ネーメ・ヤルヴィのアッテルベリ 交響曲第3番

タイトル交響曲第3番ニ長調「西海岸の風景」
作曲家クット・アッテルベリ
ネーメ・ヤルヴィ 指揮
エーテボリ交響楽団
CDCHANDOS CHAN10894

掲題曲は37分ほどの作品。CDには他に3つの夜想曲、管弦楽のための「ヴィットリオーソ」を収める。

オーケストラの壮麗な響きが好きである。室内楽や器楽曲に比して交響曲というジャンルをよく聞く理由の一つはそれだと思っている。しかし例えばホルスト「惑星」を跳び跳びに聴くことはあっても、全曲を通して聴くということはまずない。リヒャルト・シュトラウス「ツァラトゥストラはかく語りき」の冒頭は何度聞いても素晴らしいが、その後最後まで続けて訊くかというとそれもまずない。
ただ響きが快いだけではしばらく聴いていると飽きてくる。何らかの感情を揺さぶられないと長時間の鑑賞には堪えない。

アッテルベリの交響曲は耳触りが良い。同時代のニールセン等と比べても聴きやすい。そしてオーケストレーションも素晴らしい。映画音楽風などという評価をしばしば目にする気がする。しかし決して退屈しない。短めということもあるとしても、哀愁、懐かしさ、高揚感等音楽に込められている感情が豊かであるからだと思う。そして時々えっという壮大さを感じさせる瞬間があるのも魅力である。

アッテルベリは交響曲を9曲残しているが、実は7番以降は今書いた特徴はあまり当てはまらない。6番(1928年)と7番(1942年)の間は14年も空いている。7番以降についてはやはり新しい音楽の流れの中で自分の立ち位置を意識せざるを得なかったのではないか。7番はやや重くそう快感に欠けるし、8番は渋い(初演をラジオで聞いたシベリウスが感心して電報を打ったらしい。さもありなんと思う)。9番は北欧神話に基づく世界の始まりから終わりまでを描くカンタータ。壮大な音楽だが、あまり楽しんで聞く音楽には思えない。

6番までの交響曲中でこの第3番は比較的長く、また各楽章が海岸の情景なため、全体で一つの物語のように聴くことができる。それで一番よく聴く。

海をテーマにした交響曲というと、同じスウェーデンのアルヴェーンの交響曲第4番「海辺の岩礁から」、ヴォーン・ウイリアムズの「海の交響曲」がある。どちらも好きな曲ではあるが、前者は海を舞台にした恋人の物語、後者はホイットマンの詩による歌付で、海の香りはするものの、海そのものを描いたとは言えない。

3楽章構成で1.太陽の霞、2.嵐、3.夏の夜、と表題が付いている。

表題はついているもののリヒャルト・シュトラウスの交響詩のような音による描画ではなく、景色から受ける感銘が音楽になっている。特に半分近くを占める第3楽章が素晴らしい。夕方、真夜中、明け方、太陽が昇るまでを描くが、夜が明けてからの後半は、実際にその景色を前にして感じるよりもはるかに荘厳、壮大なのではないかと想わされる。

初稿2023/7/13