IMAXデジタルで観るスターウォーズ

「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」をTOHOシネマズ新宿まで出かけてIMAXデジタルで観てきた。

どうも私の世代では今のIMAXデジタルを、ただ’IMAX’と呼ぶのは抵抗がある。といって’Liemax’とか’fake IMAX’とかいうのも言い過ぎな気がする。当分はIMAXデジタルと呼ぶことに決めている。安くはない別料金を取るのだけは止めてほしいと思う。

この映画はどうしてもIMAXデジタルで観たかった。このシリーズの上映にはイベント的な雰囲気が欠かせないと思うからだ。

1978年に日本で第一作(エピソード4)が公開されたときは、当時映画館として使用していなかった日劇をメイン館にするというだけで大変な話題だった。私は最初テアトル東京で観たが、日劇でも観た。

特撮をはじめ技術的にはすべてが隙が無く良く作られているが、何の深味もないあっけらかんとした活劇で、あまりにも能天気。本来は日本人に好まれる映画ではないのではないかというのが最初に見たときの印象だった。アメリカでの大ヒットを受けた、お祭り騒ぎと一緒になってヒットしたのだろうと今も思っている。

それでも私がとても満足して嬉しかったのはイベント的な部分である。日劇で公開するということもそうだが、初めてコンピュータを大々的に使用したとされた(本当に初めてかどうかは知らない)ダイクストラフレックスをはじめとする特撮の素晴らしさ。そして初めてドルビーを全面採用したという音の凄さである。

ドルビーシステムはキネ旬1980年10月下旬号の故・日野康一さんの「映画フィルム・スクリーン雑学5」によると、もともと映画ノイズ低減を目的として開発された。それまで、70mmは勿論、35mmの立体音響は磁気トラックによるものであり、光学のステレオはあるにはあったが雑音が大きすぎて実用になっていなかったらしい。それをノイズ低減して実用化したのがDOLBY STEREOであるとのこと。

実際はドルビーシステムは映画よりも音楽分野で先行して使われ、もう知っている人も少なくなったと思うが、わが国では民生規格のものがカセットレコーダには必ず搭載されるようになっていた。

そのような身近だったドルビーシステムが日本の映画館で初めて使われたのは、私の記憶に間違いなければ、前記の35o光学用のDOLBY STEROではなく、70mmの磁気トラックに使用された「スター・ウォーズ」と「未知との遭遇」だったと思う。

日本公開はドルビーシステム全面採用第2作目の「未知との遭遇」の方が先で、その時も音がいいなと思いはしたが、もともと70mm磁気トラックは良い音質であり、それほど感動はなかった。圧倒的な効果を実感したのは「スターウォーズ」であった。光線銃の撃ち合いでピューン、ピューンと飛び交う音の生々しさには、テアトル東京で観ていて、観客からどよめきが起こったのを覚えている。

さてスター・ウォーズシリーズだが1作目はイベント的な部分で楽しんだもののストーリーの何も無さに拍子抜けしたのは前記の通り。ジョージ・ルーカスという人は本当は暗い人で、「THX1138」の厭世観や「アメリカン・グラフィティ」の失われた過去への感傷の方が本性なのだと私は思っている。「スター・ウォーズ」のなりふり構わぬ子供っぽさに感じる現実逃避的な雰囲気にどうしても乗れなかった。

しかし考えてみるとスター・ウォーズは父殺しの話であり本来暗さを背負っている。第2作「帝国の逆襲」(エピソード5)は主人公側が苦難を受ける話で、ルーク・スカイウォーカーの葛藤等もあり全体的にトーンが暗く、話も膨らんで、監督はアービン・カーシュナーであるものの、私は1作目よりルーカス色が強いのではないか、ずっと良くなったと思った。それを受けた第3作「ジェダイの帰還」(エピソード6、日本公開時は「ジェダイの復讐」)はまた単純な展開に戻りがっかりした記憶がある。

1999年からのアナキン3部作は、少なくとも我が国では、すでにシネラマや70mmでの公開もなくイベント的な楽しみが無い。そのうえ悲劇的な結末が分かっていて、それに向かって進むだけの宿命劇は、ギリシャ悲劇かシェークスピア劇のような様式感が無ければ魅力的になりようが無く、コッポラならぬルーカスの世界ではない。私にはまるでつまらなかった。

今回のJ.J.エイブラムスによる新作について。IMAXデジタルはアナモフレームだと上下にスペースがあるのが不満ではあるが、大画面のわくわく感はあり、わざわざ出かけてきて良かったと思った。そういうイベント的な要素を除いても、とても面白かった。スターウォーズシリーズ特に第1作から第3作(エピソード4〜6)に熱中していた人たちが、どのように世界に入り込み心躍らせていたのかが分かるような気がした。その気持ちを作品世界に転写したのがオリジナル以上に豊かで楽しい世界になった理由という気がする。

初稿2016/1/30