる   ナザレの土地に  常に戦(いくさ)の 気が満ちる        龍

   見かけ良いけど 中身もいいね   尽きせぬ愛の  北の宿            龍

   水の季(とき)だね 夏はや来る  梅雨の晴れ間の きつい陽だ          龍

   身過ぎ世過ぎは 涙に暮れて    爪のさきまで  狂乱す            Y  

   見栄はすてましょ 泣いてもみましょ つぎはあなたの 気がほしい         小雪

   水に書いたの  涙の手紙      月に一度は   きっと来て!        小蘭

   みなに悪じゃと 名指しをされて   つらい浮世を  吉良の裔          そら

   みみを咬んでは 馴れあうふたり   月の出ぬ夜は  気をゆるす         Y

   見たか聞いたか 名うての美女を   ついに誘った  キスだけよ         龍

   水面ゆらめく  夏茱萸色の     つぼみじんじん 気がはやる         Y

   ミラノ想へば  ナポリも恋し    綴れ折りなす  キーボード         媚庵

 

  ☆折込みあ・じ・さ・い(あ・ぢ・さ・ゐ)」

   あしたあっての 人生だもの     サヨウナラしか いえないの         柳川

   朝の光に    ジンの香にがく   先が見えない  今ばかり          媚庵

   あはれふたりの 定宿『茨』     さはれさりとて ゐつづける         小雪

   雨に唄えば   人生愉し      サイン、コサイン インバネス        媚庵

   あんたなんてさ 痔持ちでカツラ   酒は大酒     居候           小雪

   あんなところに 地蔵がいるぜ    賽の河原の    いい男          燦

   あげぬつもりが 上手に取られ    財布さながら   胃穿孔          小雪

   あとを追いたや じっさまのあとを  賽の河原で    いちゃつかん       軽

   跡火かなしや  蛇の目の傘が    笹のかげにて   いさよいぬ        Y

   アバンチュールか 時間の無駄か   さしつさされつ  いきもせす        龍 

   あたり馬券で  じゃじゃ馬ならし  さ寝処香るは   磯の貝          Y

   あっというまに じさまになって   三時待ちわび   生きなさい        小雪

   開いた口から  じゃじゃんと落ちた 覚めた目で見りゃ 入れ歯じゃん       軽

   あなただけには 事実を言うが    冴えもしないし  イカサない        虎

   あやめ咲くまで じっくり待とか   酒を酌ませりゃ  いたいけじゃ       Y

   愛は移ろい   時節は変わる    咲いた花なら   いかに散る        龍

   雨に咲くのは  時節の花よ     最後の恋を    いかにせむ        龍

   あんと甘えりゃ 地獄もたのし    妻子もちほど   いいオトコ        Y

   愛も在るのさ  情(じょう)また然り 盛んなわれの  いのちなれ        龍

   揚羽みたいな  字ですね「燦」は  「さん」と打ったら いつも出る       小雪

   熱く絡まる   ジルバの後で     誘い誘われ   いずこ行く        Y

 

  ☆折込みだ・い・お・う(だ・い・わ・う)」

   だからふるよと  いったじゃないか  王がふるふる  海山に         柳川

   だってあのとき  言ったぢゃないの  別れ話は    うはの空?       小蘭

   「ダメなのねえ」と 言ったら駄目よ  起きるものまで 動かない        龍

   抱いてあげれば  一途になって    おとなはすげえ うざったい       そら

   誰か知ってる?  いっぱい文字を   押し込んだのが 鬱の字か        龍

   太宰治と    岩下志麻が      おそれ知らずの うそをつく       柳川

   大地うるわし  いのちの夏だ     俺のこころも  浮き立つよ       龍

   だっこだっこと いっつも言うの    おやじ殺しの  初いいヤツ       Y

   誰に告げよか  言わぬが花か     思いがけない  噂ゆえ         龍

   大のおとなと  いえないような    帯をとく間の  うちのひと       小雪

   だから言ったわ いい子になると    同じ枕で    うつつざま       Y

   ダルな気分で  イマジン聞けば    おいでおいでと 鬱が呼ぶ        媚庵

   ダンスするなら イエティたちと    音頭とりとり  うち興ず        金五郎

   だから私は   いい人なのさ     おいでおいでと うそをつく       媚庵

   騙すつもりで  言うのじゃないよ  おみゃあほんとに 愛(う)いひとだ    龍 

   だはは暑いよ  いやはや暑い     おぉぉ暑いぜ  うん暑い       柳川

   ダッチワイフの イリアはいつか    オイルなしでも うれし泣く       Y

   だるくせつない 一途の恋も      思い出として  浮き世なる       龍

   ダーツ投げたら 痛い!と言った    別れ言葉は   後ろめた        小蘭

   誰が呼んだか  岩戸が開いて     割れた裂け目が 裏返る         燦

   だれもしらない 泉のみづが      湧いてゐるよな うつくしさ       柳川

   黙れ小娘    言わせておけば    儂のと違うぜ  腕の××        燦

   だどもしたども いのちの次の     わが一大事   うなぎうなぎ      もきち

   だぼんどぼんと いてまえ!蛙     わたしゃ百まで うそをつく       Y

 

