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相続は被相続人が死亡することによって発生します(民882)。
私たちは一人一人財産を持っていることがあり
ますが、それらの財産を自分の死後に親族などに受け継がせる制度を相続といい、民法で定められています。 相続の場合、受け継ぐ財産を「相続財産」といい、受け継ぐ人を「相続人」といいます。 亡くなって自分の相続財産を受け継がせる人を「被相続人」といいます。
そして、相続が生じると、被相続人の財産は借金などの消極的なものも含めて、自動的に相続人に受け継がれることになります(民896)。
- 被相続人とは相続財産について死亡した本人であって、その有する財産を受け継がれる人です。
- 相続財産がない場合:相続は問題なりません
- マイナスの相続財産がある場合:
相続財産がある場合:相続の問題が生じます。特に重要なのは借金など債務のある場合や財産家で分配の仕方でもめそうな場合の分配の仕方。さらには、事業を行っている場合の事業の継続の方法や相続税などの税法との関係です。問題の処理の仕方は農家・事業者・サラリーマン・年金生活の場合など、亡くなった方がどのような立場の人なのか、あるいはどの程度の財産があるのか、相続人にはどのような人が何人くらいいるのかによってケースバイケースです。また、相続は戦前の先祖の死亡時からの未処理の問題も含まれますが、ここでは最も新しい相続法での、大まかな考え方の順序や共通する部分について解説したいと思います。また、債務超過の相続財産の場合の相続人の対応の仕方で大きな借金を背負いかねず、とくに注意が必要です。
被相続人の住所は相続の処理について裁判所の手続きを利用する場合には管轄の基準として意味を持ってきます(民883・民訴5)。管轄とはどこの裁判所を利用できるかという基準のことです。
- 相続人とは相続財産を受け継ぐ人を言いますが、相続人になるのは大まかに言って、配偶者・子供(孫)・祖父母・兄弟姉妹(兄弟姉妹の子)です。その中で誰が相続人になるかについては民法に定めがあります(民887〜890)。
- 被相続人に配偶者があれば、配偶者は常に相続人になります。
配偶者はすでに離婚した人を含みません。
- 被相続人に配偶者があれば、配偶者と子供は第一順位の相続人として相続人になります。
前妻との子供も子供であることに変わりはありません。
また婚姻外の子供は認知がされていれば相続人になります。(相続分は異なります)
子が既に死亡し孫がいるときはその孫が代わりに相続人となります。((これを代襲相続といいます)
- 配偶者があるが子供がない場合は被相続人の父母などの直系尊属が第二順位の相続人として相続人になります。この場合は配偶者と父母などの直系尊属が相続人になります。
- 相続人に配偶者があるが、父母などの直系尊属がいない場合には兄弟姉妹が第三順位の相続人として相続人になります。この場合は配偶者と兄弟姉妹が相続人になります。
兄弟姉妹にすでになくなっている人がいれば、その子供が代わりに相続人となります。(代襲相続)
- 相続人がこのように定められていても、社会正義の観点から相続させるべきでない場合や被相続人の意思によって特定の者を相続人から除外したいという場合があります。そこで、民法は欠格事由(民法891)や廃除(892)という制度を設けています。たとえば故意に被相続人を死亡させて刑に処せられたものは相続人の資格を失う(981T)というように、資格を失う事由が定められています。
また、相続人になるべきものが被相続人に対して虐待をしたり重大な侮辱をしたりあるいは著しい非行があったりした場合は被相続人は裁判所に廃除の請求ができ、それをすることによってその相続人は相続人から除かれることになります(892)。
また、廃除は遺言によってもすることができます。
- 相続人がいない場合あるいは相続人全員が相続放棄をした場合にはどうなるか⇒相続人不存在という手続きによって相続財産の処理をしていきます(民951〜)⇒最終的には残余財産は国庫に帰属。(民959条)
- 法定相続分
相続人が定まったところで、ではそれらの相続人がどのように相続するでしょうか。
その基準が定められていなければかえって揉め事を増やすことになりかねません。
そこで、民法は法定相続分という形で相続分の割合が定められています(民900・901)。
- 配偶者と子の場合:2分の1ずつ
子供がすでに死亡しているがその子供がいる場合はその子供が親の相続するはずであった相続分をそのまま相続します。これを親に変わって相続するという意味で代襲相続といいます。
- 配偶者と直系尊属(父母):配偶者3分の2と直系尊属(父母)3分の2
- 配偶者と兄弟姉妹:配偶者4分の3と直系尊属(父母)4分の1
兄弟姉妹がすでに死亡しているがその子供がいる場合はその子供が親の相続するはずであった相続分をそのまま相続します。これも代襲相続です。
では法定相続分はまったく変更できないでしょうか。民法は法定相続分の不都合を変更あるいは修正するために3つの制度を設けています。それが、指定相続分・特別受益者の相続分・寄与分です。
