光弾性に関する実験(OHPにおける利用)
 力による物体の変形(ひずみ)を視覚的にとらえる方法として、光弾性の実験があり、教科書等に載せられている。しかし、写真では、その原理すらわからない子供たちにとって、到底、力の加わり方がどのようで、その結果、どのような変形が見られていくのか理解できない。
 つまり、その過程を力動的に示してやらなければ、写真の意味は全くわからないのである。
 そこで、その過程を観察するために、OHPを利用して、次のようにしてやると「力」の一つのイメージ化を図ることができる。 
 
1 開発にあたり、特に苦心したこと   
 OHPを使ってのこの方法は、すでに知られているが、意外に利用されていない。その最大理由は、テストピースの入手、または作成の困難さにある。
 そこで、このことの解決を主目的とし、以下に問題点とその解決策をまず概略説明しておく
@ テストピースの製作
  従来、エポキシ樹脂が使われていたが、この入手が困難であり、かつ高価である。
  → そこで、アクリル板、または、ポリカーボネート板を使用する。

A テストピースに力を加える、いわゆる加圧装置(仮称)の製作
  OHPのステージの上で、うまくテストピースに力を加えるには、それなりの装置を製作しないと、よい結  果が得られない。(写真1)

B OHP装置の偏光面を見つける
  ステージに偏光板をのせ回転させると、偏光板の置き方でスクリーンへの通過光のようすが変わることから、OHP装置そのものにも偏光面があるらしい。よくわからないが、
 フレネルレンズのせいらしい。
 そこで、2枚の偏光板(偏光子と検光子)とも回転できるように製作し、テストピースを2枚の偏光子の間において、一番よく光弾性が見える位置関係を見つける必要がある。

C もう一つのテストピース(第2検光子と呼んでおく)
  エポキシ樹脂では、この方法は必要ないが、ここで紹介する樹脂ではこの方法(図12)で、色があざやかに見られるようになる。
   写真5と写真6を比較していただきたい。
   ※このことが、今回の開発のキーポイントである。
 
       
2 加圧装置(しめ装置)の製作  
   OHP上で、テストピースに同一平面上で力を加えるには、図1のように手で行うよりは、きちんとした加圧装置を作った方がよい。
       
 (1) しめ装置本体の製作
  @ まず、図2ように、角材で枠を作る。
  A  このとき、4つの角材の組み方に注意する。力を加えたとき、はずれないような組み方をする。
  B あける穴の位置に注意する。
  C 図3のように、2枚のベニヤ板を用意し、それぞれ穴をあける。
下の偏光板−偏光子をおさめるところである。
  D  図2で組んだ木枠と、図3のAとBを接着する。
     
     
  加圧部は、写真2や図5のように、2本のネジ棒が加圧板のレールになるように作る。   
加圧板とネジ棒とは、2つのナットで締めて固定する。
木枠の9mmφの穴は、8mmネジ棒がスムーズに通るようにする。
蝶ボルトを通して加圧できるように、木枠の内側にナットを埋め込んでおくとよい。
 I 加圧板の蝶ボルトがあたる所には、うすい鉄板をはりつけておくとよい。
        
         
 (2) 検光子保持装置の製作     
       
    写真3 検光子保持装置   
@ 写真3、及び図7のように、偏光板 (検光子)や第2検光子(プラスチック板)を保持する部分を作る。
図7のように、それぞれ2枚のベニヤ板を貼り合わせて作る。
 貼り合わせたら、それぞれ、支持棒(ネジ棒)が通る穴をあけ、図8のように組み立てる。
     
 (3)偏光子、検光子の製作   
  まず、テストピースの下に置く偏光板(偏光子)を作る。
直径18cmの円盤状に作り、しめ装置の18cm穴にはめ込む。
  A 次に同じように、直径12cmに偏光板を切り、リング状のアクリル板に瞬間接着剤で貼り付ける。リング状のアクリル板に貼り付けなくてもよいが、貼り付けた方がしっかりする。
  B 第2検光子をテストピースを切り取った残りのポリカーボネート板から作る。
必ず、テストピースと同じ板から作らなければならない。ただし、ポリカーボネート板をテストピースに使用するときのみ。
       
