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○ 私の考える図工教育
自分の作品と向き合い表現する活動を通して,自らを見つめ,課題に立ち向かいよりよく生きようする強い意志や心を養うとともに,作品を完成する喜びを味わい造形的な創造活動の基礎的な能力を育てる。
・ 全ての児童が成就感を味わえる作品の完成をすること
・ 真摯に作品と向き合い,自分の全精力を傾けた作品作りをさせること
・ 学年や固定的な能力にこだわることなく,児童の持っている可能性を信じてできるだけ質の高いものに取り組ませること
・ リアリティーを求め,「もの」を見つめ自分の中でかみくだき,再構築する作業を大切にする。 ○ 図工教育でできること
・ 真摯な作品作りを通して,人間的に豊かに成長させる。
・ 困難なことを乗り越え作品を作り上げることを通して,成就することの喜び,美しいものを作り出す喜びを味わわせる。 ・ 友達と学び合うことを通して,心を通じ合いお互いを認め合う心を育てるとともに,心を開き合った学級作りを進める。
・ 絵画や版画,立体作品作りを通して,技能を高めると共に「自分にもできる」という自信を持たせる。
・ 児童の可能性を引き出すことによって,教師と児童の心を通じ合い信頼関係を深める。
2 私の実践
○ 「自画像」
・ 自分の顔を描くことは,自分を見つめることであり,自分の命を見つめることである。私は,毎年のように,「自画像」を描かせてきた。3学期の一年が終了する前であったり,最初の段階であったりしたが,「自分を見つめる」という仕事を通して,命の尊さや自分を大切にするということを子ども達に伝えてきた。
・ 『「目」は,心のまなこです。目には,その人の心がよく現れます。目をかくことは心を描くことです。』
・ 『「鼻」は,空気を吸い,はき出す所です。私たちの命をつないでいる大切な場所です。息が通るように描きなさい。』
・ 『「皮膚」は生きています。細胞の一つ一つがつながり,私たちの体を作っています。皮膚の作られている皮膚の作られている方向を大切にしながら色を塗りなさい。』
・ 『私たちの体に,肌色という色はありません。一人一人,みんな違います。自分で色を作り出し,自分の色で肌をかいていきなさい。』
・ 『「髪の毛」は,一本一本生きているのです。美しいしなやかな髪の毛を一本一本大切に描きなさい。』
・ 『「首」は,顔の後ろにあります。首は,顔を支える大きな柱です。顔を支えられる首をかきなさい。』
○ 「くつ」
・ 「くつ」は,子ども達を学校に運び,駆け回り遊ぶ足を支えます。子ども達のくつは,すぐ真っ黒になり破けます。子どもの活動のバロメーターになっているのがくつです。健康で活発な子ども達の使い込まれて汚れてしまったくつは,愛着があります。自分の足を支えてくれているくつに愛情を持って描いて欲しい。くつだけでなく,自分の成長に関わる全てのものに感謝する気持ちを持って欲しい。そんな思いがあって,私は,くつを描かせます。
・ 『「くつ」には,足が入ります。足を入れられるくつを描きなさい。』
・ 『くつは,やわらかい素材でみなさんの足を守っています。くつの柔らかさを表現できるようにがんばってみましょう。
・ 『「くつ」のそこには,みなさんの足を守る厚みがあります。くつ底のあつみを描きましょう。』
・ 『足のはいるところには,空気があります。空気を描くつもりで表現しなさい。』
○ 「風景画」
@ 「学校の木」
・ 学校の木は,何十年もそこに立って,子ども達の成長を見守っています。そして,たいてい大木が1,2本あるものです。愛校心とか,学校を大切にとか言う前にそこにある木を愛情を持って描かせてみるとよい。自然の素晴らしさや美しさを肌で感じるだけでなく,自分を育ててくれる学校にも感謝の気持ちを持つに違いありません。
・ 『「木」は,6年間いつもみなさんの成長を見守っています。その木に感謝しながら画面いっぱいに木を描いていましょう。』