- 指定相続分
民法上、法定相続分が定まっていても、被相続人はそれを遺言によって変更することができます。一般に遺言を書いておくというのは、法定相続分を被相続人の意思で変更するために行われています。ただ、被相続人も、相続人の相続の期待や生活のことも配慮しなければならないのではないかということで、遺留分を侵害してはならないとされています。遺留分とは相続人に残しておくべき割合のことです(民1028)。
- 特別受益者の相続分
相続人の中に、被相続人から、遺贈を受けたり、又は婚姻や養子縁組のため、あるいは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、その分を考慮せずに法定相続分のままに分配すべきとすると相続人間で不公平です。そこで、その分を考慮して相続分を定めるべきとするのが特別受益者の相続分の修正です(民903)。
- 寄与分
共同相続人の中に、被相続人の事業に関しての労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法によって、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときにそのものの貢献を無視して相続分を定めることも不公平です。そこで、その貢献をしたものの貢献の度合いを考慮して相続分を定めるべきとするのが寄与分の制度です(民904の2)。
- 相続分については基本的には相続人間で話し合いによって解決すべき事柄ですが、協議が調(ととの)わない場合は家庭裁判所の調停・審判などを利用することによって決めることになります。
調停は料金も安く、裁判のように堅苦しくありません。
- 相続人とその相続分が定まったとして、次に考えるべきなのが、相続財産についてです。
相続財産には何があるでしょうか。大きく分けるとプラスの財産とマイナスの財産が考えられます。
プラスの財産としては動産(骨董品・自動車など)・不動産(土地・建物など)・債権・有価証券・営業用財産・会社株式(持分)などが考えられます。マイナスの財産としては借金や連帯保証債務などが考えられます。 これらがすべて相続財産として分配すべき財産になります。
相続について考える場合にはどのような財産があるのかを正確に把握することが重要になります。
7.では分配の手続きはどのようにすべきでしょうか。 |
- それぞれの家族関係は相続ごとに一つ一つ異なります。たとえば被相続人の年齢・性別・財産の多寡・生前の暮らしぶりは人によって千差万別ですし、相続人の人数・年齢・収入・生活の様子なども事案ごとに様々です。画一的に分配することはかえって家族間の公平さを損なう事になりまねません。そこで、民法は「遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする(民906)」と定めています。
法定相続分は一つの基準にはなりますが、それにとらわれずにまずは話し合いで解決ができればそれにこしたことはないということです。
そして、話し合いが付かずに裁判所の判断で揉め事を解決しようとする場合でも、裁判所は906条によって、様々な事情を考慮に入れて判断すべきであるとしています。
- 具体的な問題点について
ここでは特に重要と思われる@不動産A債務B預貯金などC株式などについて解説します。
- 不動産:不動産の相続で重要になるのが不動産登記です。相続が生じた場合、分割協議が調った場合にその割合で登記することが一般的ですが、分割協議が調わない場合には協議がととのうまでの間、法定相続分の割合で登記することもできます。
- 預貯金:金融機関の様式による書面と押印を要求されます。
相続開始後に分割協議が調わない間は、預貯金を金融機関から引き出したり、解約することはできません
- 債務など:原則として借金など債務も相続人が承継します。
ただ、あまりに借金の金額が大きいときのために相続放棄や限定承認という制度があります。
- もし、プラスの財産に比較してマイナスの財産が大きくて、まったく相続したくないという場合は「相続開始したこと及び自分が相続人になったこと」を知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所に相続放棄の手続きをとれば相続しないことができます(民915)。
ただ、相続放棄の手続きをしながら、相続財産を処分してしまったという場合は相続放棄がなかったものとされます(法定単純承認といいます)ので、相続財産には手をつけないでいることが重要です(民921)。
- プラスの財産の限度でマイナスの財産を相続してもいいという場合は限定承認という制度があります。たとえば、いくらかプラスの財産が残るような場合にはその限度で借金も相続するという制度です(民922)。
- 株式など
