熊野那智大社は、和歌山県那智勝浦町にある神社である。
神倭磐余彦命が、熊野灘から那智の海岸に上陸したとき、那智の山に光が輝くのを見て那智の大滝をさぐりあて、八咫烏の案内で大和の地に着き、神武天皇となった。
その時に、那智の瀧を大己貴命の霊代として祭られたのが那智山信仰の起こりと伝えられている。
その後、仁徳天皇5年(317年)熊野灘を望む現在地に社殿が建てられた。
現在の社殿は、江戸時代末期の1851年から1854年にかけて建立されたもので、国の重要文化財に指定されている。
第1殿滝宮、第2殿証誠殿、第3殿中御前、第4殿西御前、第5殿若宮、第6殿八社殿が直角に並んで建てられている。
第4殿に主祭神の熊野夫須美大神(くまのふすみのおおかみ)が祀られ、本宮、速玉大社と同じく12柱が祀られている。
熊野夫須美大神は、イザナミノミコトともいわれ、万物の生成、育成を司り、農林水産漁業の守護神、縁結びの神様としても崇められている。
熊野那智大社では、滝を御神体とする飛瀧権現(ひろうごんげん)を祀ることから、「十三所権現」とも呼ばれる。
那智の滝は、133mと日本一の落差を誇り、御滝拝所からは、水しぶきの元で壮大な滝を眺められる。
「紀伊山地の霊場と参詣道」の一つとして、2004年に世界文化遺産に登録されている。
JR紀勢本線那智勝浦駅からバスで「那智山」下車、徒歩10分。参拝者用の有料駐車場がある。(Y.N)
那智の扇祭りは、毎年7月14日行われる那智熊野大社の例大祭で、「那智の火祭」「那智の扇会式」とも呼ばれる。
滝をかたどった大きな木の板に扇と奉納された鏡を取り付けた「扇神輿」が、社殿から那智大滝前の飛瀧神社にお渡りを行い、神々が扇誉め神事によって新たな生命力を獲得するという祭礼である。
巨大な松明に火をともした勇壮な集団が先導し、参道石段で氏子たちが里帰りする扇神輿を迎える。