SIGMA SD14の世界(1)

2008年から、SIGMA社のSD14という一眼レフカメラを使っています。

以前からいつも頭の隅から離れることなく、気になる存在だったのです。このホームページ中、「ミニミニ写真講座」の2004年度版にも、「理想のデジタルカメラとは(私論)」という項目を設けて、一筆走らせています。この時点で取り上げたのは、SD10でした。

春になって、突然SD14の価格が大暴落。株じゃあるまいし、やや失礼ですね。兎にも角にも、十万円そこそこで買えるようになってしまったのです。2003年からデジタル一眼を使っていますが、以前からのレンズシステムを生かすために、ペンタックス*istD、*istDS、K10Dと使い続けてきました。しかし、SD14の低価格化を前に、気持ちが動かぬはずがありません。

中古カメラ店を探しまくり、程度良好のSD14一台、50-150mmF2.8 DC EX HSMを入手しました。さっそくペンタックスK10Dとの比較のため、テスト撮影をしてみました。ただし、ペンタックスには50-135mmF2.8を装着しました。厳密には同じレンズでなければならないのですが、この際やむを得ない。
シグマから、ペンタックス用の50-150mmは発売されていない事情もありました。

色々な条件で撮影してみた感想は、以下の通りです。

(1)
色調が美しい。素直で嫌みのない、上品な色が出る。とくに白い色に、濁りがない。私は、野の花などの撮影が中心ですので、色調が気になる方です。SD14は、安心して使えるカメラだと思います。

(2)画像に芯がある。愚図愚図と崩れるような感じがない。レタッチソフト上に読み込んだ時に、解像感がしっかりしており、「はて、どこか手を入れる所はあるだろうか?」と思うくらいに、難しく悩むことのない綺麗な画像です。したがって、シャープフィルターをかけることもほとんど必要なくなりました。しっとり、どっしりした画像に、真の写真人なら感動するはずです。

(3)中間の階調再現が豊かで解像感も十分、芯がしっかりした画質なので、風景などの撮影に向いています。SD14のパンフレットに載っているようなポートレート系にも向いている。報道系の使用では、カメラの機能も含め、どうかなと思います。

(4)
ISO感度は、あまり高くできません。私は200で使いたいのですが、この設定では、ノイズが目立つことがあります。ノイズが著しく嫌いな人は、感度100か50にすべきです。暗いところ、光量の少ない状況での撮影には弱点がありそうです。

(5)データーの転送速度が遅い、と感じます。記録メディアの性能にもよると思いますが、ペンタックスより遅い・・。

(6)撮影したはずの画像が壊れていて、再生できないことが極稀にあります。画像の生成時か、あるいは記録時か、よく分かりませんが、せっかく撮った画像がエラーになっているのは、悲しい思いをします。

(7)何カットも連続してシャッターを切ると、これも稀ですが、カメラがフリーズすることがあります。私は、ゆっくり間を置いて撮影することで、この災難から逃れるようにしています。もしフリーズしたら、スイッチを切り、一度バッテリーの入れ替えをすると安定します。

(6)、(7)のような欠点は、カメラとして基本的にあってはならない
ことなので、SD15で改善されることを望んでいます。

ペンタックスの名誉のために一言。私は、ペンタックスが悪いと云っているのではありません。ずっとペンタックスを愛用ししてきましたし、今後も好きなカメラであることは変わりません。とくに一眼レフ入門者から、「お薦めの機種を」と聞かれたら、躊躇なくペンタックスK10Dの中古やK20Dなどを挙げるつもりです。個人的には、*istDS(DS2)が好きですね。


SD14のFOVEON X3とは

SD14が他のデジタル一眼レフと違うのは、FOVEON X3ダイレクトイメージセンサーという特殊な三層構造の受光素子を使っていることです。光の色情報を捕らえる方法が、他のカメラと根本的に違っているのです。

FOVEONの説明をする前に、フツーのデジタルカメラの受光素子と色再現の方法に触れてみます。とは云え、私はこの道の技術的専門家ではありませんので、不十分だったり、勘違いがあったり、間違ったりする可能性があります。その点、どうぞご容赦くださいますように。

(1)フツーのデジタルカメラの受光素子は、画素が平面の板状に水平に並べられています。1000万画素のカメラとは、一枚の板に1000万個の画素がある、という意味です。これを「ベイヤー方式」といい、四個の画素がワンセットになって光の色を捉えます。四個の画素のうち、二個が緑(G)を感じ、一個が青(B)を感じ、残りの一個が赤(R)を感じます。

(2)なぜこのような不可解な構造になっているかというと、「受光素子は、光の強弱を感じるけれど、色は分からない」という難問を抱えているからです。そこで考案されたのが、ベイヤー方式です。四個の画素をセットにし、二個はGを受け止めるフィルターをかける、他の一個それぞれにBとRを感じるフィルターをかける、こうして取り合えずRGBという三原色を生成します。

(3)これで色の問題が解決されたか、否です。一個一個の画素には、B、G、Rのどれか一色しか感知されず、光が持っている色をすべて受け止めている画素は一つもないのです。よって、セットになった四個の画素が協力し合って、お隣の画素が持っている色情報を使って、「オラほで不足している色は、こんなモノであろうかいな」と適当な色を加えてしまいます。

(4)たとえばGの画素は、隣のBとRから色情報を借りて、本来存在するであろうと想像されるBとRを、ある仮定のもとに演算して作り出し、自らの画素に付け加えます。これで、見た目はRGB三原色が揃った画素であるかのように見せかけるのです。演算によって作られた色を加算することを、補間といいます。

(5)1000万画素のカメラの場合、本当のGは500万画素、本当のRは250万画素、本当のBも250万画素しかない。これがベイヤー型イメージセンサーの実態なのです。ここまで書いてきて、私はストンと胸に落ちない違和感があります。RGBが揃ったまともな画素が一つも無い。四個の画素がセットになってこそ色ができるのですから、1000万画素といいながら、実は1/4の250万画素と表現するのが正しいのではないか・・。

(6)ベイヤー型は四個の画素がセットで一人前、ということが分かったのですが、ここで幾つかの問題が生じます。レンズを通って収束して来る光は、四個の画素上に寸分の狂いもなく且つ満遍なく焦点を結ぶのだろうか(画素は、一定の有限な面積があります。点ではありません)・・。四個の画素のうち、一個か二個にだけ光点が当たり、他の二個からズレていたとしたら、色の演算と生成はどうなるのだろうか・・。

(7)ベイヤー型の宿命として、高解像度を求められるような被写体(たとえば細い線が密接しているような物、規則正しく並ぶ格子状の物など)や明暗差の激しい条件で撮影すると、モアレと呼ばれる「色が揺れて崩れたような塊」が発生します。実際には存在しない色なので、偽色などとも言われます。これを云うのであれば、ベイヤー型の色は、大半が偽色ですけれど・・。

(8)以上の難題を解決するために、ベイヤー型センサーの前には「ローパスフィルター」が掛けられています。画像全体をわずかに滲ませます。モアレを防ぐために、光の高周波部分をカットし、低周波部分だけを通すフィルターです。高解像度を必要とする光は、最初から取り除いてしまう作戦です。と同時に、(6)で述べた問題も解決できます。四個ワンセットの画素に満遍なく、滲ませ拡散した光点を当てることで、色の演算に支障をきたさないようにします。

光を拡散するというのは、強いストロボ光をアンブレラやディフューザーなどで軟らかい光にしてしまうのに似ていますね。

(9)やれやれ、やっと問題解決か。と云いたいところですが、このローパスフィルターは、画像全体をわずかにボカし、滲ませる役割をしているわけです。せっかく高級、高価格、高性能のレンズを使って撮影しているのに、ボケた画像になっているとは・・。そこで、ベイヤー型カメラは、画像生成時のプログラムで、崩れた画像をシャープに見せるソフト的な処理をしているのです。しかし、そのソフト処理も完全に鮮鋭度を回復できるものではありません。

(10)私はペンタックスを使っていた時、「階調が軟らかく、デジタルは好ましい」と感じていたのですが、本当は、やや滲んだ画像を見て喜んでいたいただけなのかもしれません。恥ずかしい。ベイヤー型の画像には、どこか腰砕けのような質感や色調のヘンな所があり、レタッチで無理をしたりすると、ますます画像がいじけてしまう場合があります。注意が必要です。

