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邦訳
セルマ・ラーゲルレーヴ『幻の馬車』、石丸静雄訳、角川文庫、1959年
原著(スウェーデン語)
Selma Lagerlöf: Körkarlen, 1912
作品概説
 年末になると読みたくなる話。わたしにとっては、北欧文学の中でも、特にラーゲルレーヴを研究しようと決めるきっかけになった作品です。
 作品は、大晦日の夜、救世軍のシスター・エディットが、死の床でダヴィッド・ホルムという男を待っているところから始まります。 ダヴィッドは、もとはまじめでハンサムな若者でしたが、今は酒におぼれて仕事もせず、妻子をほったらかして遊びまわっています。結核を患っているのに、療養もしようとしません。 エディットはダヴィッドにうつされた結核で死につつあるのですが、最後に彼と話して、改心させたいと思っています。一方のダヴィッドは、飲み歩く途中、突如喀血して倒れます。 その時思い出したのは、「大晦日、12時の鐘が鳴る間に死んだ者は、次の1年間、死神の馬車の御者となって、死に瀕した者のところへ行き、魂を刈り取らねばならない《という言い伝えでした。倒れたダヴィッドは、死神の馬車に乗せられ、去年の大晦日に死んで、今最後の仕事をしている御者とともに、エディットを含め、死に瀕した人々の間を巡り、死の国へ送ります。 最後はちょっとご都合主義的ですが、わたしは、基本、善い人が出てきて善いことをする話が好きなので、ミラクルフィットです。大晦日から年明けまでの数時間という、時間の使い方がとても上手いです。
 原著タイトルは、『御者』。デュヴィヴィエの映画タイトルが『幻の馬車』で、いくつかある邦訳は、すべてこのタイトルです。作中の御者は、とてもカッコよく、最後あたりを読んだ時に、「だからこの作品は『御者』というタイトルなのか!《と紊得する活躍を見せるので、もしわたしに訳す機会があれば、原タイトルを使いたいです。 表紙には、ムンクの「病める子《か、コルヴィッツの「死は慰む《を使いたいなーと妄想してみたり。ちなみに、結核撲滅協会の依頼で書かれた作品なので、登場人物の死因はすべて結核です。
 著者のラーゲルレーヴは、1858年モールバッカ(ヴェルムランド地方)生まれ、1940年同地没。裕福な領主家に、5人兄弟の4番目として生まれますが、近代化に伴って家は没落し、父親はアルコール依存症で亡くなっています。 本人は、女学校の教師をして生計を立てますが、『イェスタ・ベルリングのサガ』(邦題『ゲスタ・ベルリング』)でデビューして以来、順調な作家生活を送り、1909年に女性として、スウェーデン人としてはじめてノーベル文学賞を受賞します。 授賞理由となった作品は『エルサレム』で、日本では、『ニルスのふしぎな旅』が有吊です。
その他の邦訳作品
・野上彌生子訳『ゲスタ・ベルリング』「野上彌生子全集 第Ⅱ期 第十八巻 翻訳1《所収、岩波書店、1987
・佐々木基一訳『地主の家の物語』、小山書店、1951
・石賀修訳『エルサレム 第1部』、岩波書店、1942
・イシガオサム訳『エルサレム 第2部』、岩波書店、1952
・イシガオサム訳『キリスト伝説集』岩波書店、1955
・中村妙子訳『むねあかどり』、高瀬ユリ絵、日本基督教団出版局、1989
・うらたあつこ訳『聖なる夜』、イロン・ヴィークランド絵、ラトルズ、2007
・香川鉄蔵、香川節共訳『ニルスのふしぎな旅』、偕成社、1982
・菱木晃子訳『ニルスの上思議な旅』、福音館書店、2007
・石丸静雄訳『乙女のふるさと』、三笠書房、1956
・山室静訳『幻の馬車』、遠藤周作編『キリスト教文学の世界 13』所収、主婦の友者、1977
・イシガオサム訳『ポルトガリヤの皇帝さん』、岩波書店、1981
映像化
・ヴィクトル・シェーストレーム監督・主演『霊魂の上滅』、1920年(スウェーデン)
  無声映画です。イングマル・ベルイマンにも影響を与えた、映画史上に残る作品。
・ジュリアン・デュヴィヴィエ監督『幻の馬車』、ルイ・ジューヴェ主演、1936年(フランス)
リンク
・IMDb内シェーストレーム監督映画『霊魂の上滅』紹介ページ(英語)
・作家に関するリンクは、当ホームページ内のリンク欄「ラーゲルレーヴと北欧文学《をご覧ください。