バルビローリ/ボストン響のシベリウス2番

タイトル交響曲第2番二長調
作曲家ジャン・シベリウス
ジョン・バルビローリ指揮
ボストン交響楽団
CDMEMORIES REVERENCE MR2366/2367

最近出たものである。2枚組で1枚目が掲題曲と「オックスフォード」、2枚目がエルガーの交響曲第2番である。ケースの表示を信じれば掲題曲は1964年11月7日のボストンシンフォニーホールにおけるライブとのこと。

MEMORIESというレーベルは調べたけども、結構入ってきているらしいということ以外、良くわからない。イタリア製である。手元を調べたら、どこかの店頭で、なんじゃこりゃ、と買ってしまったものの、あまりの音に2度目は聴いていないカルロス・クライバー「大地の歌」があった。その時はすっかりブートレグと思い込んでいた。これもケース裏の曲目リストの他は通常はブックレットが挿入されるところに、いかにも安っぽい表紙の裏にバルビローリの紹介が6行書いてある紙一枚が入っているだけ。日本語のラベル帯が付いているが輸入元の記載もない。タワーレコードやHMVといった大手でも扱っているが、何か素性が怪しい雰囲気がある。

ところが困ったことに無視できない名演である。そればかりか、いまのところ私にとってこの曲のベスト盤である。音も十分に鑑賞できるレベルだ。

これまでは同じバルビローリの1966年のハレ管とのスタジオ録音(EMI)を愛聴してきた。その悠々と、かつゆったりとした構えがスケールの大きさを感じさせる一方で、第2楽章などでやや冗長さも感じさせられてしまうことがあり、どちらかというと第一番の方を好んで聴いていた。

バルビローリという人は、ライブではスタジオ録音と比較して、情熱的で激しい演奏をしていたのではないかという気がしている。フィルハーモニアとのマーラーの6番は、良く知られているEMIのスタジオ録音と、ほとんど同じ時期(ライナーノートによるとwithin a few days)に行われたライブ演奏を聴くことができるが、両者があまりにも違うのに驚いてしまう。演奏時間でみてもライブの方が10分も短い。ベルリンの聴衆と楽団員を魅了したというマーラー9番も、現在同じベルリンフィルとのスタジオ録音で聴くことのできる音楽とはずいぶん違ったものであった可能性があると考えている。

シベリウスの2番についても、Testamentからライブ録音が出ている。1962年10月のロイヤルフィルとの演奏である。全体的にとがった演奏で、激しさがあり、緩急の振幅も大きい印象だ。この録音は緊張感に満ちている反面、潤いが無く、あまり聴かない。私はこの曲で凄く好きなところが2か所ある。スコアは見ないので小節の位置とか練習番号とか言うことはできないのだけども、一つは第一楽章の展開部の終わり近く、第2主題の変奏が盛り上がっていき、クライマックスで明るく転じてファンファーレが続くところ。もう一か所は終楽章の第一主題が完全な姿を現すところである。この2か所の、雲が晴れ太陽があたりを照らすかのような感が大好きである。ところがロイヤルフィルとのライブは全体が同じ調子でどんどんと過ぎてゆき、この2か所で太陽は照らないし、3楽章中間部のしみじみとした味わいもない。

掲題のボストン響の演奏も緩急のつけ方が大きくスタジオ録音に比べて緊張感に満ちているのは同じなのだが、それがかえって音楽に豊かな色彩を与えているように思う。先ほどの太陽も感じられるし、ゆっくりしたところは味わい深い。白眉は第2楽章であろう。スタジオ録音よりずっと豊かに表情付けされているが、作為を全く感じさせず自然であり、立体的で奥行きのある世界が構築されている。私としてはこの楽章の価値に初めて納得させられた。

録音は決して良いとは言えないが、ヒスノイズが目立つのを除けば、こもった感じも反対に無理やり高音を持ち上げたようなうるささも無く、少なくとも私には日頃の鑑賞にも十分耐え得るレベルである。

なおエルガーの2番は、そう頻繁に聴く曲ではないので、1964年のハレ管とのスタジオ録音や、ボールト等他の人の演奏と比較してどうとかは言えないのだけど、好演には間違いなく、一番より2番の方が曲としてはできが良いかなと改めて思わされた。

初稿2015/2/11