  ☆自由題

   わかいもんにも  NHKにも     まけてたまるか お軽の意地よ      軽

   愛をおくれと   地べたに這って   叫ぶほどなら  信じましょ       小雪

   抱いて抱かれて  一から知った    おとこはとても いぢらしい       そら

   これが恋なの? 視線のなかに     虹がかくれて  いるみたい       小雪

   これは恋なの? 不安なときに     がんじがらめに されたくて       小雪

   これで恋なの? 「今から来て」と   ふいに言われて むっとする       小雪

   これも恋なの? 逢わないときは    嫉妬ばかりに  日が過ぎる       小雪

 

  ☆文字工夫

   衣はがして    おもひのままに   辱しめたい   褥では         小雪

   衣かけなきゃ   辱しくって     寝られやしない 褥だよ         龍

   衣ぬいだら    裸は果実      旬のあいだに  めしあがれ       柳川

   雨という字の   涙の種が      咲いてちらほら 雪の花         柳川

   二つ束ねた   にほひの草に     誰が火付けた  薫りたつ        Y

   なぜかおかしな りっしんべんだ    こころ参るが  惨めとは        燦

   主のゝ(ちょん)の間 わたしにおくれ 王につかのま  してあげる       柳川

   主にいつでも   添うてる人に    なっていたいと 住みついた       柳川

   主といっしょに  住んでた人の    顔にいちまい  …往きました      柳川

   草の庵は     重くれ知らず    連火移れば   よく薫る        柳川

 

  ☆折込みあ・さ・く・さ」

   朝が来たなら  さよならなのね    暗いゆぶねで   触りあふ       燦

   逢へば別れが  さらにも辛い     雲の切れ間の   冴えた月       燦

   あたしばかりが 去るんじゃなくて  口説(くぜつ)のあとの さようなら    小雪

   あまいことばを ささやくまえに    くどき文句を     さりげなく    柳川

   あんたあきれた 才太郎畑       くくと泣いてる    さくらんぼ    Y

   あとのまつりと さざ波聴きつ     縊る間までの     差し枕      Y

 

  ☆折込みね・こ・ま・た」

   ねばる納豆   こまかくきざみ    まぜた味噌汁     たぷたぷと    もきち

   眠る時間が   こんなに惜しい    待っている日は    たよりない     燦

   練馬大雨    困ったもんだ     またの機会に     踏鞴踏む      媚庵

   寝首掻く日を  心の果てに      待ちに待ってる    ダチュラです    Y  

   ねあか野郎さ  転びはしても     まさにこの世は    たのしいぜ     龍

   ねてもさめても 恋するいまを     まへのをとこに    たねあかし     小雪

   練れたどどいつ このひとだあれ    またのなまえを    多田の零      柳川

   寝癖かわいや  こましゃくれても   枕芸者にゃ      たりませぬ     Y

   寝れば「ね」の字で これまた可愛い  まるいお手手も    たまんな〜い    柳川

   寝ずにひたすら 来ぬひと待って    松の言の葉      たてまつる     Y

   涅槃求めて   虚空を見つめ     迷い惑いて      戯れを       媚庵

   空無(ネアン)煮詰めて 焦がれた恋を またも般若に     たばかられ     柳川

   眠い瞼を    こすりにこすり    待っていました    七夕に       心太

   眠くなるよな  小春の庭に      松本小雪が      立っている     燦

   猫ぢや猫ぢやを 小娘たちが      舞ふよまたたび    たべずとも     柳川

   眠れ少女よ   此の世の花と     またの逢う日を    誰が知る      媚庵

   眠れないほど  恋する人に      まるですげない    態度とる      龍

   寝れば忘れる  転べば消える     まこと記憶は     たわいない     柳川

   猫にまたたび  小僧にをんな     マラに真珠の     旅役者       どぜう

   寝相よくない  恋人たちが      丸いベッドで    龍(たつ)になる   どぜう

 

