スクウェアの慢心 元凶は開発陣

01/10/19up
02/07/02ver.2.2


 スクウェアはSCEから出資を受け入れる。ゲーム制作費の高騰や、映画制作費負担で業績悪化したのが直接の原因だが、「真の敵は慢心だった」と鈴木尚スクウェア社長が振り返る。
 映画の開発費が膨らみ開発に必要な手元資金も十分になくなっていた。このままでは人材も流出して数年で駄目になると思った。
 当初はソフトの供給先を広げれば市場から資金調達も出来ると考え、任天堂向けソフトを作りたいと申し込んだが、駄目だった。
そこで、9月上旬に「ゲームを作れなくなればPS陣営にとってもマイナスになる」と久多良木健SCE社長に支援を申し入れた。
 97年にFFをPSに独占供給した祭に任天堂の山内社長は「機種の選択という意味では仕方がない」と言ってくれた。しかし、その後エニックスをPS陣営に誘い、N64は駄目だと公言してしまった。これが任天堂との確執を生んでしまう。
 業績悪化を招いた要因は慢心だ。PS陣営に移って成功し、慢心があった。映画制作もその一つ。最悪の場合を考えるべきだった。映画は坂口(博信・元副社長)が監督を務め、坂口はゲームに時間を割けなくなった。
 大作主義が問題だったのではない。FFは四十億円かけて制作しても百万本売れば回収できる。問題はFF以外に売れるソフトを作れなかったことだ。人材の層が薄かった。流出もあった。中核の執行役員やプロデューサーは残っているが、ゲームはデザイン、プログラム、画像など一定のバランスで中間層がいないと作れない。上が詰まって、中間層が育たなかった。
 デジキューブも経営悪化の一因かもしれない。コンビニ向けは売り場維持のために一定頻度で幅広いジャンルのソフトを出す必要がある。その分、制作部門の発言力が強まって聖域化し、(営業・管理統括の自分には)手が出せなくなった。  オーナーの宮本雅史・元社長と坂口氏の間に確執があったとされるが、これについてはノーコメント。オーナーはSCEの話には全く関与していない。
 今後の再生プランは策定中だが、開発部門は独立採算のカンパニーかプロダクションのような形に移行して合理化する。希望退職などの人員削減はしない。得意とするRPGで世界に通用するものを作る。SCEのほかソニーのマーケティング力や販売力も借りたい。  スクウェアはコンビニ流通、映画、オンラインと様々な挑戦をしてきた。だれかがやらなければならないことだった。社内外で経営への不信感があることは承知している。反省すべきところは反省して再生を目指す。

開発陣の暴走


 PS陣営へのスクウェアの参加は開発陣の意向を色濃く反映したものだった。FFの大ヒットなどで開発陣の発言力は増し、社内全体に慢心も芽生えていた。 「N64はダメだ」「不安定な要素が多く、開発しにくい」といった発言があったらしい。当時を知る業界関係者は「(任天堂に)後ろ足で砂をかけて出ていったようなもの」と振り返る。 会見で鈴木尚会長(当時は社長)は「開発側に出過ぎた部分があった」と自らの社長退任と業績悪化の理由を釈明した。
 PS移行後、開発側の発言力はさらに高まり、ゲーム制作費の膨張に歯止めがかからなくなっていた。93年度に単独ベースで15億円強だった研究開発費は昨年度には 10倍近い146億円まで増加。しかし、売上高は12%しか伸びておらず、売上高研究開発比率は6%から50.6%(平成12年度・単体)に上昇した。 開発側の力が強まるあまり、利益軽視の体質になっていった。
 研究開発費の中心は人件費だ。デジキューブを設立し、広範なジャンルのソフトを高頻度に発売する必要があり、同業他社からの人員流入が相次いだ。 従業員数は234人から774人に増加した。しかし、97年度を最後に単独売上高経常利益率は20%台を割ったままであり経営効率は上がらなかった。 コスト膨張にトドメを刺したのは、映画「ファイナルファンタジー」の制作だった。坂口博信氏(元副社長)が反対派を押し切る形で実現したが、 制作費は1億3,700万ドルと膨らみ、国内興行は一カ月足らずで打ち切り。配給収入は4億円どまりだった。 「映画館の主要客層である若い女性には見向きもされなかった」(首都圏の劇場の支配人)という。北米も興行収入は当初見込みの約1/3にとどまった。 今中間期に133億円の特別損失を計上し、通期の連結最終損益は177億円の赤字(前期は32億円の赤字)になる見通し。 単体の流動比率は9月末で106%と一年前の224%の半分に低下し、資金繰りが苦しくなった。 再建へ任天堂向けソフトの制作やハワイの映画制作スタジオの売却を同業に打診したが不発に終わった。最後の手段が、SCEからの約149億円の出資だった。

DVD・ビデオも不調


 映画「ファイナルファンタジー」のビデオ、DVDソフトの発売から約一カ月後。出足こそ好調だったものの、劇場版と同様に女性客を取り込みきれず息切れ気味だ。 「FFは画像が話題になった作品でストーリーの良さから口コミで広がっていくような作品ではない。作品の質そのものがレンタル回数に反映されるビデオでは既に動きが 止まっている」(都内の販売店担当者)という。FFのビデオ・DVDの当初出荷計画は300,000本・枚に対し、十五日時点の出荷数量は販売用DVD(普及版\3,800)が 177,000枚、レンタル用ビデオは18,000本弱。達成率は65%で、予約客やレンタル店向け販売で数量が膨らむスタートダッシュの時期としては低水準だ。
 発売前日の二月二十一日、第三四半期の決算発表資料でアミューズは「FFの販売計画が未達成になる見込み」と明記、発売前から白旗を揚げた。予約状況から判断した とみられ、資料には「劇場版がもっとヒットしていれば」と記してあった。  発売直後は好調だった。27,000枚用意した初回限定生産のDVD特別版については「\9,800円にもかかわらず初日で完売。客の7-8割がゲームファンの男性だった」 (ゲオ要町店)。  TSUTAYAの週間ランキングによるとDVD販売は三月三日―九日の週で三位を維持しているが、ビデオはトップテンから転落した。  「DVDならゲームソフトユーザーと重なり、売り上げが伸びるはず」(アミューズピクチャーズ)とビデオ・DVD販売で巻き返そうとしたが、劇場版と同様の軌跡を描く可能性が出てきた。

今後のスクウェア


 「本業のゲームに回帰し、構造改革を実行する」。昨年12月に就任した和田洋一社長の経営方針は明確だ。野村証券出身で財務に精通する和田社長は、 「組織・管理体制の強化」を第一に掲げる。 開発陣の暴走に歯止めがかからなかった轍を踏まないよう、経営側から開発コストを管理するなど社内の構造改革に踏み出した。
 前期と今期はFFシリーズの新作を投入したが、二期連続の連結最終赤字。再建には「プロジェクトごとの利益や納期を明確にし、コスト増に歯止めをかける」(和田社長)ことが不可欠だ。 しかし、コスト管理は諸刃の剣でもある。ナムコの「ゼノサーガ」、タイトーの「ラクガキ王国」。これらは元スクウェアの開発陣が 中心になって制作したものだ。 業績悪化の過程で優秀な開発陣の一部は社外に流出した。コスト管理の強化には開発陣の抵抗も予想され、看板の開発力が弱体化する可能性すらある。開発力の維持とコスト管理のバランスを どう取るかが今後のスクウェアの課題である。

参考文献
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