研究調査レポート No.10
2015年7月5日
2015年7月12日改定
鉄道の運転設備を見る
その2 北海道新幹線在来線共用区間の駅設備を見る
永瀬 和彦
筆者は今年2015年の5月に,、来年開業する北海道新幹線の在幹共用駅の奥津軽いまべつ駅及び木古内駅周辺を訪れた。以下に現地の状況を紹介する。
1、奥津軽いまべつ(現津軽今別)駅
写真1に工事中の当駅の幹線部分の線路を示す。下り線は退避線付、上り線は棒線の2面3線駅である。一方、在来の下り線には通過線はなく、当駅は全列車の待避を原則とした配線で、退避線2本を持つ。副待避線中央部分は、現在は在来線下り旅客ホームとして使用中である。近く現行ホームを撤去して、副待避線を完成させると見られ、白鳥の当駅通過はこのためと思われる。在来線の函館方を見ると、写真2に示すように在来線用の「火災列車停止位置目標表示灯」が2線分設置され、その先には副待避線用の軌道が既に敷設されているのがわかる。在来上り線も同様の構造で、新幹線開業時には、当駅は幹3、在4本の線路を持つ大駅となる。現在は、旅客通路が幹線軌道を横断しているため、「新幹線の踏切」が存在する。夜間に行なわれている高速走行試験の際は、構内は全面封鎖されるので、新幹線踏切の遮断竿が実質機能することは、少ない模様である。
写真1 奥津軽いまべつ駅幹線用線路と幹線ホームを函館方から見る、中央線路が下り通過線
写真2 奥津軽いまべつ駅在来下り線を青森方から見る。表示灯後方には、敷設途上の副待避線用軌道が見える
2. 「現代の追分」こと、在来線と新幹線との分岐・合流点 「渡島追分信号場」
北海道新幹線の在幹共用区間約87kmのほとんどは、現在の「津軽海峡線」である。従って、海峡線の起点・新中小国信号場と終点・木古内駅近くには、在来線と新幹線との分岐・合流点が設けられる。この地点に設置される分岐器は、秋田新幹線の神宮寺や刈和野構内にある在幹の軌道を分岐させるのとほぼ同じ構造である。木古内駅の青森方に新設された分岐・合流点を、写真3に示す。手前が三線軌道の共用区間である。
いにしえの時代に街道が分岐する宿場には、「追分」なる地名が付けられた。江戸時代の街道に代わる新街道として登場した鉄道にも、近くの宿場の名をとって、あるいは、鉄道独自の分岐点の駅名として、「追分」を名乗る停車場が多く存在する。鉄道で「追分」の初名乗りを上げたご本家は、室蘭・千歳線の追分駅であり、その後に、本州でも複数の追分駅や、地名を冠した追分駅が現われた。筆者は現代の「追分」であるこの地点を、「渡島追分」なる愛称を付けては如何かと思う。北海道新幹線の本州側の新中小国信号場の近くにある在幹分岐点も、これに合わせて、「津軽追分」又は「奥津軽追分」と命名することを希望する。
国交省、機構及びJRから北海道新幹線に新たな停車場や信号場を設置するとの発表はない。とすれば、両方の分岐・合流点は直近駅の構内と見做すと思われるから、この提案に対しては、「停車場ではないから名称を付与することはあり得ないし、同一駅に複数の駅名をつけると混乱を招く。」なる官僚的な答弁が期待できそうである。しかし、省令に反すると思われる無資格駅長「たま」が和歌山電鉄沿線に大きな経済効果を招いたことを考えれば、新たに開業する新幹線のいろいろな分野に、このような柔軟な考えを導入しても良いのではないかと思う。
写真3 「渡島追分信号場」(筆者命名)、手前が3線軌道区間、先方が函館方