若い教師へアドバイス「授業改善6つの視点」
1983年 
◆ 子どもの学習状況を見て・・・・ 
 子どもの学習状況を見つめるとき、授業以前の構えが問題になることが多い。
 しかし、事象の原因として、子どもが悪いと考えいる教師がいるとすれば、自分の指導の悪さを、さらけ出したことになる。
 授業改善は、教師自らの現象に対する原因の自己反省、自己改革こそが第一歩と言える。

 「近頃、子どもの学習態度が良くなった。」
 「やる気が出てきた」
 「学力が上がってきた。」
と、教師集団がささやく前には、必ず、子どもたちから

 「最近、先生方の授業の仕方が変わってきた。」
 「授業が楽しくなってきた。」
との、ささやきが聞かれるはずである。
 きめの細かい教師の気配り、手立てこそ授業改善の基礎と言える。
◆ 授業改善6つの視点・・・つぶやく前に
1 子どもは、「どうして用具の忘れ物が多いのか」と、つぶやく前に 
 @ 前日の帰りの会のときの連絡方法に問題がある。 
 A 次時の予告のとき、メモをとらせていない。
 B 子どもが時間割をどんなかたちでそろえているかの実態をつかんでいない。
 C いつも忘れがちな子どもに対する個別指導がなされていない。 
 D 特別な子どもに対する家庭の協力や、条件整備前にまで、手がうたれていない。 
 E 「連絡ノート」が決められていない。 
 F 連絡事項を、きちんとノートに書く指導がなされていない。 
 G 忘れ物を他人から借りて間に合わせていることを黙認している。 
 H 学校に、用具が置きっぱなしであっても、指導がなされていない。 
 I 親に協力を必要とするものは、口答でなく、文書で依頼したか。
 J 忘れ物を、電話で親にもってこさせる子どもに対する指導を適切に行っているか。 
2 子どもが、「課題をやってこない」と、つぶやく前に  
 @ 課題提示に、教師の手落ちがなかったか。
  〇 提示期日の明示   〇 具体的方法の指導不足
  〇 可能な分量 〇 提示日までの時間的なゆとり
  〇 本時や次時への関連性 〇 課題に対する採点の仕方の一貫性 
  〇 課題の生かし形  〇 能力差に対する考慮 
  〇 必修か自主的か 〇 やってこない子どもに対する指導の一貫性
 A 個別指導が欠除している。
  〇 家庭での学習実態の把握と改善の手がうたれたか。
  〇 能力的にみて、やれる内容はどこまでか。
  〇 「忘れました」に対する指導のあり方はこれでよいか。
  〇 課題をやるための条件整備(資料等の紹介、手がかりのヒント)
 B 子どもが、時間をかけてやるだけの価値のある課題だったか。
  〇 課題に対する子どもの必要感(課題に対する動機付け)
  〇 課題の子どもにとっての魅力
  〇 意図的で精選されているか。
  〇 やりとげた子どもへの称揚、忘れた子どもに対する指導
 C 授業でやりきれなかった内容を、安易に課題にしていないか。
  チャイムが鳴り、残った内容を「それでは、残りを今日の課題にします。」では・・・。
  〇 教師が身勝手すぎないか。子どもは、教えてもらっていない内容でぁるから、
    全員がやりとげることは望めないはず。
  〇 最も悪い課題の代表である。
3 最近の子どもは、「学習意欲がない」と、つぶやく前に  
 @ 教材研究の不足による、教師の自信のなさの表れ。  
  〇ノー準備      〇ノー構想 〇ノー精選      〇ノー手立て 
 A 教師自身が授業に対して燃えていない。  
  〇 教材対しての新鮮さをもっていない。(新しい教材解釈がない)
  〇 授業に対する自己主張がない。(自作教材、アイディアに富んだ手立てがない)
  〇 授業に対する自己主張がない(子ども一人一人に対する個別的愛情) 
 B 教師主体の教え込み中心の授業ばかりで、子どもが常に受け身になっている。  
 C 授業が一本調子で、山場がない、負荷がない。 
 D 子どもの意欲を盛り上げる教材の工夫・活用がない。 
 E 授業にグループ活動や、体験的・作業的活動の場がない。 
 F 授業が子どもにとって不消化になってきている。 
 G 教師の声が小さい。早口である。字がへたである。誤字、書き順が違う。 
 H 授業に個別化、能力差、よい意味での競争の要素がない。 
 I 授業に人間的なふれあいの場、人間性を育てる場がない。 
  〇 心のふれあい、心のむすびつきの要素。 
  〇 本音のぶつかり合い。 
  〇 打ち込める場、集中できる内容、助け合う場、成就感を味わう内容。 
4 授業で、「子どもの発表が少ない」と、つぶやく前に  
 @ 子どもが発表できる授業形態になっていない。 
  〇 一斉式講義授業   〇 教師のしゃべりすぎ
  〇 多発問   〇 板書の書きすぎ
  〇 正答主義。  〇 ゆとりのない、かけ足授業
 A 発問してから考えさせる時間が少なすぎ。 
 B 教師の発問内容がピンボケで、子どもにわかりずらい。
 C 間違った発表をすると、先生や友だちに笑われる。
 D 個性的な発表だと、生かしてくれない。 
 E クラスに、自由に発表出る雰囲気がない。 
  〇 学級づくり、仲間づくりができていない。
 F 授業中、「子どものつぶやき」の取り上げ方が、へたである。 
 G 教師の発問に、「問いの要素」が含まれていない。
  〇 疑問、矛盾、対立、葛藤、奇抜さ、などによる、子どものゆさぶりの欠如。
5 授業で、「注意力が散漫である」と、つぶやく前に  
 @ 授業に高まりがない、つまらない授業。 
  〇 張りのない教師の声。  〇 たどたどしい長い説明。 
  〇 講義式で一人言を言っている。 〇 子どもと、ひとみが合っていない。 
  〇 左手に教科書、右手はポケット。  〇 暖かい窓側に背をむけて説明。 
 A 授業に、「子どもと勝負する山場」がない。 
 B やる気を起こさせる動機付けがない。
 C 授業に、厳しさ、温かさ、感動がない。心のふれあいがない。
 D 個別指導の不足。 
 E 進み方が早いので、わからない、つまらない。
 F 授業中、特定の子どもを対象にしているか、あるいは、特定の子どもを野放しにしている。 
 G 日常の授業で軽視しているのでは。 
  〇 やりぬかせる。努力させる。集中させる。耐えさせる。
  〇 教師に目が集中する授業。
  〇 特定の子どもへの個別指導。 
6 授業で、「姿勢が悪く、さわがしい」と、つぶやく前に  
 @ 窓をしめきっているのではないか。 
 A 教師のきりっとした態度がない。
 B 授業の始めに、小言や説教をした。
 C 教師自身が授業にのっていない。 
 D ついてくる一部の子どものみ対象の授業。
 E 子どもの心理面を無視している。
 F 授業にスキがある。
  〇 教材解釈に教師自身の新鮮さがない。 
  〇 基礎、見本、要点がおさえていない。 
  〇 多様なメディアで勝負していない。 
  〇 教えたくてたまらないという教師のファイトの欠如。 
 G 「授業の基本は、まず姿勢から」の指導を、日常怠っている。
 H 子どもと、ひとみを合わせて授業を進めていない。