タイトル | 交響曲第9番「新世界より」 |
作曲家 | アント二ン・ドボルザーク |
ヴァーツラフ・ノイマン指揮 | |
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 | |
CD | 日本コロンビア COCO-70944 |
いくつかあるノイマンの新世界のうち1981年録音のもの。CREST1000シリーズの一枚。
マーラーやショパン等自分にとって重要な音楽を発見してからは、それまでたまたま家にあったからとか、耳になじんでいるからとか、有名だからとかの理由で聞いていた曲に全く興味が無くなった時期がしばらくあった。その後、たまたまじっくり聴く機会を持ったときに、「何だ良い曲じゃないか」という再発見をすることになる。「新世界より」もそのような曲である。
しかしながら、ベートーベン5番におけるカルロス・クライバー/ウィーン・フィル、6番のワルター/コロンビア響のように、不満が全く無い、他の録音はいらないと思えるような私にとっての決定版が「新世界より」の場合は無く、ずっと探していた。 評判の良いケルテス/ウィーンフィルやコシュラー/スロヴァキア・フィルも私にはもうひとつであり、ようやくクーベリック/ベルリン・フィルがほぼ満足できて、しばらくそれに落ち着いていた。
そんなときに、本録音を聴いてこんなところに理想的な演奏があったと感激したものである。「こんなところに」というのは説明が必要と思う。ノイマンという人が立派な音楽家であるのに疑問を持ったことがあるわけではない。しかしながらチェコ音楽と、チェコ有縁ではあってもドイツ音楽であるマーラーの音楽を同じ姿勢で演奏しているような中途半端さを感じていたのは事実である。この印象は、若いころに大枚をはたいて買った3枚組み「わが祖国」があまりにも聴きやすいクセの無い演奏だったことに期待を削がれたことや、マーラーを熱心に聴いていたころにFMで何度か聴いた演奏が、反対に独特の重苦しさみたいなのを感じてあまり共感できなかったことにより作られたものだと思う。ノイマンのドボルザークやマルチヌーの録音を見ても、そこそこの良い演奏だろうな、でも最高の演奏ではないだろうと思い込んでいたのである。
この演奏を聴き始めた途端そんな偏見は一遍に吹き飛んでしまった。一部のすきも無い構成、めりはりとスケール感、込められた心情の深さ、叙情性どれをとっても何も言うことは無く、最高の「新世界」である。
心を入れ替えて、他の録音も聴いてみた。これより古い1972年の演奏(日本コロンビア COCO-70589)も良い演奏であるが、スケール感も完成度も本録音に比べて一段下に感じられ、存在価値は薄く思う。1993年の録音(日本コロンビア COCO-73088、初演100年記念コンサートのライブ)は反対に構えが大変立派な演奏で、こういう演奏が好きな人もいるだろう。私はその分よそよそしさを感じ真情が後退しているようで、あまり好きではない。臨場感がすばらしい録音は魅力である。
初稿 | 2014/9/16 |