タイトル | 交響曲第3番「典礼風」 |
作曲家 | アルテュール・オネゲル |
演奏 | シャルル・デュトワ指揮 |
バイエルン放送交響楽団 | |
CD | WARNER WPCS-11014/5 |
”フランス近代音楽のエスプリ”というシリーズの一つの、2枚組み「オネゲル交響曲全集」から。
この感動的な交響曲にはじめて出会ったのはちょうど30年前である。当時N響の定期会員だった私は、定期公演で聴いた秋山和慶指揮の交響曲第5番「三つのレ」に衝撃を受けた。それまでオネゲルといえば多分「パシフィック231」しか意識して聴いたことがなく、それもちゃんと聴いたのかどうか、今聴くと単に描写音楽とは言えない”物凄さ”を感じる曲なのだが、オネゲル、描写音楽、興味無いといういい加減さで済ませていた。その私にとって第5番の深刻さ、絶望の深さは意外だったのである。それで次の休日に早速レコードを買いに行った。そのとき買ったのがデュトワ指揮バイエルン放送交響楽団のもので、確か選ぼうにも他に置いてなかったように記憶する。第5番はB面で、A面になっていたのがこの交響曲第3番「典礼風」である。そして結局第3番の方に強く魅せられてしまった。第5番は救いの無い暗さに終始するのに対し、第3番は違うからだと思う。
第2楽章の美しい緩徐楽章は救いへの祈りに満ちていて心を打つし、なにより、第3楽章「われらに平和を」で、どうしようもなくひたすら続く虚無的な行進が突然静かになり神秘的とも言っていいアダージオが始まる瞬間は何度聴いてもはっとさせられる。
とここまで書いて当時のN響定期のプログラムを確認してびっくりしたのだが、秋山和慶で5番を聴いた2月前にホルスト・シュタイン指揮でこの第3番を聴いているはずなのである。ご丁寧にチケット半券まで出てきたので間違いなく聴いている。今となっては全く記憶に残っていないのは何故か分からない。あまり印象に残らない演奏だったか、この録音のデュトワの演奏が素晴らしいために初めて魅力に気が付いたのか。記憶に残っていないのにシュタインの演奏を悪くは言えないが、デュトワの演奏が素晴らしいのは確かである。評判の良いレパートリーが、私の嗜好とあまり重なっていないこともあり、私にとってそれほどなじみのある指揮者ではない。しかしこの曲や第5番では、絶望や憧れや祈りがストレートに伝わってくる。
最近、アンセルメ指揮スイスロマンド管弦楽団のCDを手に入れた(1969年録音DECCA4802316)。デュトワのものより骨太で劇的な演奏で、これも名演だろう。どちらを主に聴くことになるのかもう少し聞き込んでみないと分からないが、第2楽章や第3楽章最後の緩徐部分の持つ清らかさ、はっとするような清冽さがデュトワの演奏の美点であることを改めて感じた。
初稿 | 2013/6/20 |