朝比奈隆/大フィルのアルプス交響曲

タイトルアルプス交響曲
作曲家リヒャルト・シュトラウス
朝比奈隆 指揮
大阪フィルハーモニー交響楽団
CDCANYON CLASSICS PCCL-50007

オペラはほとんど聴かないので交響詩に限った話ではあるが、リヒャルト・シュトラウスの音楽は興味の範囲には入っていなかった。派手な音響と、耳触りの良い旋律で興味を持って聴き始めても、それ以外何もないことに飽きてしまう経験を何度かしたためである。

それが少し変わったのは、N響の定期会員だったときに、サヴァリッシュ等が良く取り上げていたのを聴いたことによる。響きがとても気持ち良いのだ。プログラムに入っていると楽しみに思うようにさえなった。それも、シュトラウスは実演に限るという認識になっただけで、あえてCDで聴こうとは思わなかった。録音も数えるくらいしか持っていない。

朝比奈隆のアルプス交響曲も、北ドイツ放送交響楽団との録音(EMI 7243 4 76731 2 2 NDR10152)を、同楽団との貴重なステレオ録音という理由で買ったのがきっかけである。聴いて、響きが快いだけの音楽というシュトラウスのイメージとは随分違った。この録音を紹介しても良いのだけど、現在では入手困難であるのと、掲題の大フィルとの演奏も同じくらい良く、特に録音がずっと良いので、こちらの方を挙げた。私自身もこちらを多く聴いている。なお第一ホルンはシカゴ響の名手デイル・クレヴェンジャーがゲストで演奏している。

前述の通りシュトラウスはあまり聴かない。従って演奏の特徴も語れない。それではあんまりなので棚を探したらハイティンク指揮コンセルトヘボウのCDがあった。買ったのだから一度は聴いているのは間違いないが記憶にない。聴いてみたら、音による壮麗な絵画(あるいは動画)といった趣の私が持っているシュトラウスのイメージ通りの音楽があった。

どうもアルプス交響曲が他のシュトラウスの交響詩と違うというのではなく朝比奈隆の演奏が独特という事なのだろう。それならリヒャルト・シュトラウスがもともと好きという人には向かない演奏かも分からない。特に華麗さやヌケの良いオーケストレーションの響きは期待しない方が良いと思う。

替りに何があるかというと、開巻の「夜」から「夜明け」にかけてですぐ分かる、じっくりと組み立てられ、重ねられ、構成された音楽の持つ重厚さ、風格である。また、「花咲く草原」「山の牧場」の楽しさと安らぎ、「頂上にて」の感動、「悲歌」の哀愁等単に描写音楽ではない豊かな感情である。特に「終結」におけるしみじみとした味わいはその終わりに人生を振り返っているような深い感情に満ちていて涙が出そうになる。

演奏は当然ながら遅い。ハイティンクの演奏が50分そこそこなのに対し57分くらいある。 他にはマーラー3番の余白(?)に入っているシューリヒト/シュツットガルト放送交響楽団のものがあり45分ちょっと。シューリヒトはだいたい速いので参考にならないかもわからない。なおこれも独特な名演に聞こえるが、私の場合この曲でモノラルはつらい。

朝比奈隆のアルプスは他にオール・ジャパン・シンフォニー・オーケストラがあるが未聴。またた大部以前にベルリン・ドイツ交響楽団とのものが予告されていたような記憶があるが、未だに発売されていない。

追記

ベルリン・ドイツ交響楽団とのものがようやく発売された。1964年のセッション録音。シュトラウス生誕100年の企画で、朝比奈の本曲初振りという。セッション録音であること、初めての演奏であることもあるだろうが、なによりも56歳という年齢のせいだろう、本文で紹介した2つの録音とは随分違うものになっている。円熟味は無いけども、替わりに溌剌としていてエネルギッシュな演奏である。比べて速い印象なのだが録音時間をみるとそんなことはない。緩急や強弱の表情のつけ方が大きくそう感じるのだと思う。また全体的に明るい感じがする。こちらの方が良いという人がいても不思議ではない。私もたまにはこちらを聴きたいとは思うが、やはり録音の点では比較にならない(一応ステレオ)のでどうか。

初稿2015/4/11
追記2015/11/2