うでの筋肉モデルづくり
1 「腕の骨と筋肉」の教具の問題点・課題と工夫(筋肉のはたらき 動く力こぶの模型作り
 小学校4年の骨と筋肉の働きの学習において、
うでの「筋肉モデルづくり」が行われる。
 市販教具もあるが、次に述べる因果関係が逆になっている
 
 @ 市販の教具も、児童がつくり教具も、ほとんど、
 タイプT
   
 A 腕を曲げて      B 筋肉が盛り上がる(縮む)

  となっている。これは、明らかに、因果関係が逆である。
  これでは、骨が動くのには、筋肉は不要になってしまう。正しくは、 
 
 タイプU
   B 筋肉がふくらむ(縮む) 
  A 腕が動く(曲がる)(伸びる)
 A したがって、盛り上がり縮む素材をさがす必要がある。
   実際、人体ロボットでは、圧縮空気を吹き込むと縮む素材が使われているようである?
  →野菜や球根入れる棒ネットと、うすいポリ袋を使っての教具が、おもちゃとして、
    2010年、「青少年のための科学の祭典 2010」で、
    綿谷真理子氏が「筋肉のはたらき☆動く力こぶの模型作り」として紹介されている。
 
2 「筋肉のはたらき☆動く力こぶの模型作り」(綿谷真理子氏) の模型 
3 「筋肉のはたらき☆動く力こぶの模型作り」(ozuma氏) の模型
 綿谷氏のものは、一部の理科メーカーでセットとして販売されているが、もう少し身近な材料でつくれるようにと
ozuma氏が工夫し、ネットで紹介している。
           http://ozuma.o.oo7.jp/works/museum/kinniku/
しかし、綿谷氏とozuma氏とでは、ひじ関節を木でつくるか、ストローでつくるかの違いで、
 筋肉部分を、棒ネットとポリ袋でつくるのは、同じである。
子供たちには、一見、ストローでつくる方が簡単に見えるが、実際につくってみると、結構、むずかしく時間もかかる。
そこで、後述するが、関節部分は、綿谷氏の考えを採用し、木ではなく竹ぐし(24cm)を使うことにした。一応、ozuma氏の方法を紹介しておく。
 
◆ ozuma氏の模型のつくり方
 (1) 「骨と関節」の部分をつくる。(図1、2、3) 
 
 
 (2)「筋肉」の部分をつくる。(図4)・・・これは、どの模型も共通(棒ネット筋肉と名付けておく) 
 @ ポリ袋A(12×16)の隅に穴をあけ、ストローを通し、その部分をセロハンテープで固定し、
  空気がもれないようにする。
 A棒ネットを、約17cmと20cmの2つに切り、片端をまるめて、白いビニールテープでまく。
 (白は筋肉の腱をイメージ)
 
 B棒ネットに、@のポリ袋を入れる。
 Cポリ袋Bについても同じようにする。
 ◆「手」の絵をはりつける。
  厚紙に「手」を形取った紙をつくり、ストローが2本の方に、はりつける。
4 市販教具・・・「腕の骨と筋肉の動き」
 どちらも、タイプTの模型であり、骨の動きと筋肉の動きの因果関係が逆になっている。
しかし、子供が自分の体の動きを観察した後は、この模型のようなとらえをする。
なお、どちらも高価であり、子供一人一人の手にわたらない。
5 [関節」の作り方
 「関節」のつくり方を、もう一度、児童がかかわる視点から整理し、さらに、他の方法も考えてみた。
 それぞれに長所もあり、短所もある。
 
 (1) 「関節と骨」を、「木」でつくる。(綿谷氏)
  ・細長い、棒状の木2枚か、3枚を合わせ、関節にあたるところに穴をあけ、カシメでとめる。
   〇 しっかりできる。
   × 子供には製作が無理。子供一人一人となると、教師の事前準備が必要。
 (2) 「関節と骨」を、ストロー3本でつくる。(ozuma氏)(前述の図1、2、3)
・ 前述した方法でつくる。(図1、2、3) (「ozuma関節」と名付けておく)
   〇 身近なものでできる。
   × 関節部分は、簡単そうに見えて、子供がつくるには、時間がかかる。教師の事前準備が必要。
   × 関節部分の穴にあたる部分が、両方から引っ張られ、回転が不安定になる。
   × 関節部分の穴に通すストローが、10cm以上ないと、筋肉部分が、わきにずれる。
 
