U 研究論文のまとめ方
 研究論文の問題点
 @ 研究のまとめに一貫性がない。  ○研究論文の基本様式
 ○研究目標・仮説の観点に沿った記述
 A 研究の評価が不明確  ○客観的に評価していない。
研究論文の基本的様式
  ※論文の種類(実証論文、事例論文、調査研究など)によって異なる。
一般的には
県教育奨励論文
研究主題・題目
 1 研究目的   
        (はじめに)
 2 研究基盤
 3 研究目標  (研究のねらい)
 4 研究仮説  (仮説設定せず)
   ○研究の全体構想
 5 研究方法
 6 研究結果
 7 考察
 8 結論
 9 引用文献
 10 資料 
 1 研究題目 
 2 研究目的
   ○研究基盤、研究目標
 3 研究方法
   ○研究の全体構想
   ○研究仮説
   ○研究方法
 4 研究経過(研究結果)
 5 研究成果
   ○考察(評価)、結論、今後の課題
 資料(別添)B4判20枚以内 
1 研究主題(研究題目)
  @ 研究内容がわかるような表現にする。
   ・「○○を利用した○○方式の学習指導とその効果」
   ・「気楽に作文を書く子を育てるには」
  A 副題(サブタイトル)をつける場合もある。
   ・年度別に追求する方向が深まる場合
   ・教科別、教材別、研究方法別
2 研究目的
この研究は、何のために行ったのか、または、この研究を何の役に立てようとしているか、研究者の意図を明らかにする。記述する内容と順序は、
 @ 問題の背景 「○○指導の背景」 
 A 問題の現状 「○○指導の現状」
 B 研究の目的 
※奨励論文では、この部分が長いと、読者に飽きられてしまうので、簡潔に記述し、現状等(実態の把握)は、資料の方で詳しく述べる。
3 研究方法
 この項で大切なのは、だれでもいつでも、どこでも再試行できるように記述することである。学習指導の改善の研究では、次のことを書くのが普通である。
 @ どんな指導内容のことを
 A どんな学習過程(授業構想)で指導したか。
 B そのために、事前・事後の準備をどのようにしたか。
 C 効果判定(実践の評価)のため、どんな方法をとったか。 
 県奨励論文では、ここに次のことを書く 
  ○研究の全体構想 ‥‥ 概略でよい。詳しくは資料に示す。
  ○研究の仮説 ‥‥‥‥ 具体仮説を設定する。
  ○研究の方法 ‥‥‥‥ 特に、評価の方法を明確にする。 
4 研究経過
 この項では、一般的には、実践していった事実を述べるだけで、推論したり、意見を述べたりしない。
 しかし、論文によっては、経過・結果を記述して考察を加え、新たな課題を見つけ、仮説をも修正しながら記述することがある。
 書き方としては、
 A 実践の事実の記述のみの場合
 B 実践の事実に考察を若干加えていく場合
 C 実践の事実 → 考察 → 新たな課題・問題
        → 研究計画(仮説)の修正 → 実践を繰り返す。
 D 研究結果が多い場合は、資料にそれを載せ、論文の本文には、経過の概略と考察を記述する。
    ※県奨励論文では、B、C、Dのように記述していく。多くは、Dの様式になる。
経過・考察の記述で注意すること 
@ 実践の事実を生のまま載せない。
  研究主題、研究仮説の観点に立って記述していく。
A 研究経過は、図、グラフ、写真等を活用するとわかりやすく、読みやすい。
 しかし、特に写真等は、あまり多用しない。
5 研究成果(考察、結論、まとめ)
 研究経過・結果に対する考察として、研究者の見方・考え方を記述する。
大切なことは、できるかぎり客観的な根拠や証拠を示して意見を述べることである。
 教育研究の評価は、「子供の姿」を通して行い、数量化できるところは、数量で示し、客観的に評価していく。(このことが欠けている論文が多い) 
 @ 実践を分析し、因果関係、相関関係を根拠をあげて述べる。
 A このような結果になった背景には、どのような原因があるか、証拠をあげる
 B 自分の得た結果と他の研究者の結果とを比較する。
 C 結果が研究仮説にYesなのか、Noなのか証拠をあげて述べる。
 D 得られた結果・考察に都合のよい新たな研究仮説を設定する(今後の課題) 
6 「資料」について
 資料は、論文の本文を補うものであり、本文のように文章体で書くこともあるが、わかりやすくするには、図、表、写真等を使って一目で見られるように工夫する。
 その場合でも、研究で得られた事実を、生のまま、そのまま載せるのではなく、研究目標や研究仮説の観点に従ってまとめたものを載せる。
載せる資料の内容 
  研究題目
 @ 資料の目次
    資料1 ○○○○ ‥‥‥‥‥ 1
    資料2 △△△△ ‥‥‥‥‥ 3
 A 研究の概要(今までの研究の経過を概略記述する)
 B 研究の全体構想(図)
 C 実態の把握や研究評価のためのテスト問題やアンケート問題
   ○子供の感想文や意識調査結果
   ○子供の作品の写し
 D 研究方法で特に工夫したもの(図、写真)
 E 実践の様子を示す写真
 F 学習指導案 
  ※資料の表紙は、厚いものを使うようにしたい。
表 の 形 式 
  ○数字のまとまりが見えにくくなるので、表にできるだけ罫線を入れない。
グラフ の 形式
  ○事実の特徴や変化が一目でわかるように、グラフ化する。 
写 真 の 形 式 
  ○子供の表情がわかるようにしたい。(子供の後ろ姿が多い)
研究が数年次にわたる場合 
次のように表にまとめて記述するとわかりやすい。 
    研究仮説 及び 研究経過  研究の評価 残された課題
第1年次        
第2年次      
           ※第1年次から第2年次の流れをしっかり受けとめ、明確にしたい。
  (例)<中学校における国語教育としての書写指導に関する研究>
1 研究の目的 
  (写写指導の背景) 
 戦後の国語教育にあって、問題視されているものの一つに児童・生徒の書写力の低下の問題がある。「書写指導」は、戦前にあっては「書き方」 とか「習字」とか呼ばれたこともあるが、いずれにしても戦前から一貫して続けられてきた。
 しかし、戦後の書写指導は、学習指導要領の改訂により国語科の一領域として位置づけられたことや、あるいは、国民の文字に対する意識の問題など、いろいろな関係から十分な指導がなされたとはいえず、したがって、児童・生徒の書写力が低下したため、文部省は昭和46年4月から小・中学校の書写の指導を強化し、小学校3年生以上には、「毛筆書写」を必修として義務づけたほどである。
  このように、小・中学校で「書写指導」が重要視されたのは、国語を尊重するうえから、文字に対する意識を高め、正確に書く能力をつけるためであり、「毛筆指導」は、その基礎を培うものとして義務づけられたと考えられる。
   (書写の現状と指導)
 しかしながら、各学校の書写指導への取り組み方には、幾多の隘路から必ずしも満足なものとはいえず、また、指導法などについても苦慮されているものの、その打開のための研究とか調査等もあまりなされていない現状である。
   (本研究の目的)
  そこで、この研究は、○○県の中学校における書写指導の実態を探ることにより、今後の中学校の国語科としての書写指導のあり方について、その基礎的資料を得るために行うものである。