FOVEON X3ダイレクトイメージセンサーの本題に入ります。

FOVEONは、一つの画素が三層になっています。最上位の層でBを、中間でGを、最下層でRを、それぞれ受光します。したがって、ベイヤー型のように四個一組になって複雑な色情報交換の必要がなく、光の持つ色情報を全て受け取ることができます(原理的に)。詳しい説明は、SIGMAさんのHPやパンフレットをご覧下さい。

SD14の場合、被写体に向いている画素数は、約470万個です。最近は、2000万画素クラスのベイヤー型デジカメがありますが、私流の計算では、実質1/4の500万画素と見ています。メーカーからは、強い反論がありそうですけれど・・・。

SD14は、APS-Cサイズよりやや小さいものの20.7mm×13.8mmの撮影素子に、470万画素です。1000万、2000万画素クラスのベイヤー型に比べると、一個一個の画素面積が大きく、光の受光効率に余裕があります。そのため、解像度、階調再現に優れ、画像全体の品質は、ベイヤー型よりも一日の長があると云えましょう。

当然のことですが、ローパスフィルターを付ける必要もなく、高品位な画像生成を無理なく可能です。レタッチの際に、シャープフィルターをかけることがほとんどない、という理由はここにあります。

SD14は総画素数が1400万画素、とアナウンスされていますが、正確には470万画素なのでしょうね。ベイヤー型が、1000万だ、2000万だと高画素数を売りにしているので、SD14は、仕方なく470万×3層で1400万画素と云っているのでしょう。

このカメラが優れているのは、生成される画像そのものに偽物が無い、ということです。そのため、大伸ばしのためにピクセルの二倍出力などということが平気で出来るのです。「画素数が少ないので、大きなプリントは出来ないのでは」と、不安に思う必要はありません。元の画質が素晴らしいので、少々のレタッチや拡大プリントで腰が砕けるようなことはありません。私は、通常A3ノビまでのプリントを創りますが、何ら画質の劣化や違和感を感じません。

私のSDシステム

SD14、18-50mmF2.8 EX DC マクロ、50-150mmF2.8 EX DC HSM、18-200mmF3.5-6.3 DC OS、70mmF2.8 EX DG マクロ。

常用レンズは以上です。いずれも性能には満足しています。18-200mmは、画面周辺に乱れがありますが、実用上は問題にならないと感じています。使用目的、表現形式などにより、判断は別れるでしょう。

フィルム時代から、シグマのレンズを使用しています。マクロや望遠系レンズのボケ味が気に入っています。ボケ味は、数値化して優劣を比較できないので、主観性の強いものです。シグマのボケは大嫌い、という人もいるはずです。

ペンタックスには、70-200mmF2.8 EXを付けて常用していました。SD14用の同レンズを所有していないので、買おうかどうか大いに迷っています。18-200mm DC OSがあるので、いっその事100-300mmF4 EX DGも善いかな、とか・・。

プリンターは、EPSON PX5500。印画用紙は、ベルベット・ファイン・アート、画材用紙などマット系です。

SD14の情報をネット上で探しているなかで、「maroのウエブサイト」という素晴らしいサイトに出会いました。SD9から最新のSD14、DP1まで、正確かつ丁寧、親切な解説は賞賛の言葉が浮かびません。レンズテストのデーターなどは、とても信頼できます。これほど厳格にテストをされている方を知りませんでした。もちろん私も、maroさんのような気合いの入ったテストをしたことはありません。ずいぶん勉強させていただきました。御礼もうしあげます。

九月には、SIGMA社から「SD15」の開発発表がありました。受光素子FOVEONは同じで、画像処理エンジンがより良いものに変更になるようです。発売になったら手にとって感触を確かめたいと、楽しみにしています。(2008/10/4 記)

私のSD14撮影方法

私のホームページに掲載してある写真は、SD14が生成した生モノではありません。プリントした時に、私にとって最善となるようにレタッチした加工品です。RAWを現像してTIFFに変換、さらにレタッチソフトで新たな画像を創り、それをWeb用に適当なサイズのJPEGにしています。したがって、私のHP上の作品は、SD14の(生の)良質な画像とは違います。レタッチにより、色調、階調、コントラスト等は大きく変わっています。

本当にSD14の画像の品質やSIGMAレンズの性能を確認したい方は、「maroのウェブサイト」をご覧になってください。m(_ _)m

SD14を使うようになってから、レタッチソフトでの作業がとても楽ちんになったのは間違いありません。私の作品は、撮影時に肉眼で感じたイメージを、どうにかして印画紙の上に再現することです。所謂、写実的な表現を追求しているのではありません。元画像の質により様々で、これといった定型はありませんが、時により色調などを大きく変化させることがあります。さらに、元画像を意図的に破壊することもあります。

こうした過大な変動は、画像全体に影響してきます。たとえば色調の変化は、階調やコントラスト、明暗などにも調整の必要性を求めてきます。「一つだけ、上手いことイジッテやろう」、何てわけにはいきません。画質が劣化して、やむなくシャープフィルターでメリハリをつけなければならないこともあります。が、SD14の画像は、レタッチによる崩れが少なく、結果として余計な調整や誤魔化しの作業をする頻度が大幅に低下しました。本当に、助かっています。(2008/10/9 記、この続きは後日に)

野の花とマクロレンズ

野の花は、私の主要な撮影対象です。使用するレンズは、ほとんどが70mmF2.8 EX DG マクロです。105mmF2.8 EX DG マクロを使っていた時期も長いのですけれど、いまは70mmに落ち着いています。70mmは、35mmフィルムカメラ相当で120mmになります。FOVEON X3はAPS-Cサイズより若干小さいので、焦点距離を1.5倍ではなくて、1.73倍にして計算します。

105mmなら、何と180mm相当となり、感覚的に「やや長すぎる」のです。被写体が遠い、後のボケを大きくしたい、などの場合はとても便利なのですが、諸々の理由で近づいて撮りたい場合もあるのです。長刀は短刀の変わりになりません。被写体との距離感が適度で、押したり引いたりが状況に応じて可能なのは、経験的に70mmという焦点距離なのです。

撮影現場に入ったら、一台のSD14に70mmマクロが付けっぱなしになって、肩にかかっています。

具体的な使用方法。私はいっさい三脚を使いません、という結論になって久しいのです。かつては、この種の撮影で常識とされるとおりに、三脚にカメラを固定してシャッターを切っていました。自然の中は、地面が軟らかかったり、固かったり、傾斜があったり、水の中だったり、雪の上だったり、安定した環境など滅多にありません。三脚を立てること自体、不可能なこともあります。

もっとも問題なのは、フレーミングの時に、ほんの数センチだけカメラを左右に動かしたい、傾けたい、という微妙なコントロールが困難なことです。実際に三脚に固定されたカメラを操作してみれば分かります。絶対に出来ないとは云いませんが、イライラするくらい時間がかかりますし、絶好のシャッタータイミングを逃すことになりましょう。

私は、野の花(主要な被写体)の背景をどのように処理するかが、絵作りの大切な要素に考えていますので、「微妙な画面構成」を素早く確実に実行できる方法を選択しました。それが、三脚から解放されること、手持ちでのカメラ操作なのです。マクロ撮影はブレの最も起こりやすい場面ですが、三脚使用という常識を捨てることで、背景処理の自由と思い通りのフレーミング、光や風の目まぐるしい変動に素早い対応が出来るようになった、と思っています。

手持ちでの撮影では、シャッタースピードは速い方が有利です。遅くなると、手振れ、被写体ブレが起こります。私の場合、大半がレンズの絞り値はF2.8の開放です。これは、私の作画方法に起因するもので、誰にでも勧められるものではありませんが、できるだけ開放に近い所で使うのが有利です。また、感度設定も可能な限り高くしたいところです。SD14は、ノイズが発生し易いので、感度100あたりが無難でしょうか。私は、ノイズのソフト的処理を前提に200で撮影することがあります。

