タイトル | 揚げひばり |
作曲家 | レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ |
演奏 | ヒラリー・ハーン(ヴァイオリン) |
コリン・デイヴィス指揮 | |
ロンドン交響楽団 | |
CD | Deutsche Grammophon 00289 474 5042 |
ヴァイオリン独奏、オーケストラ伴奏による16分くらいの作品。エルガーのヴァイオリン協奏曲を目的で買ったCDである。エルガーも良いが、組み合わせのこの曲は私にとっては思いがけない拾い物だった。ヴォーン・ウィリアムズの曲に初めて魅せられた。
高校時代に友人に半ば無理やり「南極交響曲」(交響曲第7番、多分プレヴィン/ロンドン響だったと思う)を聴かされて以来どうもヴォーン・ウィリアムズは苦手である。同じイギリス人のエルガーの作品はすんなり心に入ってくるのに、どこにどういう魅力があるのか良くわからない。ウォルトンの交響曲の方が魅力的に思えるから、エルガーに比べて新しいからという理由ではないようだ。全く聴いていないわけではない。いろんな曲のカップリングとしてバルビローリ指揮の交響曲も結構あるし、ボールトの交響曲全集の他プレビン/ロンドン響の演奏も幾つかある。たまに気が向いてそれらを聴くのだが、充実した響きに感心はするものの、魅力的な主題も無く、ひたすら重く暗く、退屈にしか感じられなかった。
この曲は短く聴きやすいということもあるのだろうが、それだけでなく非常に美しく詩的だ。スコアに書かれているという基になったジョージ・メレディスの詩がこのCDのブックレットにも掲載されている。そのため情景が思い浮かべ易いことも確かにある。飛び回るひばりの姿に孤独と気高さを感じ心が洗われる。何よりも淡々しい陽に照らされたイギリスの山林がまさに鳥瞰で目に浮かび、このようなイギリスの自然感抜きにはヴォーン・ウィリアムスの音楽は理解できなかったのではないかとふと思ったりする。
もとの英語のタイトルは"The Lark Ascending"である。「揚げひばり」という今ではあまりなじみのない言葉が訳として適当なのかは疑問だがタイトルは世の中に倣った。「上(のぼ)っていくひばり」の方がずっと良い気がする。
ヒラリー・ハーンのバイオリンもコリン・デイヴィス指揮のバックも、抒情的で美しく、曲の精神性も強く感じさせる名演である。
ヴォーン・ウイリアムズの曲の聴き方のきっかけが分かったような気がしたので、交響曲も今までよりは少しは多く聴くようにした。その結果第5番あたりは楽しめるようになってきた(バルビローリ/フィルハーモニア、ボールト/ロンドン・フィル)。
初稿 | 2013/11/14 |