タイトル | 大オーケストラのための「アトモスフェール」 |
作曲家 | ジェルジュ・リゲティ |
演奏 | クラウディオ・アバド指揮 |
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 | |
CD | Deutsche Grammophon 00289 477 6443 |
"GYÖRGY LIGETI:CLEAR OR CLOUDY"という4枚組のアルバムから。リゲティはハンガリーの人なのでリゲティ・ジェルジュとすべきかも分からないが、このタイトルに従った。
"Complete Recordings on Deutsche Grammophon"となっており、ドイツグラモフォンの有するリゲティの全録音なのであろう。「アトモスフェール」は1988年10月のムジークフェラインザールでのライブ。このアルバムでは同じライブから「ロンターノ」も録られている。
学生のころ住んでいた地方都市にウィーンフィルが来たことがあった。そのときの指揮者がアバドで曲目は「英雄」と「ジュピター」だったと思う。写真で観る格好の良い、いけ面というイメージとは違って、イタリアの気のよい兄ちゃんといった様子にとっても好感を持った。それで、時々はマーラーだのチャイコフスキーだのを買って聴いてみたがもうひとつ気に入ったのが無い。今のところこの録音がアバドでは唯一良く聴くものである。
この曲は映画「2001年宇宙の旅」で使われた曲として有名で、私同様この曲により現代音楽へのアレルギーが無くなったという人も多いのではないだろうか。「2001年宇宙の旅」では冒頭等の「ツァラツストラかく語りき」(ベーム/ベルリンフィル)、宇宙ステーションのシーンでの「美しく青きドナウ」(カラヤン/ベルリンフィル)が知られているが、実はリゲティの曲のいくつかが非常に効果的に使われていて、映画にとって重要な役割を果たしている。この曲は映画全体のクライマックスといって良いシーンで使われる。その他、無伴奏混声合唱のための「Lux aeterna」は本アルバムでも北ドイツ放送合唱団の演奏で聴くことができるが、「アトモスフェール」と同じくらい強い印象を与える「レクイエム」は残念ながら入っていない。私は「レクイエム」を聴きたいときはジョナサン・ノット指揮ベルリンフィル他のCD(TeldecClassics 8573-88263-2)を聴いている。
この曲はトーンクラスターの手法による曲であるという解説をわりと見る。正しいのか妥当なのかは分からない。映画においては光の洪水と共に押し寄せる音響の洪水に圧倒されるのは確かだ。しかしながら音だけを改めて音楽として聴くと、むしろ静かなところで、残った数少ない楽器が、かすかな音量でいろんな音を出しているようなところが凄い。本当にこのように聞こえることを計算して作曲しているのだとすると神業に思える。
録音もいろいろいじったのだろうとも想像するが、それにしてもそのような音の魔術をちゃんと分かるように聴かせてくれるアバドも見事だと思う。他の人の演奏のCDも持っているが、それではこのようなカラフルで奥行きのある音楽には聞こえない。
初稿 | 2013/9/15 |