 (3) 「関節と骨」を、ストロー3本でつくる。(「ストロー関節」と名付けておく)
  同じく、ストロー3本でつくる。
  (普通サイズ6mmφ 2本、太いストロー12mmφ 1本)でつくる。
  @ 6mmφの2本をセロハンテープで束ねる。束ねるところは3カ所   
  A @を太いストローに差し込む。(右の写真)
  〇 子供でも簡単にできる。事前に教師が加工しておく必要がない。
  × 関節部分(ストローの曲がる部分)の曲がる方向が、不安定。
 (4) 「関節と骨」を、竹ぐし(バーベキュー用)3本でつくる。
  @ 約24cmの竹ぐし3本をセロハンテープで束ね、穴をあける。
  A 3本の穴にネジなどを通して、回転できるようにする。
  B 竹ぐしのとがった方を、約1cm切る。
    (前もって切るより、ここで切る方が、長さがそろう)
   〇 関節部分の曲がる方向が、安定している。
   × 子供には製作が無理。教師の事前準備が必要。
 
 
6 「筋肉」の作り方    
◆タイプT の 「筋肉」を、スズランテープでつくる。
   (「スズラン筋肉」と名付けておく)
 
 @ 赤色のスズランテープ(荷造り用平テープ)約160cmを、
  3つ折りにし、約20cmの束をつくる。
  考案者は、80cmを2つ折りとしているが、
  ふくらみが足りない。
A 「スズランテープ」を、切り裂く。
 B 両端をセロハンテープで束ねる。
  〇 身近なものでできる。
× 子供には、製作に時間がかかる。教師の事前準備が必要。
  × バラバラにふくらみ、筋肉の「弾力」のイメージに乏しい。
  
◆タイプT の「筋肉」をポリテープでつくる。(菅原氏)
             (「テープ筋肉」と名付けておく)
 
 @ クリアーホルダーを、テープ状(長さ約20cm、巾1cm)に
   切る。2本用意する。
・別紙の「筋肉テープ」を赤色A4紙にコピーし、ラミネート
   加工して、1cm巾に切るとよい。
・骨の両側につければ、筋肉ののびちぢみが見られる。
  〇 筋肉の「弾力」のイメージがよい。
△ 子供には、製作できないが、教師の事前準備しておけば、
    骨には、とりつけが簡単。
△ テープの部分を手で持ち上げれば、タイプUの筋肉にもなる。
  × 「筋肉」が、薄っぺらと、誤解される。
 
 
◆タイプU の 「筋肉」を、棒ネットとポリ袋でつくる。
   (「棒ネット筋肉」と名付けておく)
 
 
 @ 作り方は、前述の写真(図4)を参照(綿谷氏とozuma氏とは同じ)
  〇 「筋肉」のふくらみによって、全体の長さが短くなるようすが実感できる。
  △ 授業の中で、時間的に、子供には製作がむずかしい。教師の事前準備が必要。
  × 「筋肉」が、空気の出し入れで、ふくらんだり、ちぢんだりすると、誤解される。
 
 
7 授業での使い方 
 
 
8 今後の課題 
 @ 「骨と筋肉」のもけい(モデル)づくりは、いずれの方法でも、子供の製作能力、授業時間を考えると、
  どうしても、教師の事前準備が必要である。

 A したがって、教師にとっても、準備が簡単な方法を、授業では選択したい。
  その意味では、現時点では、「ストロー関節」「テープ筋肉」「棒ネット筋肉」が適当といえる。
   しかし、これらも、かなりの労力が必要であろう。

 B 子供たちに、因果関係の正しい科学的理解をはかるには、教師側の努力が必要。

 C とかく、教科書の説明や、調べ活動だけに終わりがちな「体の動き」を、モデルづくりを行うことにより、
  子供たちが、興味関心をもち、「人体のしくみ」のふしぎさ、たくみさを、深く理解することにつながると考える。

 D 今後は、ロボットの開発ともなって、よい素材が利用できると考えている。