  ☆折込みま・な・ぶ・た」

   まぶたひらけば なだるるごとく    葡萄の房を      たたく雨      もきち

   まるくなったり ならんでいたり    ぶってほしいと    たのんだり     燦 

   睫毛くちづけ  涙を吸って      ぶってぶたれた     太夫です     Y

   まじな話さ   なんてえ奴だ     ぶっ殺そうか      畳もうか     龍

   真一文字が   斜めによろけ     武士も食わなきゃ    頼りなし     心太

   マサラ・ムービー なぜなぜ見やる   文武両道        タカラブネ    媚庵

   待てば来ないし なじめば嫌う     文太演じる       旅がらす     柳川

   またのあいだで なじんでいるわ    ぶらんぶらんと     たまりんが    Y

   まるいところに 馴染んだ指が     ぶらり揺れてる     玉手箱      燦

   まじめ一途に  ナンパに励み     不器用なのが      玉に傷      燦

   股をつねって  なみだを呼んで    武器となるほど     ためている    小雪

   まして詩歌は  奈落の底の      無礼承知の       他人の血     媚庵

   待っていてくれ 菜の花だって     無理に咲かせりゃ    大輪ぢゃ     燦

   負けたまいった なんともすてき    無骨なとこも      たまらない    小雪

   まさに詩歌は  那由他の無聊     仏陀たまげる      多義の声     柳川

   待ってゐたのに なぜ来ぬ小雪     降って来るのは     ただの雨     燦

   待つといふ   ながい時間を ブリキのやうに 立つてゐるしか 能がない     小雪

   待てば待つほど なつかしくなる    無頼待つ身の      旅まくら     柳川

  ☆どぜうさん襲名披露大蔵ざらえ!

     まなぶた

   松の木の根に  なにやら光る     仏足石か        ただならぬ   

   松の木の根に  なにやら生える    ぶらんぶらんと     竹じゃない

   まさかどこかで 何かがあって?    無事でいるなら     便りせよ

     ねこまた

   寝てもさめても 恋しいなどと      まじめ一途が     たまらない

   眠るふりして  媚びてる仕草      丸いところに     タマ(猫)が乗る

   鼠一匹     殺せぬ風情       まさかこんなに    タフだとは

   寝てるところを 子供に見られ      ママが勝ってる    体位だわ

   寝てはみたけど 恋しい人は       まるで浮気な     他人船

                          以上「まなぶた」「ねこまた」どぜう作

 

  ☆題詠夫婦舟」

   ほれたほの字が ぼやけてぼの字     ほのとぼのとで    ほのぼのと    柳川

   沖の暗さは   世間のつらさ      抱いてください    夫婦船      どぜう

   ともに白髪と  誓ったけれど      白髪待たずに     抜けてゆく    柳川

   妻になったら  二度とは待たず     すむとおもった    ゆめだった    小雪

   添うといっても いったん添えば     ほかと添いたく    なるばかり    小雪

   ねむれないねと 手と手をつなぐ     一夜千ほど      かさねたい    小雪

   だれが乗ろうと さいごはふたり     海女と船頭の     夫婦舟      柳川

   恋の形見の   真珠のピアス      ひとつなくした    北ホテル     どぜう

   古い演歌の   レコード盤に      針を落とせば    「夫婦舟」     どぜう

   薄い蒲団に   よりそう二人      夢が揺れます    夫婦舟       歌川シーナ

   世間知らずの  二人が惚れて      波の間に間の    夫婦舟       歌川シーナ

   燃やしつくすと やくそくすれば     永遠(とわ)のつかのま 夫婦舟     小雪

   いつも居たっけ 居るはずだった     きみが見えない     夫婦船     龍

   愛と憎とを   左右の棹に       子は鎹(かすがい)の  夫婦船     媚庵

   夫婦舟って   名づけるつもり     男ではない       ひとと乗る   小雪

   夫婦舟だよ   これから先は      君が舵とる       俺は漕ぐ    泥鰌

   逢いたかったと すねたりせずに     すんでさびしい     夫婦舟     小雪

   こころあわせりゃ からだも合うと    言ってください     夫婦舟     泥鰌

   からだあわせりゃ こころも合うと    言ってください     夫婦舟     泥鰌

   きしむところは  きしんだままに    沈んでもいい      夫婦舟     小雪

   およげないけど  舟には乗るの     そんなふたりの     夫婦舟     柳川

      三波春夫賛江

   三羽ならんだ   波間のかもめ     春はめでたい      夫婦舟     泥鰌

   妻と言うより   良き友だった     そんな気がする     夫婦舟     龍

   こころ合ったら  からだも合うさ    さしつさされつ     夫婦舟     龍

   気楽が良いよ   肩凝る人と      乗れば疲れる      夫婦舟     龍

   頬を染めたわ   おまえと呼ばれ    あれはいつやら     夫婦舟     小雪

   きっと夫婦に   盗んですると     義理が言わせた     ぬかに釘    泥鰌

   ♂と♀とを    からめてごらん    永久に解けない     知恵の輪だ   柳川

   桃の窪みを    辿ればそっと     吐息捉える       指の腹     あき

 