SIGMAの70mmF2.8 EX DGマクロは、絞り開放でも十分高画質です。安心して使えます。と、私は思いますが・・。

日頃から、手持ちでもブレない撮影の訓練が効果的です。私が駆け出しの頃は、自宅に帰ってから毎日カシャカシャと空シャッター音を部屋の中に響かせていました。家族は迷惑だったに違いない。反省。

作品としての写真は、「ブレているから駄目」とはなりません。少々ブレていても、良い物は善いのです。怖がることはありません。かつてロバート・キャパが戦場で撮った写真は、ブレにブレているではありませんか。常識とは、あくまでも最大公約数のようなものであり、この世のすべてではありません。(08/10/12 記 続く)

セミ・マクロレンズを活用

近接撮影と云えば、一般的にはマクロレンズです。 50mmF2.8 EX DG、70mmF2.8 EX DG、105mmF2.8 EX DG辺りがよく使われるレンズです。私は70mmマクロの愛用者ですけれど、これ以外にもマクロレンズに準ずる機能を備える18-50mmF2.8 EX DC MACROと50-150mmF2.8 EX DCを野の花の撮影に積極的に使います。

18-50mmは、名の最後にMACROが付いているだけに、近接撮影に使ってもらいたいという設計者の意図を感じます。最短撮影距離が20cmですから、被写体にグイグイ寄れますね。アップ度はかなりのものです。F2.8という大口径のお陰もあり、広角側でもボケを生かした撮影ができます。手前の被写体を大きく、背景を広く取り込んだ、独特の画面構成ができます。

望遠系のマクロレンズにはないアップ撮影、背景を生かしながらボケを作る写真独特の表現ができるので、しばしばこのレンズを使います。また、このレンズは線の描写が細かくて、微妙な質感が捕らえられるので気に入っています。良いレンズです。

MACROとは謳っていませんが、50-150mmの近接能力は侮れません。最短撮影距離は、1m。焦点距離150mm時で、草丈7〜8cmの植物を画面いっぱいに撮影できます。しかも、背景の単純化、省略化がし易く、あたかもマクロレンズを使っているかのような印象です。現行品は「U」となって、私が持っているものより近接時の画質が良くなっているようです。

上記二本のレンズは、一般撮影用の顔をしていながら、近接撮影にとても強い。かつボケ味良好、画質も絞り開放から安心して使える上質の品です。極端な近接撮影をしない人なら、マクロレンズを買わずにすませられるのでは、と感じています。でも、シグマのマクロはとても優秀なので、是非使ってみてほしいです。近接用というだけでなく、一般撮影にもよいです。

望遠系では、APO 70-200mmF2.8 UEX DG MACROという上級品があります。SD14を買うまでは、旧タイプのものを使っていましたので、その優秀さ、優雅な画像は知っています。で、現行品は、MACROという名称になり、最短撮影距離が1m。これも50-150mm以上にお薦めしたいですレンズです。35mm判カメラの340mmに相当する焦点距離で、1mまでグイ寄りができる。ものすごいアップ度であることが想像できるでしょう。

私は、70-200mmF2.8 UEX DG MACROを買おうか、100-300mmF4 EX DGしょうか、未だに悩んでいるのです。
(2008/11/11)

SD14の画像はどこまで伸びるか

FOVEONセンサーが被写体に向き合っている画素数は、約470万画素です。今時のデジカメで、このレベルのモノはほとんどありません。携帯に付いているモノでさえ、800万画素などが出現、「何かメリットがあるのかしらん?」と小首を傾げたくなる状況です。

やはり一般社会では、「画素数の多いことが良いカメラなのだ」という暗黙の了解があるのでしょうね。ちょっと物知りのカメラマニアなら、SD14の470万画素は購入検討の対象外になってしまうのでしょうか・・。まして、一眼レフですからね。もはや1000万は当たり前で、経済力のある人は2000万画素クラスに触手を伸ばしたくなりますね。

この一文のなかで、一般のベイヤー型デジカメの画素数は、表示の四分の一にして考えるべきではないか、と云いました。しかしながら、補間による偽の色で出来ているとはいえ、被写体に向かっている画素数は1000万とか2000万なので、一応そのように認めることとします。話がややこしくなりますので・・。

さて、プリンターで写真を印刷する場合、どの程度の「解像度」が必要でしょうか。Photoshopなどの解説書には、「プロが扱うカラー写真では、通常300から350pixel/inchが使用される」云々と書いてあるのを読んだことがあるかもしれません。プリンターの解説書にも似たような事が書いてある場合があります。商業写真など高品質の原稿を扱う現場では、その通りでしょう。

そこで、わずか約470万画素しかないSD14の画像は、300pixel/inchでプリント出力すると、いったいどんな大きさになるのか。SD14購入に躊躇する人の多くは、この辺りの問題で悩むのではないかと想像します。大雑把な数字であらわすと、次のようになります。22.35cm(長辺)×14.90cm(短辺)です。おおむね、A5サイズより、極わずかに大きい程度。がっかりするでしょうか。

画素数2000万クラス(3600pixel×5400pixelと仮定します)のカメラなら、同300pixel/inchで印刷出力すれば、90.51cm×60.34cmとなります。長辺の比較では、SD14の約4倍という大きさです。凄いですね。これじゃ、SD14はまるで駄目なのか・・。いえいえ、そんなことはありません。これは、単にピクセル数を物指しにして比較しただけですから。

私は、SD14が作り出す画像をいっさい補間することなく、そのままで拡大プリントします。展示作品用として、四つ切りから半切サイズです。半切の場合は、額の大きさとの関係で、A3ノビの紙に44.25cm×29.50cmのサイズでプリントします。この場合の出力解像度は、151pixel/inchです。高品質プリントに必要と言われている解像度の半分です。

私の目で見る限り、画質にまったく不満や不安はありません。また、来場者・鑑賞者から違和感を訴えられたこともありません。あれこれ試行錯誤してみた結果、EPSON PX5800が出力するA2サイズまで問題なくプリント可能だと思っています。残念ながら、私はPX5800を所有していないので、実際のプリントで確認できないのが残念です。もし、これ以上の大伸ばしをするのであれば、二倍のピクセル数に補間すれば問題無いと思います。

展示して鑑賞する場合、作品が大きくなればなるほど鑑賞者と作品の距離は離れます。そういう意味でも、補間によって無闇に画素数を増やす必要はほとんどない、私はそのように思いますが・・。一般的に、補間による画素数の増加は、原画の持っている品質を低下させますので、十分に注意と検討が必要です。

プリントしていて、少々画素数が少なくても、SD14の画像の腰に粘りがあるのがよく分かります。画像処理段階はもちろん、しっかりした本物の色情報で出来ているFOVEONの画像は、そのままで使い物になります。まったく心配無用と思います。しつこいようですが、ベイヤー型の画素の色は、その三分の二が補間による偽の色なのです。
(2008/12/14)

「良いレンズ」とボケ味
 

私が写真の道に入った頃も、その後三十年以上経った今も、「レンズの善し悪しを論ずる」事、少しでも良いと噂される優秀で高級なレンズを入手するのが、写真愛好家の強い関心になっている事情に変わりはないようです。写真雑誌では、ニューフェイスレンズの撮影テスト記事がよく読まれるし、有名写真家のレンズ評価・コメントが、いつも注目されているようです。

かく言う私も、若い頃はレンズの光学性能にいつも注目して、高価なレンズほど良いに違いないと思っていました。レンズ先端に赤いラインを引いたレンズを、ズラリとラインナップしていた頃もありました。メーカーの宣伝も上手く、色収差を完全に抑えるかのような印象を受けていましたし、それを無批判に信じてもいました。

この当時の私の「良いレンズ」基準は、解像度、シャープネス、色収差の補正など、いわゆる光学性能の優劣にありました。やがて、ある程度経験を積んで試行錯誤を繰り返し、「自分の表現」という別の価値基準が出来上がってくると、レンズやカメラを見る目、必要とする尺度が変わってくるものです。

私のレンズを見る目に大きな影響を与えたのは、ライカレンズです。とくにズミクロン35mmF2.0とズミルックス35mmF1.4です。ものすごく古いタイプではなく、1980年代に製造されたものです。当時は、ライカの新型レンズとして光学性能が改善されたものです。絞りを三段も絞れば、日本の一眼レフと変わらぬ描写をしましたので、古物趣味で買ったのではありません。

