モーリス・ビンダーのデザインにヘンリー・マンシーニの音楽が流れるメイン・タイトルが観たくてイオンシネマ、シネパスの「いつも2人で」に行ってきた。1978年の東急名画座以来なので30年以上ぶりである。
モーリス・ビンダー/ヘンリー・マンシーニのタイトルは他に少なくとも2つあって「シャレード」と「アラベスク」。どれもスタンリー・ドーネン作品である。中ではヘンリー・マンシーニの曲のロマンチックでどこかノスタルジックな面が好きな私はやはり「いつも2人で」が観たい。
3人揃った映画が3つもあるのがたまたまか、ドーネン/マンシーニ/ビンダーの間の友人関係によるものかは知らない。マンシーニというとブレーク・エドワーズ作品が有名で、マンシーニ/エドワーズ作品の主題歌では「酒とバラの日々」、「ムーン・リバー」(「ティファニーで朝食を」)、「スイート・ハート・トゥリー」(「グレートレース」)(詩はどれもジョニー・マーサー)等が好きだ。これらの曲を聴くとどこか懐かしい独特の雰囲気に浸らされてしまう。
これはあくまでも主題歌を聴いた印象であり、それが必ずしも映画の内容とマッチしているとは限らない。「グレート・レース」はサイレント映画へのオマージュという、作り手の映画ファン振り丸出しの内容にピッタリであるが、「ティファニーで朝食を」は映画自体がつまらない。「ムーンリバー」が与えてくれるようなロマンチックな味は無い。「ムーンリバー」はむしろ女主人公の魅力が読後に余韻を残すカポーティの原作の方を想わせる。「酒とバラの日々」は未見。
映画「いつも2人で」も本来、夢もなく、ロマンチックでもない話で、主題歌とは合わない。映画自体はコメディの味付け部分等、よくはできている。この映画のヘップバーンの演技はわりと評価が高いらしいが、若いころ彼女の大ファンだった私はあまり好きではない。一つ前の「おしゃれ泥棒」でも少し感じたが、この作品では特に、無理をしている感じがしてなにか痛々しいのである。ワイラーにしろドーネンにしろ20代の輝いていたころを撮っていたからこそ、40歳近い彼女の新しい魅力を引き出そうとしたのかも分からない。
結局それに成功したのは、2人ではなく、この次の映画「暗くなるまで待って」のテレンス・ヤングだったように思う。そういえば「暗くなるまで待って」の音楽もヘンリー・マンシーニで、マンシーニの音楽とヘップバーンは合うのである。「ムーンリバー」も「いつも2人で」の主題歌も映画よりヘップバーンのイメージで作曲したものかと思ったりする。
うっかり”主題歌”と書いてしまった。確かに「いつも2人で」も合唱版が出回っていて、今回観るまでてっきりサントラと思いこんでいたのだが、映画に歌として流れるシーンは無いことに気が付いた。あの主題"歌"はなんなのだろう。
「いつも2人で」では、背景に頻繁に流れるテーマが、辛口の話も何かロマンチックな話のように感じさせてしまう力がマンシーニの音楽にはある。映画を見る時間をとても幸せな時間にしてくれるのである。
マンシーニの音楽がとても幸せな時間を作ってくれた映画の一つが「いくたびか美しく燃え」(ジャクリーン・スーザン作品の映画化)。未見でマンシーニの音楽の雰囲気が好きという人にはお勧め。主演のデボラ・ラフィンもヘップバーンのように清潔感のある美人だった。いまどうしているのかを調べたら、なんと2012年に59歳の若さで白血病のため亡くなったらしい。合掌。
初稿 | 2015/1/21 |