ボルタの電池での問題(亜鉛板からも水素が発生?)
 
1 現象
   ボルタの電池では、陽極として銅板、陰極として亜鉛板を使う。
   そして、陽極の銅板から水素が発生し、陰極の亜鉛板からは水素が発生しないと説明されている。実は、学校で実験していると、陰極の亜鉛板からも、気泡(水素)が発生することがある。実験中、子供からその指摘を受け、ボルタの電池の指導に困ったことがある。
2 陰極の亜鉛板からも水素を発生する理由
 
 普通、亜鉛には、その精製の過程で、どうしても微量の鉄・その他の金属が含まれてしまう。この異金属が、亜鉛電極の表面に露出していると、この鉄などの金属と、極板の亜鉛と、電解質の三者の間で小回路が生じ、局部電流が流れ、鉄の表面から水素が発生する。
   この局部電流は、主回路が開いていて、ボルタの電池として働いていないときにも流れている。このことを観察させれば、ボルタの電池そのものとは関係ないことが確認できる。
3 陰極の亜鉛板から発生する水素を止める方法
  次のような方法があるが、これらの方法をあえて行う必要はないと思われる。大事なことは、指導者側がその事実を理解しておく必要があるということだ。
       
  (1) 水銀をぬる  
     亜鉛板を薄い硫酸で洗浄した後、水銀をぬり、表面をアマルガムにして被い、異種金属の露出を防ぐ方法である。
 亜鉛は、水銀の中に浸透して電解液に作用するが、鉄はしないので、陰極からは水素が発生が発生しない。
 ただし、この場合、電圧が1.2V位になる。
   
  (2) 亜鉛メッキをする
     亜鉛板の表面を亜鉛メッキする(純粋な亜鉛板にする)方法である。 
    塩化亜鉛中で亜鉛を陽極、電極にする亜鉛板を陰極にして数分間表面処理をする。
 ただし、亜鉛メッキは非常にもろいので、強くこすると皮膜がはがれる。
 
   
  (3) 過酸化水素水で洗浄する  
     陽極(銅板)の分極を防止する方法と同様に、亜鉛板の表面を30%過酸化水素で洗浄する。 
     脱脂綿などに、過酸化水素水をつけて強くふく。