研究調査レポート No.7
2010年12月15日

JR西日本運転操縦理論セミナーにおける実技研修の実施

-  連結操縦技量確認試験の実施

 

鉄道輸送の主役を蒸気機関車が担っていた遠い昔、ショー・トランナーと言われたSLでも1仕業の連続運転距離が500㌔近くに達する機関車(例えば、小樽-釧路間470キロ)もありました。しかし、これは例外に属し、多くSLの1仕業走行距離は150キロ程度で、例えば、東北本線で上野を出た列車を引く機関車は全て白河で交換しました。だから、貨物列車や旅客列車の牽引機は始発駅での連結作業が行われるのは当然として、途中駅でも乗客が乗った列車に対しての連結作業が普遍的に行われていました。そして、機関車乗務員も出区から入区までの間に日常的に何度も解結作業を経験していたのです。

電車やディーゼル動車が鉄道旅客輸送の主体を担っている現代でも、新幹線を含めての電車を中心とした分割・併合は各地で行われています。しかし、連結作業が行われる駅や列車の割合は昔に比べ圧倒的に少なく、連結が乗務仕業に含まれている行路は限られています。営業列車での連結作業を全く経験したことのない運転士も少なからず存在するのです。

ところで、連結は運転操縦の中で最も注意を要する作業で、その理由は「専ら人の注意力依存する運転で、ATS等のバック・アップが一切ない」、「低速のために速度計が動作しない」、「連結した瞬間に停止させなければならい」などのためです。このように、連結は運転操縦のなかでも非常に難しい作業であるのに、これについての組織的な調査や研究は過去に貨車で行われたに過ぎません。

そこで、JR西日本運転操縦理論セミナーでは、この問題をテーマに取り上げ、阪和線日根野電車区で2234両編成電車2編成を使って試験を行いました。試験では駅側からも連結担当者が参加し、一方の編成を多様な速度で他の編成に連結させ、連結時のブレーキ作動条件も変化させました。結果の概要は先の第17回鉄道技術シンポジウム(J-Rail2010)で発表しましたが、時速3㌔以上の速度で連結すると、被連結車両は連結時の自連力により車輪が微小滑走するので、これ以上の速度での連結は避けるべきなどの貴重な知見が得られました。  

写真  日根野電車区で連結合図を担当する駅側社員も参加しての連結試験の状況 

試験の計画と実施を担当されたJR西日本大阪支社、吹田工場及び日根野電車区の方々には大変お世話になりました。



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