  ☆折込みき・ぬ・ぎ・ぬ」

   消えてしまへば  ぬしとのことは    銀糸きれいな      ぬれごろも   小雪

   きみと一緒の   温とき一夜      銀河眺めて       濡れたっけ   龍

   キスで終わりよ  脱ぐのは止めて!   義理と人情じゃ     濡れはせぬ   龍

 

  ☆折込み「き・ぬ・ぎ・ぬ」+時の匂い

   きれいさっぱり  濡れ衣はらし     銀のベッドで      脱いでみる   泥鰌

   きついマニュアル 抜かすはいつも    銀の光が        抜けて来た   泥鰌

   気分次第で    ヌードルなども    技術駆使して      盗むわよ    柳川

   気分次第で    ぬかるむウフフ    技術要らずの      ヌークリア   柳川 

   キラリじゃないよ ぬばたま闇に     ギラリ光った      ぬえの眼だ   龍

   キアヌリーヴス  脱いでるとこを    仰天しながら      盗み視る    柳川

   キアヌリーブス  抜けてるやうで    ギリシャ顔だが     ヌメリなし   泥鰌

   切れる予感を   ぬぐおうとして    giveとtakeを  縫いあわす   小雪

   君はいづこに   額(ぬか)よせたまふ 牛車のなかに      濡るる袖    小雪

   吉と浮かれて   ぬかるみ踏めば    ぎゃあてぎゃあてと   鵺の鳴く    Y

   霧に巻かれて   濡れてみたらば    仰天だるまが      ぬうと出た   弘之

   北の大地の    ヌーヴォーロマン   ギター抱えた      ぬらりひょん  柳川

   菊の盃      主へと廻す      吟じなされよ      濡れ演歌    泥鰌

              【注釈】小雪さんの「牛車」への返歌。平安王朝ふう合コン。

   紀文のおせち   塗りの重箱      義賊ねずみも      盗み食い?   泥鰌

              【注釈】2000年記念に200万円のおせち料理。弐千円札の駄洒落よりマシ。重箱は輪島塗。

   桐野夏生は   【nouvelle vague】   銀色夏生に      【ぬんちゃく】を  泥鰌

              【注釈】桐野さんの作品は、たしかにヌーベルバーグ。しかし、売れっ子作者に直木賞とは、

               素手で戦える格闘技の名人に「ぬんちゃく」を持たせるようなもの。

   気味が悪いは   主の甘言       ギロチン台に      滑り茸     泥鰌

              【注釈】甘い言葉には気をつけよう。滑り茸(ヌメリタケ)とはキノコの一種。

               マツタケに似ているが、サイズがミニ。

   「きつい!」「深い!」や 「ぬ」の字のついた 擬音あふれて    濡れもせず   小雪

   危険承知で    抜いたよお水        義理に責められ   ぬかづかれ  柳川

   きわの手前で   ぬく手をやすめ       戯画のそこここ   ぬりつぶす  柳川

   霧の密室     ぬかるむ小道        ギリシャ柩の    ヌレイエフ  媚庵

   きつくしばれど  ぬかりがあって       ギエム足から    抜けてゆく  小雪

   キスがすきなの  ぬってたボルドー      ぎくり気づけば   ヌードいろ  小雪

   きいち描ける   ぬりゑの少女        凝視したって    ぬぎません  柳川

   キスは足だけ   ぬかづきなさい       「御意」としたがう 沼正三    柳川

   きみは素敵と   ぬけぬけ言って       ギブとテークの   濡れごとさ  龍

   金の簪      濡れ羽の髪に        祇園の宵の     抜き衣紋   媚庵

   抜かず帰した   技量のなさも        糠をあつかいゃ   紀州一    小雪

   きびのだんごの  濡れ手の粟は        銀砂それとも    沼の泥    小雪

   きれたこどもは  ぬたうちまわり      ギュンター・グラスは ぬれそぼつ  柳川

   金の満月     ぬすんだ夜に       銀河いっぽん    ぬすまれた  柳川

   綺麗どころを   塗り込む壁に       宜保の霊視の   ぬらりひょん  媚庵

   金の指輪を    抜きぬく涙        銀の絵の具で    塗ってみる  泥鰌

   気障な男が    脱いでる場面       ギミックつまりは ぬらりひょん  泥鰌

   傷の裂け目も   縫い目も見せず      偽悪露悪の    ぬらりひょん  柳川

   鬼太郎一家の   ぬりかべたちと      銀座うろつく   ぬらりひょん  小雪

   きまり金時    抜く手も見せず      銀河鉄道      沼津発    媚庵

   きれいだったよ  濡れたる肌が      ギリシャ美人の   ヌーデイスト  龍

   キシリトールを  ぬいたらただの      銀のつつみを    ぬいだガム  小雪

   今日はボージョレ ヌーボー日和       ぎゅっと抱きしめ ヌムキットパ  柳川

   キョンが鳴く鳴く ぬーべー笑ふ       祇王塚には     鵺が飛ぶ   媚庵

   きまり金時    ぬんちゃく要らず     ぎょっとした熊   抜け道へ   柳川

   昨日別れて    ぬらりがくらり      ギフトカードの  ぬらりひょん  泥鰌

   絹の産着で    ぬくぬく育ち       祇園恋しや    ぬらりひょん  龍

   きえるきさらぎ  ぬかるむやよい      疑心うづきの    ぬすみぎき  柳川

   キスをしたなら  ぬくもるからだ      ギムナジウムの   濡れた窓   小雪

   きまり金時    ヌンチャク打たれ     ギブスがキスで   濡れてゐる  泥鰌

   季節はずれの   ぬばたま模様       議会政治も     沼の底    媚庵

   禁じられても   ぬかるんでても      ギムナジウムに   沼ふたつ   柳川

   気障(きざ)な奴だよ ぬばたま小僧     義理と人情の    怪盗だ    龍Jr.

   消えた言葉の    ヌーベル・バーグ    ギャグの時代の   ヌーボーさ  龍Jr. 

 

