朝比奈隆のハイドン交響曲92番、99番

タイトル交響曲92番「オックスフォード」
交響曲99番
作曲家ヨーゼフ・ハイドン
演奏朝比奈隆指揮
ベルリン・ドイツ交響楽団
CDWEITBLICK SSS0106-2

「オックスフォード」は1971年の、99番は1974年の放送用セッション録音である。これは、朝比奈隆が嫌い、あるいはハイドンには興味が無いという人にぜひ聴いて頂きたいCDだ。

かく言う私も、ハイドンは聴く気がしないという人間だ。交響曲の数が多い。まずどれを聴いて良いか分からない。次にこれだけ数が多いと一曲一曲の価値が薄いようにどうしても思ってしまう。N響定期で否応無しに聴いたこともあったとは思うが興味を持った記憶がまるで無い。気楽にかかれた実用音楽、交響曲に真剣に耳を傾けるのはモーツアルトからで良いなどとさしたる根拠もなしにイメージを持ってしまっていた。ハイドンが好きな人は激怒するかも分からない。すみません。

このCDも朝比奈隆とオケの組み合わせで買ったものの、しばらくほったらかしにしておいた。気が向いて聴くと、「オックスフォード」の第一楽章が鳴り出したとたん驚いた。ハイドンってこんなに綺麗な音楽をかいたのか。綺麗なだけでなくどこか影というか深みがある。99番の緩徐楽章などでは胸に迫るものさえある。今では良く聴くCDの一つになっている。

ことによると今までの人生で大事なものを聴き逃していたのではないかと思い、早速ワルター、コロンビア響の「V字」「軍隊」を取り寄せた。朝比奈のこの演奏に、どことなくワルターの演奏するモーツアルトの雰囲気を感じさせられたからである。でもこちらはあまり感銘はなかった。さてでは次は何を聴いたら良いのだろう。指針も無く途方にくれていて、ハイドン探索は今のところ頓挫している。

朝比奈隆が嫌いという人がいるのは知っている。世の中には、どこで滑ったとか転んだとかフィギアスケートの演技でも見るように音楽を聴く私には理解できない人たちがいるようだ(人の趣味はそれぞれなので別に否定するつもりはありません)。そういう人たちを別にすると、書物やインターネット上の記事から判断して嫌いな人たちの主な理由はどうも3つくらいありそうだ。第1は、ファンが嫌い。これは同意する。実演でもうんざりさせられる経験がしばしばあっただけでなく、残された録音でも終演後の早すぎる拍手や、汚らしい大声に悩まされている。この録音はセッション録音であり拍手喝采に悩まされることはない。第2の理由はオケが欧米に比べて劣る。それが気になるという人にはしょうがないが、この録音は一流のドイツのオーケストラである。第3に演奏が精度に欠ける。縦の線が合わないとかリズムが乱れるとかよく言われる。これはテクニカルな問題よりも、あまりそのような点に頓着しない性格によると思う。全体をどのように構築するかということと、横の流れの関係を最重視する結果ではないか。私などは全く気にならないが、かつてブラスバンドでアインザッツに苦労した人など我慢がならんという人もいるのかも分からない。この演奏に関しては非常に格調高い丁寧な演奏でそのような問題は無いと思う。

初稿2013/8/28