電気=電気エネルギー(子供の先入観)ではない。
 電力を指導するとき、子供たちに次のような状況があることを考えて指導することが大切である。
 
◆ 電流=電気エネルギーの先入観をもつ子供が多い。
   電熱線に電流が流れれば発熱し、モーターに電流が流れれば仕事をする。したがって、電流の大きさそのものが、電気エネルギーの大きさに相当するという先入観をもっている子供は意外に多い。
   電流×電圧、すなわち電力がエネルギーであるが、先入観が強いので、電力の学習直後は、理解を示すが、時が経つと再び電流=電気エネルギーと答える子供が多い。
   このことを確実に指導するには、電流が大きく流れても、発熱量や仕事量が小さい例を具体的に示すことが大切である。(しかし、これも、なかなかむずかしい。)
   例えば、
  導線に電流が流れても、ほとんど発熱しない。 
  仮に、水流モデルで考えると、水車をまわすエネルギーは水量だけでなく、水流の速さも関係あること。
 
◆ 電力の概念は、実験の結果から定義され、理論的には説明されていない。
   電力の概念を、もし、理論的に説明するとなると、これは、中学生にとってはなかなか理解できにくいものとなるが、指導側が一応用意しておいてもよい。
   導線に電流を流すと、電子が電源の−極から+極に移動する。これは、物体が重力の場で落下するするのと対照できる。
   物体は落下するとき、外部に仕事をすることができる。例えば、ひもがついていて軸で巻き上げられた物体は、落下するとき、逆に軸を回転させるという仕事をすることができる。
   同じように、電子が電圧のあるところを移動するとき、仕事をすることができる。例えば、電子が抵抗の大きいところを移動するとき、電源が電子をひっぱって動かした仕事の分だけ、エネルギーは抵抗の分子に与えられることになり、分子は激しく振動させられる。これが発熱である。
   その振動の激しさは、重力に相当する電圧が大きいほど、電子の量が多いほど激しい。だから発熱量は電流と電圧の積が大きいほど大きくなるのである。
◆ 「電力」という用語からくる誤解
   「エネルギーとは、仕事をする能力」と学習していても、子供の中には、「エネルギー」 = 「力」 を連想する者が意外と多い。