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幾何公差
3.16 最小実体公差方式(まるL)

最小実体公差方式(LMR)は、対象とする形体がその最小実体状態(LMC)から離れるときに、指示した幾何公差を増加させることができる。つまり、体積が最小の状態から、増える方向になると、俗に言われるボーナス公差が付加され加算されるというものです。
 最小実体公差方式(LMR)は、穴等の周囲の厚さや、リブのボス等一定以上の厚みを確保するときに有効です。

1.用語解説
1.1 最小実体状態(LMC)
   形体のどこにおいても、その形体の実体が最小となるような許容限界寸法、例えば、最大の穴径、最小の軸径をもつ形体の
  状態
1.2 最小実体寸法(LMS)
   形体の最小実体状態を決める寸法

2. 最小実体状態(LMC)とは。
 軸は許容される最小寸法で、穴は許容される最大寸法で最小実体状態になります。
                                                       

 

図例

最小実体状態(LMC)

φ29.9

φ40.1

最大実体状態(MMC)

φ30.1

φ39.9

 ※1. 最小実体公差方式と最大実体公差方式の実体状態は、体積の最小、最大が真逆になりますからご注意下さい。
 2. MMRもLMRも実体状態が基準になり、公差が緩和されます。

3. 例
3.1 最小肉厚を位置度で示してある場合(端面と穴)
 a) 図面例
     公差域にまるLを適用すると、位置度φ0.4 は、穴25は最小実体状態のφ25.1にのみ適用され、穴の大きさが小さくなれ
    ばその分だけ公差が緩和される。

 


 b) 必要とする最小肉厚の計算(下図参照)。
     30-(25.1+0.4) / 2=17.25 

 

 ※ 穴がφ24.9(MMC)の場合、25.1-24.9で0.2小さくなるので、位置度はφ0.4にφ0.2加算されφ0.6になる。

 c) 公差線図                                                   

穴径(φ)

位置度(φ)

    24.9 (MMC)

0.6

24.95

0.55

25.0

0.5

25.05

0.45

    25.1 (LMC)

0.4

 

   ※穴径φ24.9では、部品の体積が最大となり、最小肉厚17.25も確保されます。

3.2 段のある軸の同軸度
  公差域にまるLを適用すると、同軸度φ0.4は最小実体状態のφ34.8にのみ適用され、円筒の直径が大きくなるにつれ、公差値が緩和できます。
 a)図面例 

 

 ※ 最小幅(厚さ)確保に使えるます。

 b) 必要とする最小厚さの計算(下図参照)
    ((34.8-0.4)-20.1) /2=7.15

 


c) 公差線図

円柱の直径(φ)

公差域(φ)

35.2 (MMC)

0.8

35.1     

0.7

35.0     

0.6

34.9     

0.5

34.8 (LMC)   

0.4

※穴が35.2(MMC)の場合、35.2-34.8でφ0.4大きいので、同軸度はφ0.4に0.4加算されφ0.8 になります。

 

※軸径35.2は体積が最大になるので最大実体状態(MMC)になります。

4. パイプの肉厚確保の場合例
 この場合も上記3.2の段のある軸の同軸度と同じ理屈、同じ結果になります。   

 

        

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