♪チャラリラリラリランララ〜 ランランラララン〜♪ 長年の愛を実らせ、結婚した小次郎と健は、リフォームしたての日向家へと入った。 しかし、息子の為とはいえ仕方なく同性結婚を許したものの日向母の気持ちは複雑だった。 そして母以上に困惑したのが妹の直子であった。 父を殆ど知らずに育ったために、小次郎に対して兄だけでなく、父としての姿も重ねて 通常の兄妹以上に慕っていた直子は自分から離れていった小次郎への寂しさを持て 余していた。 そんな母子はあ・うんの呼吸で、嫁となった健への『日向家の嫁としての躾(八つ当たり)』に 燃えていた。 こんな複雑な感情うごめく日向家の時間が平穏に過ぎていくなど無理なのかと、 頭を悩ませる小次郎であった。 (語り 石○浩ニ風) 第二話 新たな絆 ぱんぱんぱん…と、快晴の空の下、布団を叩く音が新しくなった日向家にこだましていた。 自分達の部屋の窓の手すりに布団を干し、布団叩きを手にする新妻・若島津。 (気持ちいいな〜。 こんなに天気だから布団もふかふかになるよね) 今晩、そのふかふかな布団に寝る幸福感を考えると、知らず知らず布団を叩く手が力を増し、 バンバンバン・・・という音に変化していった。 「健さん!!!!!!!!」 向こう三件両隣にまで響きそうな声とともに、ほんわかしていた気分を吹き飛ばすような勢いで 飛び込んできた義母に、若島津は慌てて振り返った。 「なっ、なんでしょうか、お義母さん」 この時点で、ノックも無しに部屋に入り込んでくるというプライバシーそっちのけの義母の行動に 気付くほどの余裕は若島津にはなかった。 「なんてことをしているのーー!!!!!」 「えっ?」 義母がこめかみにベタな怒りマークに見える程の青筋を立てて怒っている理由が若島津には 分からなかった。 「それよ、ふ・と・ん!!!!!」 「今日は天気が良かったので、布団を干したんですよ」 にっこりと説明する若島津に義母はきぃぃぃぃぃーーと、超音波のような歯軋りをしたかと 思えば、日向ばりの鋭い目を若島津に向けた。 「布団叩きのことよぉーーーーー!!!!!!」 「その布団はまだ買ったばかりなのよ。これからずっと使っていかなくてはいけないのに、 そんなバカ力でバンバン・バンバン叩いていたら、中の綿が切れちゃうでしょう!!!!!」 どうやら新婚さんの布団は羽根布団ではなく、昔懐かしの綿布団だった。 「最初の頃は、そんなにバンバン叩かなくても湿気も埃も出ないでしょ。それとも何か 必要以上に湿気の篭るようなことでもあるの?」 義母の視線がちらりと若島津に刺さった。 やりたい盛りの年頃の新婚さんですから、布団は安らぎの場だけではないと承知の上での 義母の言葉に若島津は無言で紅くなった顔を俯かせていた。 「痛んだから即買い直しなんてのは母として認めません! クジラの様に無駄なく使うと いうのが日向家のモットーです! 覚えておいてね!」 クルっと音がするのではと思うほど勢いよく、向き直ると義母はすたすたと彼らの部屋から 出て行った。 緊張の糸が切れたように、その場にすとんと座り込んだ若島津のもとに、どこに居たのか 小次郎がかけつけた。 「大丈夫か、若島津」 両肩を優しく揺らすと、呆然となっていた若島津の目に焦点が戻ってきた。 「ひゅう…がさん…」 「すまない、若島津! 庇ってやれない不甲斐無い俺を許してくれ!」 猛虎の姿をすっかり潜め、必死で謝る愛しい旦那に新妻は優しく微笑んだ。 「いいんですよ、日向さん。俺はあんたの嫁として、日向の嫁として立派になってみせます」 「若島津……」 小次郎ががしっ!と若島津を抱きしめた。 「本当にすまねぇ……お前が大事なことに嘘は無いが、苦労を掛け続けた母ちゃんには 頭があがらねぇんだ」 若島津は小次郎の肩に頬を乗せ、背中に回した手で小次郎の背を抱きしめた。 「あんたが居てくれれば、俺はどんなことだって耐えられます。だから気にしないで下さい」 「若島津!!」 長年連れ添ってきた心強い相棒が、こんなにいじらしい妻になったことに、小次郎は心から 幸せを感じていたのだった。 第二話 『新たな絆』 完 第三話(クロウさん脚本)をお楽しみに♪ |