絞り開放で使ったときに、その独特の描写、画像感覚に衝撃を受けました。光学的な良否で見れば、画像全体に滲みがあるし、色収差もたっぷり残っているようでしたし、まして日本的シャープネスの基準からは埒外でした。開放絞りでの個性の一つに、ボケ味がありました。「美しい」としか表現できません。数字に換算して表せるものではなく、人間の生の目が感じるもので、きわめて主観性の強い要素です。しかし、その主観性に敢えて訴えかけてくるライカに、さらに感動してしまいました。

ライカというのは、光学収差を徹底的に排除するよりは、残存収差のバランスを上手く処理して、画像全体の美しさを求める設計をしているらしいということに気づきました。「人間の目を信じている」という思想と感性の会社だったのでしょう。今は分かりません。その後、ライカ社もさまざまな変遷と荒波の中にあるようなので・・。

この時学んだのは、レンズは表現のために存在するのであり、光学性能だけが絶対条件ではないということでした。

前置きが長くなりました。私が何故シグマレンズを愛用しているか、これが本筋です。一言で云うと、「絞り開放でボケ味の美しいレンズが揃っている」という理由です。とくにEXレンズで、不出来なモノは見あたらないのではないでしょうか。球面収差や色収差を完全にゼロにするのは不可能と思います。そうしたモノが残っていて、たとえば画面周辺で解像度が低下する、やや色が滲むなどの現象があっても、画像全体の「美しさ」が保たれていれば、私に不満はありません。

自然を相手に、野の花や風景を撮る私は、目の前に存在するモノの複写をしているのではありません。あくまでも「表現」をするのであり、宇宙偵察衛星に搭載されているような高解像度のレンズを必要としているのではありません。美しいものを美しく写せるレンズが欲しいだけなのです。そういう基準から、私は結果的にSIGMAに落ち着いたのでした。

もう少し丁寧に説明します。ボケ味の個性は、そのレンズの開放絞りの時にこそ最もよく現れるということ。三段も絞ってしまえば、同じSIGMAでも、どのレンズも極端な差は無くなってしまいます。ましてや、他メーカーとの差違を肉眼で確認するなど、ほとんど不可能になってしまいます。今時、解像度やシャープネスで目を覆いたくなるようなレンズは存在しないでしょう。

私がEXシリーズの18-50mmF2.8 DC、50-150mmF2.8 DC、マクロ70mmF2.8 DGを常用レンズにしているのは、絞り開放時の画像の仕上がりに惚れ込んでいるからです。絞った時に比べるなら、やや画面周辺のシャープ感が崩れているように感じますが、プリントを創ったときに、欠点を感じない、むしろ美しさが全面に出て来ます。

高倍率ズームの18-200mmF3.5-6.3 DC OSも使いますが、開放F値の暗さに不満があります。EXレンズに比べると、ボケ味を有効に活用するのに難ありです。被写界深度が深いので、どうしても背景のボケが少なく、背景処理に困ることがあります。ただ、開放値でのボケ味はそれほど悪くありません。表現内容によっては、十分に実用の範囲内です。悪くない、と思いますが・・。

このレンズ、小型軽量という要素を無視して、開放F値をせめて一絞り明るくしたものを作って欲しい。出来ればEXと云っても良いようなモノにならないか・・。焦点距離を短くし、18-150mmF4.5 EX DCマクロ、 なんてのは如何でしょうか。カメラ機材を少なくしたい環境や長旅の時には、絶対的に有利になると思います。株式会社シグマ様への個人的なお願いです。

余談になります。シグマのレンズは、私の若い時には、とても使う気持ちにならなかったのが事実でした。しかし、ある時から様変わりを感じるようになりました。不確かな情報しか持っていませんので、具体的に述べるのは止めておきます。が、変わったというのは間違いないでしょう。どなたにもお薦めできるレンズがラインナップされ、しかも低価格です。
(2009/04/26)

FOVEONセンサーを再認識

私事になりますが、娘が目出度く嫁にいき、記念の写真を撮りました。もちろん営業写真館で、立派な撮影機材や施設のあるスタジオです。一父親として見物させていただきました。カメラマンの使用カメラは、某大手のプロ用仕立て品。1800万画素の製品であると思いました。センサーはベイヤー型。レンズも、最高級品です。

娘の希望で、プリントは自分でするので、データーを買い取ることにしました。結局そのプリント作業は、一父親であり、しがないプロ写真家の私にお鉢が回ってきました。思いがけなく、最高の撮影条件で出来上がったベイヤー型センサーのデジタル画像をじっくりと眺める機会に恵まれました。以下、SD14と比較した感想です。

プロ用のカメラだけに、解像度に関しては、SD14を上回るのではないかという印象です。かなりのトリミングをして、画像を拡大して見ましたが、大きな破綻はなく、「流石だなあ」と関心してしまいました。多くのプロはもちろん、ハイアマチュアから初心者の女性たちがリュックに詰めて野山を歩いているのが納得できました。「良い画像」を手にするには、取りあえず無難なカメラであり、誰もが迷わず使え、かつ予定通りの画像を得ることができるのです。

色調も鮮やかです。シャープ感も十分。所謂ヌケも良い。性能の良いレンズさえ使えば、ほとんどクレームの付けようがない画像を手にすることができます。正直、ベイヤー型恐るべし、と思いました。

さて、物は試しで、チョイと画像レタッチをやってみました。例えば、ヒストグラムで中間調の微調整。ビフォー・アフターの画像を比べると、アフターでやや画像の腰砕けが見られました。色調の調整やコントラストなど、私がいつもやっているような大胆な作業を続けるのには不安を感じました。レタッチ作業で、それなりの画像劣化と変な色の発生が懸念されました。

ただし、ベイヤー型でも、撮影を完璧にやって、出来るだけ無理なレタッチ作業をしなければ、FOVEONと比べて著しい差を認識するのはまったく不可能だと感じました。しかし私のように、自分の画像イメージを、レタッチを繰り返しながらコツコツ作り上げていく作業を続けるのなら、ベイヤー型の画像は、その途中で腰砕けを起こしてしまいそうな気がしました。

実際、私がペンタックスを使って得た画像の処理には、今でもかなり控えめで注意深いレタッチをしています。

素直な表現、フィルムのように撮影時の露光で写真の大半が決まってしまうような撮り方と表現をするのであれば、ベイヤー型センサーカメラが使い易いと思います。「写真は、現実を写すもの」「出来るだけレタッチはしたくない」という考え方をする写真愛好家は、ベイヤー型の方が使い易いし、性能も素晴らしいです。カメラシステムも充実していると思います。

FOVEONセンサーを選択する理由は、偽色でない自然に近い色が欲しい、少々のレタッチでは腰が砕けない粘りのある画像が欲しい、力強い解像感が欲しい、ということになりそうです。ノイズの除去をはじめ、じっくり作品を創っていきたいと考えている人向きのカメラでありましょう。「ポジフィルムのように、プリントを人任せになるのは絶対に嫌だ」と云う、私のようなタイプの写真家なら、FOVEONの恩恵に心ゆくまで浴することができます。

FOVEONの技術的、構造的、生成画像の利点だけが、SD14あるいはSD15を選択する基準ではないと思います。どんな写真を撮るのか、どんな表現をしたいのか、どんな目的に使う写真か、そうした要素を十分に考えないでSD14を購入すると、その使いにくさや欠点にがっかりし、SIGMA嫌いになりかねません。SDは、カメラとして未成熟な部分が多いのが事実です。

SIGMA SD14(SD!15)を検討されている方には、慎重さ冷静さを失わないようにお願いいたします。と云いながらも、私個人は、やっぱりFOVEONしか選べないという人間です。新しいSD15がどんな姿で登場してくるか、とても楽しみにしています。
(2009/10/9)