   写真4
         
 (4) テストピース はねあがり防止装置
    テストピースに力を加えていくとテストピースが跳ね上がってしまうので、それを防止するための押さえが必要である。
図10では、テストピース下の偏光板をキズつけないように、まず、3mm厚のアクリル板(24×24)をしき、それに断面がクランク型のアルミニウム棒をネジでとめ、テストピースを跳ね上がらないように押さえている。
  
   
3 テストピースの製作  
  @ 使用するプラスチック板  
    アクリル板 透明
  5mm厚
  30×30cm以上
ポリカーボネート板  透明
  5mm厚
  30×30cm以上
 
  A プラスチック板の切断
    回転歯のこ、糸鋸を使えばできるが、加熱して、歯に溶けたプラスチックがつきやすいので、注意を要する。
また、ポリカーボネート板は、傷つきやすいので取り扱いに注意する。
  図11のように、いろいろなテストピースを作る。
4 使い方    
   普通は、2枚の偏光板(偏光子と検光子)の間に、テストピースを置き、検光子と偏光子のどちらかを回転させて、2つの偏光板の偏光面が直角になって、画面が暗くなるところでとめ、テストピースに力を加えていけば、ひずみに応じて縞模様が見られる。
しかし、OHP上で、きれいな縞模様を見るためには、OHPのフレネルレンズの偏光面(?)を見つける必要がある。 
  B そこで、図12のCのような、セロハンテープをたくさん貼ったテストピースを用意し、それを偏光板の間に入れて、直交した2枚の偏光板を同時に回転させ、セロハンテープの色模様が一番きれいに見えるところをさがす。
  C それから、他のテストピースを入れ、力を加えれば、縞模様が一応見られる。
  D ポリカーボネートのテストピースでは、さらに、図12のBのように、テストピースと同じ板からとった第2検光子を入れ、回転していくと、角度によって、一段と実にあざやかな縞模様が見られ、力の加わり方がよくわかる。
なぜ、第2検光子をこの位置に置くと、色が見えてくるのか、理由はわからない。
       
5 使用結果    
     
    写真5 ポリカーボネート板 写真6
第2検光子を入れるとあざやかになる。
       
6 参考資料 (ポリカーボネート)     プラスチックの実際知識:東洋経済より
    ポリ炭酸エステルであり、工業材料用プラスチック(エソジニアリソグプラスチックスとよんで いる)として機械的強さが特にすぐれている(引張り強さ820kg/cm2,衝撃値900cm・kg/cm2).  ビスフェノールA、1モルと、炭酸ジブチルエステル2モルとを加え、触媒としてテトラブチル チタン酸エステルTi(OC4H9)4を少量加えて、窒素気流中で200℃以上で反応させる。
 減圧で反応させるとブタノールが回収されてポリカーボネートができる。この場合の反応は前節 のポリエチレンテレフタレートの場合と同様である。
 ビスフェノールAは、後で述ぺるエポキシ樹脂の原料でもある。フェノールとアセトンから作られる。
     
    炭酸ジブチルエステルは、次のようにして作られる。
      
    ポリカーボネートの合成反応は、次式にしたがう。  
    
    ビスフェノールAの代わりに、ほかのフェノールを使うこともあるが、ビスフェノールAを原料 としたものが多い。融点230℃、熱変形温度120〜140℃である。機械的強さが大で耐水性もよい。  耐薬品性は、酸に強く、アルカリには弱い。脂肪族炭化水素、高級アルコール、油脂には安定で あるが、それ以外の有機溶媒に溶ける。
  特に耐衝撃性が大ぎく、弾性率なども大で金属材料に匹敵している。表11.8を見られたい。
    
   耐紫外線性のよいプラスチック屋外で10年間ばくろしても機械的強度は低下しないともいわれている。
 プラスチックは一般に耐紫外線性が小さいので貴重な存在であろう。
 ポリカーボネートは、エンジニアリングプラスチックとして種々の機械部品、計器のカバーやハ ウジングなどに利用されており、電気絶縁性、強度、耐熱性、透明性、寸法安定性などの要求され る各種用途に広く用いられている。
 また、フィルムやシートとしての利用も多くなってきた。