  ☆数字入り       一上がり 三下がりして 二心    泥鰌

   億と降っても    やがては零に      もどるつもりの   春の雪    柳川

   一も二もなく    さんざんだけど     四の五のいわぬ   ろくでなし  柳川

   純なところが    好きだと言はれ     二枚の舌の    二枚腰     小雪

   一千九百      九十九年        十月二十日    余り七日    柳川

   二千円札      おやまかちゃんりん   子産まぬ式部が  増殖中     柳川

   いちじくにんじん  さんしょうしいたけ  じゅうさんななつで ごろすけホイ  泥鰌

   逢える日までを   ゆびおり待って    手が十本と     足二本     小雪

   龍じいさんに    子供が9人      白が5人で     黒2人     龍

   二人キリよと    一物切って      ゆくえ定めぬ    定の沙汰    柳川

   一も二も無く    サンキューなのさ   四の五の言わない  ろくでなし   龍

   千代に八千代に   百花がゆれる     万歳岬に      億の霊     媚庵

   千度言うたか    逢いたい好きと    あほらしいから   もうやめる   小雪

   千代に八千代に   経てきたものを    なにが怖かろ    二千年     泥鰌

   千代と八千代は   双子の姉妹      母は君代で     父知らず    柳川

   千代に八千代に   惚れたが因果   細石(さざれいし)とは ソフトの名   媚庵

   千代に八千代に   かがやくつもり    定とならずに    吉を呼び    小雪

   八百屋萬屋     一六銀行       セブンイレブン   悉皆屋     柳川

   一期一会を     つるかめ算で     三三九度に     してしまう   柳川

   赤い十字の     救急車だよ      九九で足したら   九死一生    泥鰌

   〇に十の字     帆には八の字     惚れたはれたが   九十九里    泥鰌

   蜘蛛と蜻蛉が    百足に惚れて     百夜通ひの     七変化     媚庵

   五色豆より     生八ッ橋と      言えど結局     赤福か     小雪

   二度と言わぬが   小雪は美人      千に一人の     佳いおなご   龍

   手足八本      心中者が       蜘蛛に生まれて   巣をつくる   柳川

   どどのページの   龍宮城で       千六本に      なる小雪    小雪

   二十面相      五十路を超えて    駆けて化ければ   千面鬼     媚庵

   嘘でかためた    顔への報い      針千本の      雨がふる    柳川

   百鬼夜行さ     千人針は       万にひとつの    帰還兵     泥鰌

   一糸乱れぬ     旗揚げよりも     一糸まとわぬ    肌がいい    柳川

   冬へ冬へと     季節は変わる     やがて西暦     二千年     龍

   百と八つの     煩悩抱いて      四苦と八苦の    世は厭よ    龍

   逢うた夜から    二年がたった     死んだ恋なら    三回忌     小雪

   三日鳴らない    携帯電話       恋の位牌に     早変わり    柳川

   声もわすれて    いるのになぜか    指が数字を     覚えてた    柳川 

   七代経っても    七里ガ浜の      七祖七僧      七五調     媚庵

   七つ道具で     七難隠し       七つ下がりの    七変化     柳川

   新大阪駅      551の       列の長さで     知る曜日    小雪

   十年(ととせ)祝うと 十六夜待ちの    十界曼荼羅     十重二十重   媚庵