ファインダーが気になる

今年のカメラ業界の新製品で、「一眼カメラ」が注目されたようです。小型で軽量が、最大のポイント。まるでコンパクトカメラに一眼レフのレンズを取り付けたような感覚です。量販店で手にとって見ましたが、思わず手に入れたくなるような魅力があります。軽くて小さくて、レンズ交換が出来る。しかもミラーが無いので、とても静かなシャッター音です。デザインも今時のモノにしては、いかにもデジタルカメラめいたところがなく、好感を持てました。

どうしても気になるのは、ファインダーが無いこと。構図の構成は、カメラ後背の液晶モニターで可能なので、写すこと自体には何の支障もありません。液晶モニターの欠点というか、不満に感じるのは、レンズの微妙なボケ具合が分からないことです。ピントの山(焦点がピタリと合った場所)から少しずつ画像がボケ始める状況とか、主要被写体の前方や後方のボケ味の善し悪しを確認するのはきわめて不得意と云わざるを得ません。

で、最近のカメラに関する四方山話の中に、ファインダーの問題があまり語られなくなったような気がします。カメラ機構が電子化されるようになって以来、ファインダーの美しさや視野率、像倍率を気にしなくなった(軽視する)ようなのですが、個人的にはチョット気になるのです。最高級プロ用と称されるモノでも、異様に像倍率が低くて、がっかりさせられた事があります。

本来、高級カメラとかプロ用と云われるレベルのカメラは、ファインダーの視野率は限りなく100パーセントに近く、像倍率も0.8を超えるのが当然と思われていました。かつてニコン、キャノン、ペンタックス、ミノルタなどのフラッグシップ機は、いずれも倍率0.8以上あったと記憶しています。詳細なデーターが無いので正確には書けませんが、記憶に違いはないはずです。

ところが、最近の各社の最高級機は、像倍率0.7台というのが普通です。ペンタックスのK-7が、視野率100パーセント、倍率0.92というのがやけに目を引きます。私は、視野率よりも倍率の方が気にかかる方で、ファインダーを覗いた瞬間に感じる画像の大きさが、撮影する感性に相当影響を与えます。まったく気にならない人もいると思いますけれど・・・。

さて、我がSD14に目を向けてみましょう。視野率98パーセント、倍率0.9倍。何と、今時のカメラの中では、トップグループを走る優秀なファインダーを持っているのです。SD14のパンフレットから引用してみます。

「一眼レフカメラの命ともいえるファインダーはペンタプリズム(98%×98%)を採用。スーパーインポーズの見えかたや明るさ、ピント山の掴みやすさなどを追求し、視野率、倍率はSD14と同クラスのカメラで最高レベルの仕様を実現しました。」

このアナウンスが決して大げさなものでないのは事実です。「ペンタプリズム」という言葉がありますが、レンズの像を上下左右とも正立像として見るためのものです。上部が変形の三角屋根状になった、ガラスの固まりです。これが有るために、一眼レフのボディは、上部が盛り上がった形になり、必然的に重みが増すことになります。

初心者向け、低価格の一眼レフには、ペンタミラーというものが使われています。ガラスの固まりではなく、ミラーを貼り合わせてプリズムと同様の機能を持たせています。ただし、像の見え方は、ペンタプリズムに比べる可くもありません。唯一のメリットは、プリズムよりも小型・軽量に作れ、価格も安いということでしょう。

このコラムの冒頭にSD14への感想を書いてありますが、ファインダーに関してまったく触れていなかったのは、私のうっかりミスです。SD14を店頭で触り、ファインダーを覗いた時の爽やかな気分を今でも忘れません。とても新鮮な気持ちになり、画質もさることながら、購入・所有・使用への決定的な要因の一つになったのです。

一眼レフが一眼レフである意味は、アイポイントで、レンズから入った光、画像を可能な限り正確にモニターできること。これなくしては、一眼レフの価値は大きく低下してしまいます。画像を見るだけなら二眼レフでも良いじゃないか、と云われても仕方ありません。一眼レフのファインダーは、視野率、倍率、そして明るさ、クリーンさで評価されます。明るすぎても見づらいし、暗くても駄目。人間の肉眼にとって、最善の明るさでクリアーに見えるように設計されていなければなりません。

また、レンズの性能が正確に反映され、ピントの山が明瞭で迷わずにフォーカスできること、画面周辺の光量低下や画像の流れも(可能なら)認識できること、さらにボケ味まで分かること。こうした点が、私が一眼レフのファインダーに求めることです。SD14は、この要求をほぼ満足しているカメラであると思っています。自信をもってお薦めできるカメラの一つですね。

ただし、ボケ味のモニターについては、まだ改良の余地があると思います。希にですが、ファインダー画像と実際に写った画像のボケ味にズレが見られます。実際の画像のボケ味の方が善かった、ということがあります。悪いよりはマシだし、簡易ではありますが、液晶モニターで確認できるので、決定的な欠点とも云えないでしょうね。

話はズレてしまいますが、最近の一眼レフは、動画も撮れるという機能が付いているようです。しかし、写真すなわち静止画と動画は、まったく質の違うものです。カメラに動画機能は必要無い、というのが私の個人的な意見です。近く出るであろうSD15には、動画撮影機能なぞ付属していないことを望みます。デジタル時代になり、「何でも有ります」というのがフツーになりつつある昨今です。でも、必要無いものを「可能だから載せました」というのは、納得できないのですね・・。私の頭は古いのかな。
(2009/12/20)

ファインダーが気になる(補足)

先日、私のもとにX氏(差出人の氏名などが書かれていません)から、メールが届けられました。当初、そのままに放置しておこうかと思ったのですが、同じような誤解をされている読者、SDユーザーがいたとしたら、ご迷惑をかけることになっては大変と考え、メールへの若干のコメントと前回の文章の補足を書くことにしました。

メールの全文を以下に掲載します。差出人名が無いので、文章への責任と著作権を放棄されているものと解釈させていただきました。また、読者には全文を読んでいただいた方が、事の本質が理解し易いと判断しました。

「はじめまして

さて、貴公がHPで掲載されている以下の文章を、再検証していただきたく、このメールを送らせていただきます。

>本来、高級カメラとかプロ用と云われるレベルのカメラは、ファインダーの視野率は限りなく
>100パーセントに近く、像倍率も0.8を超えるのが当然と思われていました。
>かつてニコン、キャノン、ペンタックス、ミノルタなどのフラッグシップ機は、
>いずれも倍率0.8以上あったと記憶しています。
>詳細なデーターが無いので正確には書けませんが、記憶に違いはないはずです。

>ところが、最近の各社の最高級機は、像倍率0.7台というのが普通です。
>ペンタックスのK-7が、視野率100パーセント、倍率0.92というのがやけに目を引きます。
>私は、視野率よりも倍率の方が気にかかる方で、ファインダーを覗いた瞬間に感じる

>画像の大きさが、撮影する感性に相当影響を与えます。
>まったく気にならない人もいると思いますけれど・・・。

>さて、我がSD14に目を向けてみましょう。
>視野率98パーセント、倍率0.9倍。
>何と、今時のカメラの中では、トップグループを走る優秀なファインダーを持っているのです。
>SD14のパンフレットから引用してみます。

>「一眼レフカメラの命ともいえるファインダーはペンタプリズム(98%×98%)を採用。
>スーパーインポーズの見えかたや明るさ、ピント山の掴みやすさなどを追求し、視野率、
>倍率はSD14と同クラスのカメラで最高レベルの仕様を実現しました。」

ファインダー倍率の表示基準に照らし合わせて、再度検証し(できるならご自身の眼で)、実際に体感するファインダー像の大きさをご提示ください。(カタログデータによる誇大表示になってしまいます)

ヒント:フォーマットサイズ(35o・APS−C・APS−H・645・6×7)を無視しての、とファインダー倍率は直接比較できません。

カタログ上の倍率は、受光面の面積に比例して表示するものです。
ですので撮像素子の大きさに関わらず、○○倍としています。

折角、35oの銀塩時代の良いファインダーのことを記しておられるのに、この部分がある為に、全文が懐疑的に受け取られてしまいます。

いちFOVEONユーザーとして、このような誤解が生じることは、一般のユーザーに不利益になる恐れもございますので、より慎重に記事にされるよう願っております。

失礼いたしました。 」


やや長い引用・掲載となって、申し訳ありません。Xさんが仰ることを、以下に要約してみます。

(1) ファインダー像倍率は、フォーマットサイズの違いを無視して比較できない。
(2) 35mm判一眼レフのファインダーに触れたため、全文の信頼性が無くなっている。
(3) SDユーザー及び一般ユーザーの不利益になる。
(4) 私(筆者)の目で確認したファインダー像の大きさを提示しなければ、カタログデーターによる誇大表示である。

