水の中の小さな生物(淡水プランクトン)の観察の問題 | |||||
小学校5年、中学校1年の学習に、水中の小さな生物の観察が位置づけられている。 「うまく、観察できない」という話がよく聞かれる。 |
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1 学習指導要領 | |||||
◆小学校5年 「B生命・地球」−(2)動物の誕生では | |||||
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とあり、次のことを留意・再確認したい。 @ 水中の生物は「魚の食べ物」として位置づけられていること。 A 観察器具、「解剖顕微鏡」「双眼実態顕微鏡」「生物顕微鏡」の操作に慣れることがある。 |
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◆中学校1年 「植物の生活と種類」 (1)生物の観察 | |||||
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とあり、(内容の取扱い)で、 ア アの(ア)の「生物」については、植物を中心に取り上げ、水中の微小な生物の存在にも触れること。 |
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※小学校と中学校の重複学習となっている。 | |||||
2 問題点 | |||||
@ | この観察を、子供ははじめて体験する。(もしかしたら、指導者もはじめてかもしれない。) 顕微鏡をのぞいてみても、どこを、何を観察すればよいかわからない。 |
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※つまり、小さな生物を見たことがない。 | |||||
A | それぞれの生物の大きさや形・姿がわかっていない。教科書には、顕微鏡で観察した倍率が 書かれているが、個々の倍率であったりして、相互の大きさがわかるように書かれていない。 |
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B | 動きの激しいゾウリムシやミドリムシなどの観察では、その動きについていけない。プレパラートの水の上下に動く場合はとくに観察が初心者にはむずかしい。→ 顕微鏡の視野の操作がむずかしい。 | ||||
C | 小さな生物がいる水をどこから採取してきたらよいのか、わからない。 | ||||
D | どのように観察を進めたらよいのか。 | ||||
E | 観察結果をどのように記録したらよいか。→ そもそもスケッチは無理である。 | ||||
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2 対策と方法・・・市販のプレパラードを活用して、まず、慣れる | |||||
◆観察を学習する順序 | |||||
@ | 指導者の提示 | 子供の観察意欲の喚起 | |||
↓ | ※VTRでもよい | ※右のような顕微鏡があれば・・・ | |||
A | 市販プレパラードでの観察 | ![]() |
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↓ | 〇プレパラードを使って、対象物を確認、特定する。 | ||||
〇顕微鏡の操作に慣れる。 | |||||
B | 採取した水を観察 | ||||
↓ | 〇かなりの時間がかかる | ||||
〇プレパラード作り | ※まだまだ価格が高い →VTRでもよい。 |
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C | メダカが生育している水を観察 | ||||
Bと同じ水になることも | |||||
↓ | 〇長期間飼育している水槽の水 | ||||
D | 記録・確認 | ||||
〇スケッチするのでなく、教科書の図と比較・確認 | |||||
E | 発展学習(煮干しの観察) | ||||
〇 | 煮干し(カタクチイワシ等)を湯に浸し、身を柔らかくする。 | 〇海水産の珪藻のなかまや甲殻類、その幼生等が観察できる。 〇パイプ洗浄剤等を用いて肉質部分を溶かし、その後水洗いをよくしてから、観察するとより鮮明に見える。 海の微生物と小魚、小魚と小魚を食べる大きな魚…、 このような関係から生物のつながり(食物連鎖)を考える。 さらに、煮干しの産地、海域(包装紙に表示)が異なれ ば、その煮干しの食べた微生物の種類はどうなっているか、 また同一海域でも、漁獲した年度によって微生物の種類が異なっているかどうかなど、その「海域の環 境」の変化を考察することができる。(下図;煮干しの腸から出てきた内容物の一例) |
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〇 | 腹部を柄付き針や爪楊枝でほぐし、胃や黒い巻管状の腸(写真矢印)を取り出す。 | ||||
〇 | その内容物を、爪楊枝の頭などで柔らかくつぶし、水で薄め、スライドガラスにのせて観察する。 | ||||
3 プレパラードのつくり方・・・子供にとって、これもやっかいな操作 | |||||
スライドガラスに、採取した水を1滴たらし、カバーガラスをかぶせる。 そのとき、小さい生物が動くことができる空間(プール)ができている必要がある。 |
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ホールガラスは、その空間ができるが、全体が一定の深さにならないので、顕微鏡でのぞくと、生物が上下に動き、見づらくなる。 | |||||
→右の教科書D社のやり方も参考になるが、教師が準備しておく方がよい。ただし、観察する生物によっては適不適がある。↓↓ | |||||
〇 | このホールスライドガラスを用いると、ボルボックスはほぼ固定され、ゾウリムシは泳ぎ回る。 | ||||
〇 | ミジンコは大きいのでビニールテープを2枚重ねて少し深いホールにする。 | ||||
〇 | ミドリムシとイカダモは小さいのでホールスライドガラスを使わず、スライドガラスに直接カバーガラスをかけて観察する方が分かりやすい。 | ||||
4 水の採取方法・・・どこのどんな水を採取すれば、水中の生物が観察できるか。 | |||||
◆ | 水草や泥、小石などに付着している微生物を採集する。 | ||||
