Game Cube
グラフィックス・ワークステーションからゲーム機へ
01/08/19 ver1.1
01/09/20ver2.0


GCソフト開発者達の証言
竹田玄洋氏
N64は「グラフィックス・ワークステーションの機能をそのまま1チップに収めた結果,ソフトウェア開発者に多大な労力を要求するゲーム機になってしまった」任天堂取締役・総合開発本部長・竹田玄洋氏は語る。 N64はメインメモリに最大データ転送速度500M/secと当時としては非常に高速なRambusDRAMを採用した。
当時は最大データ転送速度こそが大切だと思っていた」(同)からだ。
しかし,実際にゲームプログラムを組んでみると,どんなに最大データ転送速度が高くてもファーストアクセスタイムが遅ければ、 リアルタイム性を要求される画面の描画に追いつかない事があることを経験的に理解したのだ。 Rambusはパケット単位でデータを転送するが,キャッシュにミスヒットした際のレーテンシが大きく,細切れのデータを頻繁に読み書きするような処理には適していなかった。
問題が発生するプログラムを動かすための最適化作業にプログラム開発全体の4割の労力を割くような状況に陥っていた」(任天堂取締役・経営企画室長・岩田聡氏)という。 「メモリのボトル・ネックが諸悪の根源」と分析した竹田氏はランダム・アクセス時のレーテンシが5ns以下と短いうえ、どのデータにアクセスしてもレーテンシが一定という特徴を備える1T―SRAMを採用した。 また、N64ではUMA方式をとっていた。対してGCではメインメモリ,描画用バッファ、テクスチャキャッシュ、 汎用RAM(A(Auxiliary)メモリ)と細かく分け、アクセスの集中を避けることで、ゲーム開発がしやすいようになっている。
さらに、N64では,ゲーム開発者が複雑なグラフィックスデータの転送を逐一意識しながら,プログラムを記述する必要があった。 Flipperにはグラフィックスデータの転送をゲーム開発者があまり意識しなくてもいいように,ジオメトリ演算や光源計算などにワイヤド論理回路を採用した。
N64ではPS2と同様に汎用の演算機を使っていた。 GCではグラフィックスデータの格納場所やジオメトリ演算に使うデータ,光源計算のためのパラメータを指定すれば,ワイヤド論理回路がデータ・フローを自動的に管理する。
画像処理チップに混載DRAMを搭載しているという点では、PS2と似ている。PS2の欠点としてこのDRAMの少なさが指摘されている。
しかしGCは、混載DRAM(1T―SRAM)には描画用フレームバッファと、テクスチャキャッシュのみを置き、テクスチャのソースや表示用フレームバッファ(*)はメインメモリ(1T-SRAMで24MB)に置くことで、PS2に対して大きなアドバンテージを得ている。


(*)表示用フレームバッファはFlipper内蔵メモリにおいて24bitのRGBデータだったものをPECと呼ばれる回路で16bitに変換したデータである。このためデータ量は約640Kbyte程度の容量で済む。
 さらにPECは画面そのものをテクスチャデータに変換してメインメモリに書き出すという機能を備える。よって、1度レンダリングした画像をテクスチャとして他のオブジェクトに貼り付けられる。
 これは環境マッピングと呼ばれる技術で、他のゲーム機でも擬似的には実現できるが、本格的にゲームで実用化したのはGCが初めてである。
 実際「ルイージマンション」ではドアノブにルイージの姿が映り込んだり、鏡の前に立つとルイージの姿や周囲の風景がきちんと写る。
チップ構成

CPU
名称              Gekko
動作周波数 485MHz
ベクトル演算用の整数演算性能 1125Mips(Dhrystone2.1)
浮動小数点演算性能
汎用レジスタ          32bit*32
浮動小数点レジスタ 32bit*64
内臓1次キャッシュ 命令32Kbyte、データ32Kbyte
内臓2次キャッシュ 256Kbyte
トランジスタ数 2250万個(この内L2キャッシュが1600万個を占める)
発売時の製造技術 0.18ルール
チップ面積 43mm^2
パッケージ 256端子BGA

製造は米バーモント洲バーリントンにある米IBMの工場で行なう。

グラフィックスLSI
名称 Flipper
Flipper内部ブロック図

動作周波数 162MHz
データ転送速度
主記憶 2.6Gbyte/sec
A-Memory 81Mbyte/sec(8bit)・底面の拡張端子ともつながっている。メモリ拡張も可能
Gekko  1.3Gbyte/sec(64bit*162MHz)
内蔵メモリ 2.1Mbyte(フレーム・バッファ兼Zバッファ)、1Mbyte(テクスチャ・キャッシュ)
バンク数 128個
トランジスタ数      5100万個
発売時の製造技術 0.18ルール
チップ面積 110mm^2
パッケージ 500端子BGA

PS2と比べてみればわかる
ように、非常にチップ面積が小さい。とくにCPUは大容量の2次キャッシュを搭載しているにもかかわらず、このサイズとは驚異的である。メインのチップの数もCPU、Flipper、1TSRAM2個、Aメモリと、合計わずか5個。基盤の面積も非常に小さい。基本的にはFC、SFC、N64と続く任天堂据え置き型ゲーム機の伝統である、材料費(変動費)を押さえて量産効果によるコスト低減を計る、という戦略を踏襲している。 しかし、GCは光ディスクドライブや放熱ファンを搭載した事もあってか、初期段階においてハード単体では赤字である。「ソフトを合わせれば初年度から利益は出るんですよ」「量産が進めばゲーム機本体で採算をとれる」(森仁洋常務)と強調するものの、ある役員からは「ゲームキューブが二万五千円というのは破格の値段だ」という声も聞こえる。今西紘史取締役は「任天堂が枯れた技術でもうける時代は過ぎ去った」と打ち明ける。

参考文献
日経エレクトロニクス、月刊アスキー、日経産業新聞

Home