おおむね、このような内容であると解釈しました。読者の皆様も、ご確認くださいませ。

前回書いた「ファインダーが気になる」の全文を素直に読んでいただけると、私が本当に伝えたかったことが分かると思います。Xさんが引用されている部分ではなく、その後に書かれている文章に、私が云いたかった事の本質があります。しつこいようですが、引用して下に再掲載いたします。どうも、すみません。

「一眼レフが一眼レフである意味は、アイポイントで、レンズから入った光、画像を可能な限り正確にモニターできること。これなくしては、一眼レフの価値は大きく低下してしまいます。画像を見るだけなら二眼レフでも良いじゃないか、と云われても仕方ありません。一眼レフのファインダーは、視野率、倍率、そして明るさ、クリーンさで評価されます。明るすぎても見づらいし、暗くても駄目。人間の肉眼にとって、最善の明るさでクリアーに見えるように設計されていなければなりません。

また、レンズの性能が正確に反映され、ピントの山が明瞭で迷わずにフォーカスできること、画面周辺の光量低下や画像の流れも(可能なら)認識できること、さらにボケ味まで分かること。こうした点が、私が一眼レフのファインダーに求めることです。SD14は、この要求をほぼ満足しているカメラであると思っています。自信をもってお薦めできるカメラの一つですね。」


私が想定しているカメラは、SD14あるいはAPS-Cサイズのセンサーを持った一眼レフです。フォーマットの違う、35mm判、中判、4×5サイズなどは、比較の対象にしてみても、最初から意味が無いと思っています。よって、(1)のご指摘自体は、まったく正当なもので、私から特別にコメントすることはありません。

(2)のご指摘を受けたのは、すべて私の文章能力の不足によるものです。全文の冒頭部分に、かつての35mm判カメラのファインダーに触れたのは、「昔は、一眼レフの見易いファインダー作りに各メーカーが鋭意努力していたものだが、最近は荒っぽい仕上げのカメラが増えてしまったなあ・・・・・・」という私の寂しい呟きみたいなものです。私の個人的感情・感覚を、35mm判カメラを引き合いにして書いてしまったことで、誤解を与えるものになったのかと、反省しています。

が、「全文が懐疑的に受け取られてしまいます。」とのXさんの指摘は、どうでしょうか? 私の文章の全文を、連続的且つ素直に読んでいただければ、Xさんの主張は当たらない、と思います。部分の不十分さが有るからと云って、全体を損なっているとは思いませんし、文章を書き直すつもりもありません。

(3)のSDユーザーや「一般のユーザーに不利益になる恐れ」という指摘も、私は「懐疑的」です。「より慎重に記事に」というアドバイスは当然ですし、私も可能な限り努力しているつもりです。しかし、私はカメラやレンズの専門家でも設計者でも学者でもありません。ときどき勘違い、間違いを犯すことがあります。敢えて、それを恐れず、こうして雑文を書き散らしています。全文は、SD14の優れた点を、私が感じたままに表現していますので、SD14への悪意や悪口を伝播するものではないと判断します。

(4)の問題です。私は、撮影のたびに、実際の被写体とファインダー画像を見比べています。しかし、それがどのように違うのかを言葉では表現できません。ファインダー像と実物の大きさの違いを計測する機械を持っていませんし、仮にその違いが分かったとしても、何かが解決されるのでしょうか? 私の体感としては、SD14のファインダー画像は、写真創作をするうえで十分に満足するものである、ということです。一部不満はありますが・・・。

SIGMA社が作成したSD14のパンフレットに書かれている

「一眼レフカメラの命ともいえるファインダーはペンタプリズム(98%×98%)を採用。スーパーインポーズの見えかたや明るさ、ピント山の掴みやすさなどを追求し、視野率、倍率はSD14と同クラスのカメラで最高レベルの仕様を実現しました。」

との一文は、決して大げさでも、「誇大表示」でもないと思います。文字通り、SD14と同クラスのカメラの中では、トップクラスでありましょう。SIGMA社の設計者は相当に頑張っている、と評価します。さらに上質なものを目指して欲しいと希望します。

これだけでは、前回の繰り返しだけになりますので、若干別の話を書き記します。

ここまで話題にしてきたのは、「ファインダー画像の倍率」です。「撮影倍率」というものがあります。これは、被写体の実際の大きさとフィルム面あるいはセンサー上に結像する画像の大きさとの比率です。これ自体は、これ以上述べ立てる何物もなく、単純明快なことです。常識的には、像の方が小さいのが当然です。

で、フィルムの面積、センサーの面積が大きいほど、そこに結像する画像は大きいのです。したがって、より大きな画像を見ながら撮影したい場合は、SD14よりもAPS-C、さらに35mm判、645判、6×6判、6×7判、4×5判というカメラを選択するしかないのです。4×5判の磨りガラスを見ていると、35mm判などは玩具のように感じます。ファインダーの視野率や倍率を云々するのが馬鹿らしくなるような感覚になります。比較すること自体無意味というのは、以上のような理由です。

もう一つ、SD14のユーザーで、「どうしてもファインダー画像が小さくて不満だ」という方は、アングルファインダーやマグニファイヤーなどというアクセサリーがあります(他社製の物ですが)ので、ご検討なさるのも一つの解決方法です。ファインダーの画像を1.2倍とか2.5倍に拡大して見ることができます。接眼部に取り付けるアクセサリーですので、カメラの保持方法を工夫しないと、手振れなどが生じる可能性が高いです。私は、野草の撮影にアングルファインダーを使用します。

ファインダー倍率の話に、ちょっと逆戻りします。眼鏡をかけて撮影される方も非常に多いと思います。その場合、カメラの接眼部と肉眼が離れてしまいます。眼鏡が、肉眼と接眼部の間に入りますから。そういう場合、倍率が0.7台程度と低い方が、画面全体を見渡せて善いのだ、という意見を持つ方もいます。これも、納得できる意見です。私は否定しません。

わたしも眼鏡派なので、本当によく分かります。でも、やはり一眼レフのファインダーは、レンズが作り出した画像をそのまま見られるものであって欲しい。眼鏡の問題よりも、一眼レフの本質に関わるものの方を大切にしたいと思っています。

今回Xさんからメールをいただいたことで、言葉を操る、使いこなすことの難しさを改めて感じています。分かり易く、紛れなく、出来れば美しい文章を書きたいと思い続けていますけれど、なかなか実行できるものではありません。日本語の奥は深いのです。
(2010/3/7)

ファインダーが気になる(補足その2)

上記の文章を書いてから間もなく、再びXさんからメールをいただきました。どうしても納得できない点がある、とのことですので、この問題をきちんと解決しておいた方が善いのかなと思案し、再度筆を起こすことにしました。まずは、Xさんからのメールをお読みください。読者の皆さんには面倒な作業を強いることになります。ご勘弁を願います。

「HPで公開された内容について再度書かせていただきます。

>ところが、最近の各社の最高級機は、像倍率0.7台というのが普通です。
>ペンタックスのK-7が、視野率100パーセント、倍率0.92というのがやけに目を引きます。

この部分を、素直に読むと、
「最高級機の35oフルサイズは0.7倍が普通だが、K−7は100%かつ0.92倍で注目に値する」
と受け取れます。
まさに、この部分が誤解を生じる部分です。