   九死一生      三枚脱いで      手七場六の     勝ち五万    小雪

   ごぼう・三つ葉は  いついつ来やる    泥鰌・たま子の   待つ鍋に    柳川

   店主だったら    つくってみるわ    四面楚歌でも    四番台     小雪

   百にひとつの    可能に挑み      十にひとつの    成功を     龍

   二度も三度も    一緒でしょうと    なんでわたしが   くどくのよ   小雪

       毛語録 余りのところは 石で切る  泥鰌

   四方八方      一にも二にも     三千世界      毛語録     泥鰌

   佳人麗人      美人べっぴん     並みでヘチャぶす  毛語録     龍

   心がわりは     一切ないよ      つねにかわらぬ   下心      柳川

   数え歌なら     キリあるものを    ゼロが無限の    恋の歌     泥鰌

   それと言えずに   寿限無のような    手紙つらつら    書くつらさ   柳川

   からだだけよと   言いはなっても    それをいちばん   のぞむのね   小雪

   ハゲもインポも   アルツも治りゃ    次ぎのクスリは   不老不死    龍

   百夜通うと    八百比丘尼    千に三つの     誠実(まこと)なら  媚庵

   亀の甲より     年の功だぜ      小三亀松さん    花の喜寿    泥鰌

   二つ返事で     応えたけれど     二の足踏んだ    二人旅     龍

   八千代館なら    第六感を       シックスナインと  時雨訳     泥鰌

   千手、百済に    十一面と       めぐり今夜は    万華鏡     小雪

   訛らないでね    シックス・センス   えろいんぴつの   その伝で    柳川

   晴れて本日     いいふうふの日    あすはいいにいさんの日だ      柳川

   うごかないでね   アン・ドゥ・トロワ   頬をあずけて    アラベスク   小雪

   二度や三度は    いえいえもっと    きれた小股の    技みせて    あき

   小股すくいの    実演などじゃ     いかがかしらね   第二弾     小雪

   0の数字が     空一面に       散っております   小雪です    柳川

   四十八手の     手管をつかう     小雪今宵も     花と蛇     あき

   柳みたいに     川面にうつる     をとこ百人     あきた恋    小雪

   奔馬・憂国     天人五衰       二十九年後     三島の忌    媚庵

   奔馬・憂国     天人五衰       二十九年後     三島の忌    媚庵

   三島由紀夫の    霊魂招く       太田千寿は     いま何処    柳川

                注)太田千寿 三島由紀夫の霊界通信でひところ話題になった主婦。

   由紀の二文字を   三島と分けて     ゐるとつゆほど   おもはずき   由紀子

                                         ※由紀子→小雪の本名。

   きたる十月     十一日は       どどの日ですよ   忘れずに    柳川

   空に三日月     切ないまでに     女人ひとりを    想う宵     龍

 

  ☆源氏どど

    桐壺

   いずれの御おん時にか  アレが      ソレをナニして   こうなった   柳川

    雨夜の品定め

   きくにはばかる     ところはぜんぶ  雨に消された    品定め     柳川

    末摘花

   そこがいいとは     口には出して   いえぬ部分が    いい女     柳川

    六条御息所

   化けて出るほど     惚れてませんわ  あれは序の口    ごあいさつ   柳川

 