被相続人が株を持っている場合はその株も当然に相続の対象になりますが、個人企業を経営して、その会社の株式を持っているという場合はその株式も相続の対象になります。したがって、会社経営者の場合は相続によって会社経営に少なからず影響が生じるということが避けられません。V
そこで、会社法の改正によって、譲渡制限のある会社では、予め定款で定めることによって、相続の場合に会社が相続人に対して株式の売渡しを請求できるとすることができるようになりました。
祭祀の承継とは祖先の祭祀を主宰すること、つまり先祖を供養することをいいます。
祭祀の承継は相続の中でも財産の承継とは少し趣が異なりますが、死者の霊を祭るという意味では精神的に非常に大事な事柄になってきます。
誰が先祖を祭るのかという点で相続人間で、もめることも珍しくありません
民法では系譜、祭具及び墳墓の所有権は、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継するとされています。ただし、被相続人の指定があるときは、その指定された者が承継することになります。
そして、慣習が明らかでない場合は家庭裁判所が定めることとされています(民897)。
死者の霊を慰めるという観点からは、その土地の慣習やだれが祭祀を行うのが適切なのかを考慮して、互いに譲り合ってことが必要になります。
- 遺言(民960)
上で、法定相続分を修正する方法として、遺言によって相続分を指定する方法があることを記載しましたが、
遺言ではそのほかに様々な事柄を決めておくことができます。遺言は被相続人が死後の処分をあらかじめっ定めておく方法として有効な手段です。また、適切な遺言を残しておくことで自分の死後に余計な争いを生じさせないことができます。
- 遺言に定めることのできる事項は民法に定められています。具体的には後見人の指定(839)・後見監督人の指定(848)・認知(781U)・相続分の指定と指定の委託(902)・遺産分割の禁止(908)。・遺産分割の方法の指定と指定の委託(908)・遺産分割の共同相続人の担保責任の指定(914)・遺言執行者の指定と指定の委託(1006T)・遺留分減殺の方法の指定(1034但)・相続人廃除の請求(893)・廃除の取り消しの請求(894U)・特別受益者の相続分の指定(903V)・遺贈(964)・財団法人の設立の寄付行為(41U)・信託の設定(信託法U)などです。
もっとも、法律で定められていないものでも、法律上の効果が生じないということであって、被相続人の意思として記載しておくことはなんら制限されません。
- 遺言の方法には、@自筆証書遺言、A公正証書遺言、B秘密証書遺言の方法があります。
- 自筆証書遺言とは遺言する人が全文・日付・氏名を自筆で記載して、押印してする方法です(民968)。料金はかかりませんが、全文・日付・氏名を自筆しないときは、遺言の効力を生じないので注意が必要です。
- 公正証書遺言とは公証人の面前で遺言の内容を口頭で述べることでする遺言です(民969)。料金がかかりますが、公証人の事前のチャックを受けますので、内容に問題が生じることは少ない、保管が完全というメリットがあります。
公証人のいるところを公証役場といいます。通常は公証役場に本人が出向いて作成嘱託をするのですが、病気などの理由で行けない時は公証人に出張してきてもらうこともできます。
- 秘密証書遺言とは自分で作成した遺言を公証人のところに持っていって、公証人の日付・遺言者の申述を記載して、公証人に署名してもらう方法です。自筆証書遺言と公正証書遺言の中間のような方法といってよいでしょう。
のような方法で遺言しても自由ですが、内容に不備があるとその遺言を利用することができなくなりますので、遺言する目的が実現できるように注意する必要があります。
- 遺言はありましたか?〜公証役場で検索捜してもらうことも出来ます。
- 財産は預金?債権?株?有価証券?不動産?
- 郵便局や銀行にはそれぞれ下ろす(解約)に必要な書類、分割協議書等が備えられています。
- その年度に収入のあった方は4ヶ月以内に確定申告を。
- 相続税は10ヶ月以内に申告を。
- 相続財産の不動産についてはその所在、存在が不明の時は、名寄せ帳取り寄せによる確定も。
- 不動産については評価証明書を取られることをおすすめ。
- 不動産登記の登録免許税はその年度(政策)によって異なることがあるので、要注意。
- 遺産分割協議書には相続人全員の署名と実印による捺印が必要。
- 相続人全員の印鑑証明書
- 不動産を相続し、登記をする場合、その相続名義人の住所証明書(住民票)
- 被相続人の生れた時から死亡までの戸籍資料等。
- 農地は相続人であれば農業委員会の許可が無くても(農業者でなくても)相続取得できる。
遺言に関して聞いてみたいというご相談はお気軽に・・・・ 無料でお相談にのります。
根本正子行政書士事務所 無料相談専用電話 =024−946−6782 HP http://www7b.biglobe.ne.jp/~nemoto-office/ |
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