巷では、よく実際のファインダー像比較をしていますよね?
このとき、視野率・倍率・撮像面積・アイポイント、が重要項目になると思います。

以下に、各社の主要カメラのデータを抜粋いたします。

項目は次の@〜Dです。
@視野率(%) A倍率(倍) B撮像画面サイズ(o×o) Cアイポイント(o) D面積比

EOS7D   @約100%   A1.0    B22.3×14.9    C22      D0.891
EOS50D   @約95%   A0.95    B22.3×14.9    C22      D0.891
D300s    @約100%   A0.94   B23.6×15.8    C19.5     D1.000
D90     @約95%    A0.94   B23.6×15.8    C19.5     D1.000
K-7      @約100%   A0.92    B23.4×15.6    C非公表   D0.979
K-x      @約96%    A0.85    B23.6×15.8    C非公表   D1.000
E-3       @約100%   A1.15    B17.3×13.0    C20      D0.603
E-30      @約98%    A1.02    B17.3×13.0    C24.2     D0.603
SD14     @約98%    A0.9     B20.7×13.8    C18      D0.766

注目すべき点は、K−xの実際のファインダー像の大きさです。
ちなみに、K−xはこの中で唯一ペンタダハミラー採用機です。
実際に、SD14とK−xのファインダー像を比較すると、どちらが大きく見えるとお考えでしょうか?
また、4/3機と比較すると、SD14はE−30より大きく見え、E−3より少し小さく見えます。
もう、お分かり頂けたと思いますが、SD14のファインダー像は、ペンタプリズムファインダーのAPS−C機で平均以下の大きさなのです。
(ソニーのαは、ライブビューを重点にしているので除外しております)

おそらく、SD14ユーザーの多くは、他社とのファインダー像の大きさの違いに気づかれていると思います。
寧ろSD14の弱点とも考えていらっしゃるユーザーもおられると思いますし、SD15にも期待していた部分でしょう。しかし、残念ながらSD15は変わりませんでした。  

先生が、銀塩カメラとフルサイズを直接比較して、ファインダー像が小さくなったと言われるのは、私も賛同できるのです。
K−7が(APS−C機として)頑張っていることも賛成いたします。
ですが、SD14が優秀(数字・像の大きさ)という点に関しては、納得できない部分です。

私が、メールで、再検証を促したのは、冷静な眼でみたSD14の長所と短所を伝えて頂きたいからであって、決して名指しで批判したわけでは有りません。
もし、その気があるなら、幾多とある掲示板に書き込みしています。

先生の拘りと、SD14のファインダー性能のギャップが、今回メールを送った私の本意です。

匿名にしたのも、先生のご判断に委ねるためであり、秘匿するためでは有りません。
その点だけは、ご理解いただきたく思います。

では、失礼いたします。

M.O 」

内容をまとめてみます。

(1) 私が最初に書いた「ファインダーが気になる」の以下の部分

>ところが、最近の各社の最高級機は、像倍率0.7台というのが普通です。
>ペンタックスのK-7が、視野率100パーセント、倍率0.92というのがやけに目を引きます。

この文章が誤解を生んでいる。

(2) 巷でのファインダー像の比較では、視野率・倍率・撮像面積・アイポイント、が重要項目になる。

(3) SD14のファインダー像は、ペンタプリズムファインダーのAPS-C機で平均以下の大きさである。

(4) したがって、ファインダー像の大きさ(小ささ)は、SD14の弱点と考えるユーザーもおり、SD14のファインダーが優秀(数字・像の大きさ)という点に関しては、納得できない。

以下、私の立場と見解を述べさせていただきます。

(1)の点については、前回も書いたように、安易に35mm判のものとAPS-Cタイプを混ぜ込んで書いてしまった私の責任です。色々な意味で誤解の元になる書き方なので、反省しています。SD14とAPS-Cに限った話にすれば善かったのです。ただし、このように補足を書いているので、原文を直すことはいたしません。

(2)については、半分は同意しますが、半分は否と云います。確かにファインダーの視野率、倍率などの要素は大切です。私自身も、視野率の小さなもの、倍率の小さなものは嫌いです。一眼レフなら、レンズの作る像を全部、正確に見せて欲しいと思います。しかし、ファインダーの品質は、視野率や倍率のように数字で表せるものだけではない、と私は思います。そういう意味で、Xさんの意見には全面同意できないのです。

(3)について。私が手元に持っているSD14のパンフレットは、2006年に印刷されたものです。それから四年近く経ち、デジタル一眼レフの世界は光のような速さで進歩しています。この当時トップクラスと云っていたものが、現在では古めかしく、遅れたものに見えるのもやむを得ないでしょう。ペンタックスのK-XやオリンパスE-3が、SD14を超える大きな画像見せてくれるのは不思議ではありません。私は、これらの新しいカメラとSD14を比較して見たことがないので、Xさんの仰る事を信じるしかありません。

ただ、私はSD14のファインダーを覗きながら撮影して、創作に支障があるような低品質ではない、と確信しています。

(4)の問題が事の核心なのです。「SD14のファインダー像の大きさが、現在の他社製品と比較して標準以下である」というXさんの主張が事実であるとしても、SD14のファインダーが弱点であり、重大な欠点と云えるのかどうかです。

私が「ファインダーが気になる」というコラムを書いた時に、ファインダーの問題を取り上げたのは、昔のフィルム時代に比べて一眼レフのファインダーがカメラの付け足しのような扱いをされるような風潮になっていること、高級機といいながら倍率が異様に小さかったり、ピントの山が掴みにくいという事態がみられたからです。オートフォーカスに頼るのを前提に設計されているのかもしれませんね・・。

そういう写真機界の中で、SD14はとても真面目にファインダーを設計していると、私は感じています。前回の文章でも再掲載しましたが、私が一眼レフのファインダーを判断する基準は、以下の通りです。本当にしつこいのですが、ご免なさい。

「一眼レフが一眼レフである意味は、アイポイントで、レンズから入った光、画像を可能な限り正確にモニターできること。これなくしては、一眼レフの価値は大きく低下してしまいます。画像を見るだけなら二眼レフでも良いじゃないか、と云われても仕方ありません。一眼レフのファインダーは、視野率、倍率、そして明るさ、クリーンさで評価されます。明るすぎても見づらいし、暗くても駄目。人間の肉眼にとって、最善の明るさでクリアーに見えるように設計されていなければなりません。

また、レンズの性能が正確に反映され、ピントの山が明瞭で迷わずにフォーカスできること、画面周辺の光量低下や画像の流れも(可能なら)認識できること、さらにボケ味まで分かること。こうした点が、私が一眼レフのファインダーに求めることです。SD14は、この要求をほぼ満足しているカメラであると思っています。自信をもってお薦めできるカメラの一つですね。」

したがって、Xさんのようにファインダー像が他社に比較して少々小さいから弱点だ、欠点だ、と判定はいたしません。他の要素を含めた総合点で判断いたします。SIGMA社のパンフレットが「ピントの山がつかみやすい」云々とアナウンスしているのは事実であり、過大な表示ではない、と私は評価しています。

私は、撮影の時に両目を開けて、被写体とファインダー画像を見比べます。当然ですが、倍率0.9倍のファインダーでは実被写体の方が大きく見えます。だからといって、撮影とカメラの操作に支障を感じませんし、非常にピントも合わせ易いです。視力の善し悪しも関係することなので、私以外のユーザーがSD14を覗いた時にどのように感じるかは、コメントできませんが・・。

今回のXさんとのやり取りで、ファインダーについて注目し真剣に考えているユーザーが、私の想像以上に居るのではないかと思えるようになりました。カメラメーカーは、安価さや見かけの便利さだけでなく、創造のための道具であること、文化の担い手であることも考えて、開発に努力してもらいたいな、と心からお願いいたします。とりわけSIGMA社には期待しています。

愛妻、愛車、愛郷、愛飲、愛犬、愛猫、愛児など、愛の付く言葉が沢山あります。カメラ・写真好きは、愛機と云う言葉をよく使います。自分にとって愛機と呼ぶものは、たとえ幾分かの欠点があっても、ポイとうち捨てられない物なのです。痘痕も靨と云います。欠点や弱点があっても、私はSD14が好きです。悪いところは、数え上げ始めたら幾らでも出てくるでしょう。そうしたものも含めて受け入れ、使いこなし、自分の体の一部にすることが真に愛機を愛すると云うことではないでしょうか。

SD14のユーザーがこのカメラを購入した理由は、FOVEONセンサーが搭載されているから、というのがほぼ唯一の理由ではないかと想像します。オートフォーカス性能やその他の細かい所では、多くの欠点があります。それを承知で入手したのなら、欠点を論うより、優れた点を創作の為に生かしてはどうでしょう。少なくとも私は、SD14がFOVEONでなければ買いませんでした。

