バルビローリ、ハレ管のシベリウス交響曲第1番

タイトル交響曲第一番ホ短調
作曲家ヤン・シベリウス
演奏ジョン・バルビローリ指揮
ハレ管弦楽団
CDThe Barbirolli Society CDSJB1018

バルビローリ、ハレ管のシベリウスというと1966年から1970年の録音からなるEMIの全集が有名で、その中の1番、2番、5番、7番は国内の廉価版で繰り返し発売されているので普及もしていると思われる。ここであげたのはそれとは異なり、1957年の12月に録音されたもので、バルビローリ協会から出ている2枚組CDに含まれる。このCDの一枚目はHMV原盤のモノラル録音で2番(1952年)、7番(1949年)、トゥオネラの白鳥、二枚目がパイ原盤のステレオ録音で5番(1957年)とこの1番からなる。

シベリウスの交響曲は1番、2番が好きで、特に北欧情緒がそのままに感じられる1番が好きだ。それに対し、内向的な傾向を持つ3番(3番については1楽章、2楽章はそうでもないが)以降の曲は7番を例外としてあまり聴かない。静かに物思いにふけっているような曲があまり好みではないからだ。一度、耳になじめば良く思えるのではないかと思い、最高作という人も多い第4番をipodに入れて持ち歩いて暇さえあれば聴くということをしてみた事があった(ベルグンド指揮ヘルシンキフィル)。そのような努力をしてもとうとう好きになれなかった。後期の交響曲の中で5番は聴き方によっては派手で力強いが、1番、2番の情緒的な単純さは無い。でもこれは時々聴く。

パイ原盤の1番、5番はLP時代はテイチクから廉価盤で出ていた。その頃から親しんでいる録音である。EMIの全集において1番だけは物足りなく感じていたので、最近この録音もCDで出ていると知ってすぐに手に入れた。全集版と比較して素直で、直線的な表現である。全集版の演奏も悪くはないが、そのいかにも円熟した表現よりは、この録音の若々しさ、荒々しさの方がこと1番に関しては合う気がしている。録音のせいもあるだろうが、ハレ管の演奏もこちらの方が素朴で力強く、曲想に適しているように感じられる。例えば冒頭のクラリネットソロは、全集版の方が表情も豊かで手慣れた感じであるが、この録音のより素朴な演奏の方が味わい深い。

他に、録音の良いものを聴きたいときに取り出すのは、ロリン・マゼール指揮ピッツバーグ交響楽団の全集の中の1番。この全集は前のウィーン・フィル盤全集より格段に良いものの、シベリウスらしさや各曲ごとの個性はあまり感じられない。まず良く分析し、上手に組み立てクライマックスで盛り上げると言う具合でどの曲も同じように聞こえる。後期の晦渋な交響曲も面白く聴ける反面、4番が5番に聞こえたり、5番が4番に聞こえたり、また7番のあのじわりと心の底から盛り上がってくるような感動がどこに行ってしまったのかと思わされたりする。だがそのようなやり方は1番には合うのか、曲の魅力を十分味わえる。

初稿2013/12/22