どどいつ2000 10月号
■半玉----------------------------------------------------------------
アメとムチです あなたの仕方 愛に似てても 愛じゃない
糸でしばられ 痛いの小指 糸は赤色 いつわりの
ウソが鳴くので うたなどやめて 海をみていた うたうたい
縁があっても 偉くはなれぬ エセの名士の 笑みの賤
オットセイより 大きいわとて おまえしたのか オットセイとも
傘をさしても 肩だけ濡れて 肩が寄り添う 傘のうち
「君」で始まる 切口上が 「貴様」で終わる 議論好き
苦力(クーリー)は好き 姑娘(クーニャン)の胸 黒支那服で くるむ丘
けものみたいと 毛嫌いされて 結婚できぬ 健啖家
小糠雨でも 来ぬ人だとて 焦がれりゃつなぐ 心あて
さみしいよるに さみだれよふれ さくらの匂い させながら
知らないほうが しあわせだよと しらを切ってる シニシズム
すだれ髪でも すもうとりでも 好いてしまえば 素敵なの
せめて最後に 背中を抱いて 銭でもくれれば 責めぬのに
相思相愛 相当過熱 早期覚醒 続最初
タマはときどき たたかいに行き たたかわず去る たたたたた
チチをさわった 痴漢よこいつ チチのない娘に チクられて
爪先立ちの 妻でしたわね ついに還らぬ 妻が言い
天の声聞く 定説おとこ 轍を踏んでも 天のせい
遠いの月は とれないのかと 問うる瞳に 灯る月
鳴かぬ金糸雀 鳴きすぎる娘を 並べて売ってる なんでも屋
日本的なる 逃げ口上は 二番煎じで 逃げ切れず
抜き身はずして 拭って手入れ 脱ぎ捨てかいな ぬれた鞘
ネクロフィリアの ねじれた愛は 眠れる少女の 寝覚めまで
野薔薇(ノイバラ)きみは 野にあるべしと ノーブルおとこは 野を逃れ
恥ずかしいわと はにかみながら 外す手つきは 早ワザ師
秘密秘密と 悲恋を気取り 人目はばかる 卑怯者
フタをなくして ふためくときに フタに似た人 ふと思う
下手な鉄砲 下手すりゃはずれ ヘンなオンナと へらず口
ほしのひかりと ほたるのあかり ほのかにてらす ほほみてた
まくらことばに まことを探す 真砂の中の まれな金
蜜月の蜜 三月で流れ 見果てぬ夢は 未亡人
ムーランルージュの 無数の脚が 結び開いた 夢幻劇
めるへん色に 目隠しされた メガトン級の メロとエロ
モンロー気取って 諸肌脱げば もろに出てくる 森ふたつ
破れ三味線 山間流れ やまとのうたは 闇路ゆく
ユークリッドも ユーリピデスも 遊星の砂 幽囚の
呼んでみたけど 用には立たず ようやく効くか ヨヒンビン
爛熟待たずに ランボーは逝く 乱痴気のラグ 落花の美
六花も俚歌も 理で割り切れば 利にはならぬと リアリスト
ルパシカ着ても ルドンになれぬ ルサンチマンの ルナチック
煉獄よりも 蓮華がいいと レディーキラーに 礼返し
六道の辻 老父に会って 廬生の夢の 濾光板
わかくさ色の わすれな草を 渡す未練の 笑い草
「を」が持てるのは 「を」の荷物だけ 「を」は知りたくて お届け先「を
「ん?」と目で訊きゃ 「ん」と首を振る んなことしながら 「んん」となり
■龍-----------------------------------------------------------------
「嫌い、嫌い」は 嫌いじゃなくて きっと好きだと 決めている
地震、地震と ジタバタするな「じきに終わるさ」自信なし
しょうもないこと 知ってる奴だ 尻に効くのが 修善寺
駄目でもともと 「大好きなの」と 打算の恋の 抱き心地
駄目でだぼらで だらしがなくて だるいけだるい 陀羅野郎
抱いているのか 抱かれているか 男女の仲は 誰ぞ知る
ダンテ神曲 ダーテイ・ハリー ダヴィテの右手 ダライ・ラマ
誰が見たって 大胆不敵 出したまんまの 出し物だ
■小雪---------------------------------------------------------------
だめよこのひと 「ダンナ」じゃなくて だらしないけど 「ダーリン」よ
だって、だけど、と 駄々などこねず だれをいまはに 抱いて寝る
だらりとしている 黙っていても だれといたのか だいたいは
だけど買ってよ 脱ストレスに ダイヤモンドと 陀羅尼助
ゐてもたつても ゐられぬけれど
井戸のへりでは ゐさらひいたい
ゐざり寄るのも ゐもりのききめ
遺産まぢかと ゐつづける
■泥鰌----------------------------------------------------------------
あれに見えるは 足羽の紅葉 明日は朝から 雨模様
いやよだめよが いいわになって いくわいくわで 息が切れ
うしろすがたは うすくれないの 海に映った 馬のよう
酒の酔いなら 醒めないうちに さても別れは 笹しぐれ
つんとすました つらしてみせて 鶴を食ったの つまようじ
妻にしたのは 鶴ではないが つもる月日の 罪もある
騙すつもりは 断じてないが 誰としたとて ダメな日が
ダメでいいのに だんびら下げて 駄々をこねてる 壇の上
「ん」という字を んんとこさっさ んーとのばせば 人になる
■桜吹雪--------------------------------------------------------------
秋の夜長の 雨だれ続く あやめもわかぬ 婀娜な恋
大須といえば 音曲好きが 十八番演じた 思い出よ
■柳川----------------------------------------------------------------
いつがその日と いわないけれど いつかあなたも いなくなる
上野鈴本 うわさの美女が 植えております 唄の苗
おおい無事かい おお無事だとも おおおおおおお おお、おおお
さかりすぎても さくのが花と 昨夜この花 さいたとか
ほれたはれたは ほまれじゃないが ほんきだったら ほめられる
ほたる狩りして ほのおをまとめ ほうりなげたの ほうき星
じんとくるよな ジェラシーならば じっと堪えます 純情派
「土瓶蒸しの具、どちらにします?泥鰌?松茸?」「どっちもよ」
だってわたしは ダマール着てる だから今夜は だめなのよ
だめよだめよと だらりの帯を だれに解かせて 抱き枕
パパといっしょに パンストかぶり パリで踊れば パラダイス
ぴんとはってる ぴちぴち水着 ピンクのゆびで ピチカート
プロはプロでも プロミス通い プアでピュアーな プータロー
ペシミズムより ペーソスがすき 北京初秋の ペニンシュラ
先斗町には ぽん太がおってさ ぽっと出なんぞ ポコペンね
財を遺した 罪悪感と 残尿感の 材木座
自作自演も 時間がたてば 自縄自縛の 蕁麻疹
ズビン・メータが ずんどこ節を ずっと指揮する ズーラシア
贅をこらした 銭形平次 銭のかわりに 税が飛ぶ
俗か聖かは 存じませんが 象も読んでる ゾッキ本
恵比寿倶楽部の 恵里香がゆらす 恵比寿親爺の 恵比寿笹
んっと好いとお? んだんだ好いと んっと惚れとお? んだ惚れと
■10月の読書案内---------------------------------------------------
『ことば遊び辞典』鈴木棠三(東京堂出版)
『ことば遊び』鈴木棠三(河出書房新社)
『醒酔抄』鈴木棠三校注(岩波文庫)
■文責 西王燦 -----------------------------------------