・ 『「木」は,大地に根を張って大きく上に伸びています。どっしりとたくましい木になるように描きましょう。』
・ 『「木」の肌は,どうなっていますか。さわって確かめ,木の命を感じながら木の肌を表現しましょう。』
A 「寺」
・ 私の勤めた小学校のすぐそばに,「台雲寺」というお寺があります。その山門は,ずいぶん古い木造の建物です。古い歴史とその造形の美しさを表現しようと「山門の絵」に取り組みました。木の古さ,木組みの巧みさを表現することで,子ども達は何かを感じ取ることでしょう。
B 「城跡の石垣」
・ 延岡城跡の石垣は,苔におおわれ歴史を感じさせられます。また,石垣の組み合わせは,大変巧みで美しいものです。なかなか城山まで行って絵を描こうという先生はいませんでしたが,土曜日,毎週通って石垣の絵を描きました。
C 「海」
・ 「海」は,広くて子どもにとって絵に描くことが難しいものです。焦点が絞りにくいのです。また,波は動いていて描きにくいものですが,これ以上雄大なものはありません。どんな表現ができるか,挑戦してみる価値はありますね。
D 「牛」
・ 牛は,とてもユニークな生き物で,私たちにとって身近です。5年生と6年生に牛を描かせましたが,いつも生き生きとした作品が生まれました。低学年が描く牛とはまたひと味違うリアルな牛を描くことができました。ある小学校では,5名の6年生を受け持ちましたが,牛の絵は,3名の作品が子どもの作品展でそれぞれ地区や県の入選作や推薦作になりました。5人とも,それまで生活面でも学習面でも力を出し切れず自信を失っていた子ども達でしたが,見事に立ち直りました。
○ 「共同制作」
@ 共同制作の意味
・ 学級全体で共同して何かを作り出すことの素晴らしさを体験させる。
・ そのことを通して,学級としてのまとまり,心をつなぎ合うことの素晴らしさを味わわせる。
・ 共に作品を完成する中で技術を学び合うよさ。
・ コミュニケーションを深め,よりよい人間関係を構築する。
A 「牛」
B 「田中正造」@
C 「田中正造」A
○ 国会で熱弁をふるう田中正造
○ 農民の暴動を押しとどめる田中正造
○ 天皇へ直訴を決行する田中正造
○ 死の直前の田中正造
3 「自画像」の実践から
○ なぜ自画像を描くのか
○ 自画像の描き方
・ 下絵を描く
描く順番 目→鼻→口→輪郭→耳→髪の毛→首→体(服)
ポイント 目・・・・ 画用紙の中心より少し上(じっくり時間をかけて)
鼻・・・・ 目と鼻は正三角形の頂点
口・・・・ 鼻下が広すぎないように,口の終わりの点を鼻と比べて
輪郭・・ あごの先端と頭の頂点の位置,左右のほほ骨の位置
ほほの位置を決める
髪の毛の先端を決める
耳・・・・ 隠れている人は見えなくても位置を決める
髪の毛・髪の毛の全体を描く
渦の中心を意識して。流れるように。
首・・・・ 顔の広さと比べて。細くなりやすい。
体・・・・ 首と服の間の空気に気を付けて
体の前にある髪の毛と体の後ろにある髪の毛に気を付けて
・ 色塗りの前に
黄色を塗る・・・・・・・・・・ 色を混ぜて使うことで,深みのある色に
黄色は,白以外ではもっとも明るい色
七つの色で,塗り込んでいこう
・ 色塗りの指導・・・・・・・・ 筆の先に少しずつ絵の具を付け,色を置くつもりで
パレットの中を池にしない
絵の具は少し出して,混ぜて使う(完全に混ぜない)
画面の上で,水を使って混ぜるつもりで
細胞にそって,筆の跡を残すように(1cm以上は動かさない)
血管・ふくらみ・皮膚や服の柔らかさを意識して
光と影をよく見て,色をなめらかに変えていく
色を拭き取る作業は,マイナスの色塗り
筆を拭く布は,必需品(スポンジではダメ)
筆は,最低2種類はもつ(ぺんてるナイロン製筆おすすめ)
色は,下絵の線からはみ出さないようにする。
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