  ☆折込みと・し・こ・し」

   とてもきれいな     シルエットだと  恋が見せてる    しもぶくれ   小雪

   とにもかくにも     しばしの別れ   こいつばかりは   仕方なし    龍

   ともに一緒に      白髪になった   恋のどどいつ    下心      泥鰌

   年をとっても      しわだらけでも  腰がぬけても    死ぬもんか   柳川

   獲らぬ狸の       死なない皮を   腰に巻いてる    白い肌     泥鰌

   問いもしないで     しびれるほどに  これがすきだと   しってたわ   小雪

   床のうまさを      知るためだけに  恋のてはずを    思案する    柳川

   遠いところや      知らないところ  ことば要らずの   しとり旅    柳川

   とんぼ返りで      詩歌の地平    越えて都都逸    シニフィアン  媚庵

   翔んだ奴だか      しんねえけんど  声も出ぬほど    しごいたる   龍

   永久のシェルター    七七七五     コトが済むまで   シエスタよ   柳川

   歳の功だと       知らせるために  コトが済んでも   シエスタさ   泥鰌

   とけてしまうと     しりごみしても  これですんだら   死のパンチ   小雪

   時計止めれば      しずかに過ぎる  これが時間の    正体ね     柳川

   とけてしまうわ     下着も脱いで   恋のシエスタ    白い夏     泥鰌

   鳶のあいつも      詩人のきみも   こりてしまって   使用済み    小雪

   飛んでごらんよ     死ぬことなんて  怖くないよと    死後の人    柳川

   とろけちゃうほど    したのは良いが  こしのあたりが   しびれてる   龍

   とどめさしたら     しとどにつゆが  こしをあふれて   したみ酒    あき

   刺がいたいと      しなだれかかる  恋をはじめる    シナリオで   小雪

   ところかまわず     したがる人に   困らされてる    しどけなさ   柳川

   とんだところに     しらががはえた  こんな手筈は    知らなんだ   泥鰌

   通りすがりの      新婚さんに    此処は出るよと   したり顔    柳川

   とにもかくにも     死にたいなんて  ここはたのしく   しぬところ   小雪

   とったお客は      三味線ごろし   今宵くずれる    島田髷     柳川

   とんだ撥だわ      しなった絃を   こうもたたいて   至福とは    小雪

   遠くそびえる      白富士よりも   ここで寝そべる   シロがいい   柳川

   とんだみれんの     しがらみなれど  こすにこされぬ   しじみがわ   媚庵

   ときがたつのは     しんどいもので  こりも痛みも    しなくなる   小雪

   年の瀬の瀬に      詩歌の遊行    声を尽くして    鴫が鳴く    柳川

   歳の終わりと      しこたま飲んで 「小雪」芸妓に    しばかれた   龍

   とはにをとこを     しばかぬやうに  こんなわたしを   しばりたい   小雪

   朱鷺とパンダの     シンクロナイズ  これの仲間じゃ   しのびない   柳川

   時をわすれる      寝台にして    ここはいちおう   寝台車     小雪

   問わず問われず     知られぬ恋は   焦がれ損だと    知る蛍     柳川

   ところかまわず     尻向け飛んで   焦がれまいぞや   恋蛍      泥鰌

   とめてしまえる    代物じゃない  恋に帆かけた   修羅しゅしゅしゅ   柳川 

   ところてんには     時雨が似合う   珈琲カップに    白砂糖     泥鰌

   鳥の先祖は       始祖鳥だけど   こいつばかりは   詩にならぬ   龍

   時も次元も       知らないうちに  越えてしまって   脂肪肝     小雪

   獲って食うとは    歯科医は言わぬ  こんな綺麗な  不知親(しらぬおや)   泥鰌

   常田富士男が      知らないだけで  小森和子は     知っている   そら

   とったきねづか     知らぬと言えず  ここで会ったが   癪のたね    柳川

   歳のせいには      したくは無いが  恋することも    しんどくて   龍

   とてもきれいに     しがらみ消えて  恋がすむなら    鹿十する    小雪

   「泊めてくれたら 死んでもいいよ」  「籠めてあげるわ 死ぬるまで」     柳川

   とがとがしいに     辛気なさるな   今夜濡れ文     したたむや   さほ

   突如しつもん      しつれいごめん  小雪の顔を     しってるの?  小雪

   ときのゆくえは     知らないけれど  恋のゆくえは    知っている   柳川

   とてもいいこと     していたような  声を殺して     忍び泣く    泥鰌

   吐息せつない      静かな夜だ    ことし最後の    忍び逢い    龍

   とうの昔に       始末をつけた   コレがでてきて   死ぬ思い    柳川

   常世ときじく      しんから惚れて  ココ山岡の     ショーケース  そら

   とわにとわにと     呪文のように   恋の期限を     知りながら   そら

   ところかわれど     調べは五七    古今閑吟      新古今     柳川