@ | 水草を採り、容器の水の中で軽くしごいた水を観察する 。 | ||||
A | 水草の根毛や茎・葉などや藻類の一部を実体双眼顕微鏡で観察する。 微生物のいる部分をさらに顕微鏡でみる。 ※付着性の原生動物が多い。 |
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B | 水底の朽ちた葉や泥の表面を大型のピペットで吸いとり観察する。 | ||||
C | 表面がぬるぬるした茶系の小石に水をかけ、歯ブラシでこすり、洗い水をとり、観察する。 | ||||
D | 水槽のガラス面を歯ブラシやガーゼ等でこすりとり、シャーレに洗い落として観察する。 | ||||
(C、Dでは珪藻けいそうのなかまが多い。ゆっくり動く微生物も多い。 | |||||
E | 冬場に、田んぼの稲株を水の入った皿に入れておく。2週間ほどしたらその水を観察する。原生動物が出現することが多い。 | ||||
F | 池や水槽の中に、スライドガラスをクリップで挟み、ぶら下げる。 2週間ほどたったころに、スライドガラスの片面はぬぐい、もう一面の方にカバーガラスをかけ、観察する。珪藻のなかまが多くみられる。 |
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◆ | 手づくりのプランクトンネットを作製し、採集する方法 | ||||
A | 茶こしなどのフレーム(枠)を利用する(図4のB) | ||||
a 材料 茶こしや味噌こし(百均ショップ)、古いストッキングナイロン製布(手芸用品店)、小びん(フィルムケース、調味料瓶)輪ゴム |
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b 作り方のヒント 台所用品など身近なもので工夫する。茶こしにストッキングをかぶせその下部と小びんを輪ゴムなどでつなぐ |
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B | 洗濯機のクズ取りネットなどを代用する | ||||
材料 クズ取りネット(百均ショップや専門店)、小びん(軽いときは重りになるもの)、棒(1〜2b)、ヒモなど |
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作り方 クズ取りネットの底の部分を切り、小びんとつなぐ。重りを付け、棒や釣り竿にヒモで結び、水中に入れてゆっくり曳く。また、バケツなどで汲み上げた水を、直接クズ取りネットの上から注ぐ方法でも良い。 |
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C | 不織布で濾過する方法 | ||||
不織布(畑の畝の覆布)は細工がしやすい材料で、図4のA のようにあらかじめプランクトンネットの形に裁断して、テープ等で不織布を接着して作る。また、図4のD ように、大きめのザルやバケツを用意し、その上に不織布をかぶせ、池・川の水をヒシャクやバケツに汲んで上から注ぐ。数回注いだあと、底付近の不織布上の水をピペットで集める。 | |||||
@ | ふたのある小びんならば、小びんを取り外しができるように細工できる。ふたに大きめの穴を開け、 そのふたと小びんの間にストッキングの下部を挟み込み、つなぐようにする。 |
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学校のビオトープ、田んぼ、池、川等。水深が浅いときは、泥水などが入らないように、ヒシャクやバケツに汲んで、そこからネットに注ぐようにする。 採集の際に、日時、場所、天候、水流、透明度、水温、PH などを記しておくと、後で役に立つ。 |
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5 観察生物の培養 | |||||
A | ゾウリムシの培養と観察 | ||||
@ | 培養 「市販のミネラルウォーター(軟水)」500mlに、「豆乳」0.47mlを加えた培養液と「市販のミネラルウォーター(軟水)」450mlに「緑茶」50mlを加えた培養液を用意し、それぞれにゾウリムシを 加えて、20℃で、約10 日間培養すると、高密度に増殖するので、それを用いて行動の観察をした。 |
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A | ゾウリムシの行動の観察 きれいな木綿糸を用意し、それにあたって動きを変える様子を顕微鏡で観察する。 |
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B | ゾウリムシの内部構造の観察 時計皿に高濃度に増えたゾウリムシを含む培養液1mlをとり、ポスターカラーを加えて10 分後、 運動停止液(0.001M 塩化ニッケル液)1mlを加えると、動きを止めるので、内部構造を観察した |
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B | ミドリムシの培養と観察 | ||||
@ | 培養 〇汲み置き水でハイポネクスを1000倍に薄め培養液とする。 〇空きビンに培養液を深さの8割ほど入れミドリムシを移す。 南向きで直射日光の当たらない明るい所に静置する。 |
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6 その他 | |||||
A | ゾウリムシなどよく動くものは、顕微鏡の視野からすぐ外れる。動きの早い生きものは動きをおそくすると見やすくなる。 | ||||
@ | もっと簡単なのは,スライドグラスの上の池の水が乾燥しかかった所を見る方法です。 | ||||
A | 植物繊維(綿やティシュペーパー)をほんの少し入れ、動きを弱めて観る方法の他に | ||||
B | メチルセルロースという白い粉末に水を適当に加えると(2.0〜2.5%溶液),どろーっとした液になります。その液を少しスライドグラスにのせて,池の水にまぜてやると粘り気のために生きものの動きがおそくなる。粘り気の加減は加える水の量で調節する。 メチルセルロースは冷水によく溶け、作る際にできる気泡は、時間がたつと消失する。 塩化ニッケル水溶液(0.05%)を用いる方法もある。 |
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