SD15が発表になりましたが、何時発売になるのでしょうか。SIGMAさんも悪戦苦闘しているのかも知れません。SDが好きと腹を決めたら、じっくりと待つことといたしましょう。画像の改善がなされることは間違いないでしょう。個人的には、バッテリーの装填場所の蓋をもっと頑丈にして欲しい、もう少し防滴性能を上げて欲しい、フリーズはしないように、などがあります。
(2010/3/8)

FLDガラスが楽しみ

本題に入る前に、又もしつこくファインダーについて、私の個人的意見を補足させてください。

フィルム時代は、一眼レフと云えば35mm判のカメラを指すのが常識でした。(645や6×6、6×7もありましたが)
デジタルカメラが一般化すると共に、様々な大きさの受光センサーが使われるようになり、ファインダーの大きさも多様化しました。35mm判とAPS-C判を比較すると、長辺方向でAPS-C判の方が35パーセントほど小さくなります。フォーサーズ判なら、約半分という長さです。いかにも小さい、と感じるのは当然かもしれません。

しかし、像倍率については、なるべく35mm判の感覚を損なわないで使えるように、0.7から1.0の間に設定して作られています。人間の肉眼が感じ、捉える実被写体の大きさとファインダー上の像の大きさの間に極端な落差がないように出来ています。だからこそ、多くの人がフィルムカメラからデジタルカメラに移行できたのでしょうね。(出来ない人、したくない人
もいますけれど)

私も、最初はファインダー全体が縮小して見えて、APS-C判のファインダーに若干の違和感がありました。でも、使っているうちにすぐ慣れてしまいました。構図の組み立てやピント合わせの感触は、従来の35mm判とほとんど同じだったからです。SD14と15は、像倍率が0.9ですから、フィルム時代のカメラと比較して(ファインダー面積以外は)劣るどころか、むしろ優秀な方に属すると思います。

最新機種の中には、倍率1.0ないしはそれを超えるものがありますので、SDが飛び抜けて優秀とは云えなくなってしまいましたけれど、ファインダー全体のクリアーさ、ピントの山の掴み易さなど、総合的には優れたカメラだと思います。将来のSD16(?)以降では、是非とも倍率1.0にして欲しいというのが私のSIGMA様へのお願いです。

ファインダーの評価で難しいのは、どんな被写体(あるいはテーマ)か、どのような環境(町の中、自然の中、光量の多い場所か少ない場所かなど)で撮影するかで、人間の感覚が違ってしまうことです。私のように、光の少ない森の中、曇り日や小雨の降っている時に野の花を撮る人間にとっては、SDのファインダーはとても使い易いのです。でも、まったく違った状況で創作の道を進んでいる人にとっては、高く評価されない場合もありましょう。本当に難しい問題ですね・・・・。

さてさて、本題はFLDガラスです。去る2月22日にSIGMA社が正式発表した中に、新光学ガラスFLDがあります。SD15や新レンズが沢山あって、発表全体の中ではあまり注目されていないかもしれません。私は、このFLDにとても関心を持ちました。

F Low Dispersionというガラスです。蛍石に匹敵する性能があり、しかもコストが安いとのこと。この説明のとおりであれば、まさに理想的なガラス、と云えそうです。蛍石を最初に使ったのは、キャノンのFDレンズでした。300mmを超える超望遠系のレンズに使われていました。当時から、その性能への評価は高く、私にとっても憧れのレンズでしたが、ものすごく高価なものが多く、安易に手を出せないのが実情でした。

今回、8-16mmF4.5-5.6 DC HSM、70-200mmF2.8 EX DG OS HSM、17-50F2.8 EX DC OS HSMに、蛍石に匹敵するというFLDガラスが導入されているとのこと。いやはや驚きました。とくに70-200mmF2.8は、是非とも使ってみたいものです。OSが付いているのも大きな魅力です。写真はカメラの性能も大事だが、もっと大きな要素はレンズです。涎が出てきました。

このFLD、大口径レンズに使用すると抜群の性能を発揮するであろうと想像します。しかし、私がもっと期待しているのは、FLDガラスを使って、高性能の高倍率ズームを作って欲しいということ。たとえば、17-170mmF4.5 EX DC OS HSMなどというレンズが欲しいのです。高倍率ズームは今まで、性能は二の次で「便利さを追求したものだから、この程度の写りで仕方ない」と思われてきました。私は18-200mmF3.5-6.3 DC OSを使っていますが、ボケ味とF値にやや不満を持っています。

長時間の山歩き、長期間の旅行などでは、大口径レンズを何本も持って行くのが難しい、という場合があります。また、体力が衰えた高齢者、障害のある人も、重たいレンズは大きな負担になります。実は人の体に優しいのが、
高倍率レンズの利点の一つなのです。安価で高性能なFLDガラスがあるのなら、それを高倍率ズームの高画質化に生かしてもらえないものでしょうか。

多くの高倍率ズームレンズ・ユーザーは、「性能はどうでもいい」などと思っているわけではない、と思います。

高倍率ズームを安価、安易、便利というだけでなく、高性能という要素を加えて、文字通り新しいスタイルのレンズを開発してもらいたいと熱望します。F値はあまり明るくできないでしょう。大口径にすると、お化けみたいなレンズになる。重く大きく、コンパクトさが損なわれても困ります。F4.5かF5.0あたりで妥協できないかと考えています。お願いいたします。
(2010/3/11)


SD14のユーザーになるべきでない人とは

私がこのコラムを書き始めたのは、私自身がSD14の画質に納得したので、その素晴らしさをまだ知らない人に、ささやかでつたない情報をお伝えしたいと思ったからです。しかし、私がこのカメラに行き着くには、それなりの紆余曲折がありました。一気に、その優れた本質を把握できたわけではありません。

また、SD14を素晴らしいと思うかどうかは、客観的事実以上にカメラを使うユーザーの主観的判断と好みによって変わります。このコラムは、私がSD14を良いと判断した、個人的な意見を書いているものであることをしつこくお断りいたします。

もしも、私の意見を鵜呑みにして安易にSD14を購入してしまうことがあっては、大変なご迷惑をかけることになります。以下のどれかに当てはまる人は、SD14のユーザーになってはいけないと考えました。ご参考にしてください。

(1)デジタルカメラの純粋な初心者。パソコンのモニター上で、コンパクトデジカメの画質と一眼レフの画質を、まったく見分けられない人。まずは、デジタルカメラの操作や撮影の訓練をするのが、当面の課題です。

(2)「RAW形式のデーター」という意味が分からない人。ここでは詳しく説明しませんが、SD14は、RAW形式で撮影しなければ、その秘めたる能力、性能を余すところ無く発揮できません。JPEGしか使わない人にとっては、何の価値もありません。

(3)有名ブランドのカメラとレンズでなければ満足できない人。あるいは、写真仲間と同じ機種でないと不安な人。有名ブランドのカメラ会社のカメラクラブ会員になっている人。

(4)フィルムの富士ベルビアのような鮮やか、高コントラストの色調でなければ駄目な人。SD14の色調は、どちらかという温和しい素直な発色をします。また、エッジの立ったシャープ感満点な第一印象を好む人。

(5)スポーツ、競馬、列車、野鳥などの野生動物など、動きのある被写体がメインという人には、使いづらいカメラだと思います。

(6)カメラに手振れ補正装置が付いていないと駄目な人。シグマには、OSというレンズ内手振れ補正のあるレンズがありますが、全レンズがOS化されるにはまだまだ時間がかかるでしょう。

(7)感度を800くらいで使うことが頻繁にあり、かつノイズは許せないと思っている人。

(8)現在使っている一眼レフに十分満足している人。あるいは、これ以外は考えられないほどに惚れ込んでいる人。

(9)パソコンの操作が面倒で、できるだけ複雑な画像処理はしたくない、と思っている人。SD14の画像は、ノイズの処理など、他のカメラと比べると、やや丁寧で思いやりのある画像処理をしなければなりません。難しいという意味ではありませんが・・。

(10)SIGMAと聞いただけで拒否感のある人。

(2008/10/6記)