   とった杵柄       知らぬがほとけ  恋の手管は     白波の     龍

   とって食おうと     したわけじゃなし 恋とよぶにも    しのびなし   小雪

   友と小唄で       しっとり過ごす  今年かぎりの    四十代     柳川

   とんだ数字の      シーベルとかの  こわい話は     したくなし   柳川

   とってかえそか     しぐれの朝は   恋にぬかるむ    知らぬ道    平蔵

   とって食いたい     塩ふりかけて   恋の味する     白兎      与作

   途中経過を      知らないくせに  ここというとき  しゃしゃり出るぅ  菜の

   十の四乗       心配いらぬ    こんな手もある  ししゃごにゅ〜   菜の

   時計仕掛けの     新天新地     ここを踏んだら  下を掘れ      菜の

   ともに楽しみ     ここまで来たが  恋の未練も    知らすdodo   平蔵

   吐息ため息      しびれる夜を   恋の記念と    しましょうか    龍

   トルシエ監督     心願成就     古今無双が    シドニーへ     柳川

   トロがいいわね    しらすもステキ  こんな雨夜の   しなさだめ     そら

   とにもかくにも    しっかりきみを  恋の奴隷に    してあげる     小雪

   永久(とわ)に忘れぬ 七五の粋を    この身滅べど   詩の絆       媚庵

   歳の終わりの     秀作成らず    こいつばかりは  仕方なし      龍

     自由題「としこし」

   手と手かさねて しっぽり過ごす    小鍋ことこと  音や良し        あき

   今宵最期に   しゃんぱん飲んで   泡の行方に   ゆだねましょ      あき

 

  ☆卒業制作

    「大地の酒唄」      柳川

   暗いとこでも あかるいふたり 歌う阿呆と 呑む阿呆

   どんな阿呆も 阿呆は阿呆 生きる阿呆に 死ぬ阿呆

   きみは酒蔵 わたしは琴よ からになりゃこそ よく響く

   だれのものでも ない国だから お猪口ひとつで 売り渡す

   空はいつまで 地はどこまでか 酒はのどまで あればよい

   うつつうつし世 うつつをぬかし 鬱になるのも またうつつ

   遠い墓場で 啼く猿ひとり お気になさるな とりあえず

   阿呆比べに 敗者はいない 生きる阿呆に 死ぬ阿呆

                参考・グスタフ・マーラー交響曲「大地の歌」第一楽章

 

    「恋暦」         小雪

   だれにおとらぬ あまのじやくです すねてはじまる 十二月

   年のはじめの インフルエンザ 恋を食はうと しても無理

   きらら如月 かがやくための 「これはひみつ」と いふ呪文 

   聞こえてゐますか? 呼吸にあはせ 帯がちひさく 鳴つてゐる

   こぼれさうだと さくらを見てる うちにふたりが こぼれさう

   初夏の海には 日傘をさして 死ににゆくかの やうに逢ふ

   シエラザードと わたしをおもふ 梅雨のさなかの 長電話

   夜は他人の かほしてゐても もつともつとと 言ふまひる

   あなたばかりを 好きだといつて ほかのをとこの ニ、三人

   あなただけだと ねだつて言はせ 九月さびしい 月となる

   ひとつくくりに するならたぶん ながい十月の キスだつた

 

    「恋座御無用どど風16韻●恋路のはての巻」    柳川

   1夏     夏のやみ夜の 恋路のはては    

   2夏      ゆらゆらゆれる 蛍籠

   3雑     ついたきれたと さわいだあとで

   4雑      こっそり水に ながしたの

   5秋 月   浮いたうわさは 田ごとの月よ

   6秋      どこにでもある 鳥おどし   

   7雑     かるい恐喝 てくだのひとつ

   8雑      ふたつみっつは 出し惜しむ

   9雑     宛名何度も 書いてはみたが

   10雑      つもる話が あるじゃなし

   11冬     好きなお方は 雪国そだち

   12冬      春のほかにも 待つものが

   13雑     人は中身が 大事と言われ

   14雑      それはどこよと 訊いてみる 

   15春 花   花よ教えて 性あるならば

   16春      野に遊ぶとは どんなこと

 

   「あなたほど」 五字冠新仮名五十音折り込み    小雪

   あなたほど いいといえない うつり気だから 絵から出たよな 男前

   風だけが きっと知ってる くるしい恋を 毛糸編みして 恋ごろも

   再々に 汐にぬれゆく 水族館の 背びれじゃなくて そこのとこ

   立ちながら 近くいるうち つついていても 手ではないから とめどある

   鍋底に 煮えて煮すぎて ぬかるんじゃった 葱のようだわ 残る恋 

   ハッスルさ ヒカル好きだぜ フィーバーだぜと へんなおとこが 惚れてくる

   前よりも 身軽むずむず むむむむむずず 目方ではない ものおもい

   やけどして 印度料理は 唯一きらい? エビがあるから よしとせよ!

   ランパプの リエがいいなと るる言うヤツは レモンしぼって ローストに

   わたしだけ いつもおもって うつくしがって 悦にいってね 惜しんでね

 

    どど風歳旦三つ物      柳川

   ことし初めて 吹く恋風に

    だれが散るやら 落ちるやら 

   ままよこの世は 悉皆浄土

 

    どど風三つ物 折込み「としこしどど」    柳川

   ともに唄った 七七七五

    今度生まれて 死ぬときも

   どこで暮らそと どどいつどいどい